研修医の精神状態調査で4人に1人が「うつ状態(かならずしも鬱病ではない)」にあるということがすでに示されていたが、同じグループの調査で研修医の指導医についても5人に1人がうつ状態にある 、という結果が出たらしい。



私も1年目はかなりうつ状態だった。詳細についてまたあとで書くことになるだろうが、5月から働き始めて6ヶ月で一つめの病院(というか診療科)を辞め、別の病院に移ったという経歴がある。幸い今の病院が働きやすかったために、その後2年ちかく同じ病院にいる。そんなに忙しい病院ではなく、精神的負担は少ない。

逆に言うと、臨床研修病院としての評価はおそらくかなり低いだろう。救急を一生懸命やっているわけではなく、研修医を積極的に教えようという雰囲気は、外科・循環器などそういうことが好きな医者のいる科以外ではほとんどない。

この病院ではそうとう一生懸命やっても全国でならすと平均的な研修医でいることさえけっこう難しいと思う。



だから駄目かというとそういうわけでもないのが、修行というものの難しいところである。レベルの高い道場へ行けば確かに底上げはされるだろう。しかし同学年との競争が激しくて、無駄な労力を使うことも多い。あるいは同学年で一人目立つやつがいると、そこだけにレベルアップの機会が集中し、ほかには回ってこないというかなり悲しい事態が生じる。

いわゆる有名な臨床研修病院での研修は、ほとんどそういう状態になる。むずかしい試験を突破しても何もできないということがあり得る。

私が最初にいたところは、とにかくプライドが高く「俺たちが一番!」という気概にあふれていた。そのわりに、5~6年目の医者ぐらいまでは、かなり駄目な人が多かった。たしかに病院・医局の歴史からみたら、超一流に所属しているとう意識が強くでるのは仕方がないだろう。正直言ってそのステータスが目的ということもないわけではない。

その病院では、ほとんど何もやらせてくれなかった。患者のプレゼンテーション、討議のやりかた。これはこれで非常に重要であるが、公式に教えられたと感じることはこれだけだ。こういうことをやって、まず医師としてのスノビズムを身につけてから、実地にでるという方式であった。これがいいという人もいる。

ただ私は耐えられなかったので、辞めた。

「一流」というステータスは失ったが、非常にいい選択肢だったと思う。やれることが増えた。なにより研修医がほとんど一人だけだったため、あらゆる病棟の仕事が私に回ってきた。レベルはそれほど高くなくとも、数はかなりこなせたと思う。



いろいろ悩んでいる人もいるだろう。気に障る言い方だろうが、ドクターライセンスは法律上どこでも通用する。だから「辞めるという選択肢」はとりやすい。

わたしはその権利を行使するのに躊躇する必要はないと思う。