邦題は「ゴッホ~最期の手紙~」。
世界初の全編が油彩などの人力画で製作されたアニメ映画ということで、物語の内容以上に技術的な興味があって久しぶりに映画館へ行って参りました。
そのメイキングが以下。
実写を元にそれをトレースするように人力で絵に置き換えて一枚づつ撮影していく気が遠くなるような行程。見るからに辛そう…
連続する油彩を繋げて動画にするとノイジー過ぎて見る側は疲れてしまうのでは…と懸念していたのだが、そのあたりは上手く出来ていてフレーム毎の油彩を作るのではなくシーン毎に一枚背景の油彩を用意してオプティカルフローが発生する部分のみ上から描いては消してを繰り返していく手法を取っているようで、落ち着きのある動画で最後まで見ても疲れることはなかった。
彼の代表作La Nuit Etoileeが大画面で動き出すのは圧巻。
ところで、一方思ったのが(もちろん手作りである付加価値とかは別として)このあたりの作業は現代の技術ならばほぼ機械任せでできるのではなかろうかということ。
写真や映像から油彩をエミュレートする方法論やソフトはPC黎明期から結構あって、古いところで出来のいいのはGIMPressionistとか。もうアップデートは行われていないみたいだが…
この映画がそのまま作れそうな動画用のこんなのまである。
更に本物の絵画と見分けがつかないレベルの3Dプリンタを使ったこんな技術がすでに実現しているらしい。
こうして見てみると芸術の分野でも人間しかできない作業というのが次第に限られてきているような気がする。
そのうちインスピレーションやクリエーティビティとかいう定量化できないものも機械化されてしまうのかも。
話は変わって、映画を見た勢いもあって原始的な絵画風変換のプログラムを自作してみた。
手順は
・元の写真に軽くガウシアンブラー
・ピクセル毎に周辺との明るさの勾配を求める
・勾配と垂直方向にランダム長のラインを描いていく
・ラインの色はその場所周辺の平均値
というこの上なく簡単なもので結果が以下。
稚拙な出来ながら、こんな単純なアルゴリズムでもそこそこ絵画っぽくなる。
これを大幅に洗練・複雑化すると上記のような有料のプラグインになるのだろう。
こういうアルゴリズムをあれこれ考えるのも楽しいものです。