【古事記】第二十四回 沼河比売への求婚 | 真の国益を実現するブログ

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古事記 (岩波文庫)/岩波書店

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※岩波文庫「古事記」を参考に書いています。


前回は「【古事記】第二十三回 根の国訪問2」でした。


●沼河比売への求婚

□原文

此八千矛神、將婚高志國之沼河比賣、幸行之時、到其沼河比賣之家、歌曰、


  夜知富許能 迦尾能美許登波 夜斯麻久爾 都麻麻岐迦泥弖 登富登富斯 故志能久邇邇   佐加志賣遠 阿理登岐加志弖 久波志賣遠 阿理登伎許志弖 佐用婆比爾 阿理多多斯 
  用婆比邇  阿理迦用婆勢  多知賀遠母 伊麻陀登加受弖 淤須比遠母 伊麻陀登加泥婆  遠登賣能  那須夜伊多斗遠 淤曾夫良比 和何多多勢禮婆 比許豆良比 和何多多勢禮婆  阿遠夜麻邇 奴延波那伎奴  佐怒都登理 岐藝斯波登與牟 爾波都登理 迦祁波那久 
  宇禮多久母 那久那留登理加 許能登理母 宇知夜米許世泥 伊斯多布夜 阿麻波勢豆加比  許登能加多理其登母 許遠婆 


爾其沼河日賣、未開戸、自内歌曰、

  夜知富許能 迦微能美許等 奴延久佐能 賣邇志阿礼婆 和何許許呂 宇良須能登理叙 
  伊麻許曾婆 和杼理邇阿良米 能知波 那杼理爾阿良牟遠 伊能知波 那志勢多麻比曾 
  伊斯多布夜 阿麻波世豆迦比 許登能 加多理碁登母   許遠婆  阿遠夜麻邇 
  比賀迦久良婆 奴婆多麻能 用波伊傳那牟 阿佐比能 恵美佐迦延岐弖 多久豆怒能 
  斯路岐多陀牟岐 阿和由岐能 和加夜流牟泥遠 曾陀多岐 多多岐麻那賀理 麻多麻傳 
  多麻傳佐斯麻岐 毛毛那賀爾 伊波那佐牟遠 阿夜爾 那古斐支許志 夜知富許能 
  迦尾能美許登 許登能 迦多理碁登母 許遠婆


故其夜者不合而。明日夜爲御合也。



◆訓み下し文


此の八千矛(やちほこの)神、高志(こしの)国の沼河比売(ぬまかはひめ)を婚(よば)はむとして、幸行(い)でましし時、其の沼河比売の家に到りて、歌ひたまひけらく、

  八千矛(やちほこ)の 神の命(みこと)は 八島国 妻枕(ま)きかねて 遠遠(とほと  ほ)し 高志の国に 賢(さか)し女(め)を 有りと聞かして 麗(くは)し女(め)を  有りと聞こして さ婚ひに あり立たし 婚ひに あり通はせ 大刀(たち)が緒(を)も  いまだ解かずて 襲(おすひ)をも いまだ解かねば 嬢子(をとめ)の 寝(な)すや板  戸を 押そぶらひ 我が立たせれば 引こづらひ 我が立たせれば 青山に ぬえは鳴きぬ  さ野つ鳥 雉(きざし)はとよむ 庭つ鳥 鶏(かけ)は鳴く 心痛(うれた)くも 鳴く  なる鳥か この鳥も 打ち止めこせね いしたふや 天馳使(あまはせづかひ) 
  事の 語  言(かたりごと)も 是(こ)をば

とうたひたまひき。爾に其の沼河比売、未だ戸を開かずて、内より歌ひけらく、

  八千矛の 神の命 ぬえ草の 女にしあれば 我が心 浦渚(うらす)の鳥ぞ 
  今こそは   我鳥(わどり)にあらめ 後(のち)は 汝鳥(などり)にあらむを 
  命は な死せたまひ  そ いしたふや 天馳使 
  事の 語言も 是をば
  青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜(よ)は出でなむ 朝日の 笑み栄え来て 
  栲綱(た  くづの)の 白き腕(ただむき) 沫雪の 若やる胸を そだたき 
  たたきまながり 真玉手(またまで) 玉手さし枕き 股長(ももなが)に 
  寝(い)は寝(な)さむを あやに  な戀ひ聞こし 八千矛の 神の命 
  事の 語言も 是をば
  
とうたひき。故(かれ)、其の夜は合はずて、明日(くるひ)の夜、御合(みあひ)為(し)たまひき。




・沼河比売―和名抄に越後国頸城郡沼川郷がある。

・八島國―八島の国で。一般には日本の国の中でと説かれている。

・妻枕きかねて―妻を娶ることができないで。

・聞かして―お聞きになって。

・ありた立たし―常におでかけになり。
 
・襲をも―オスイは着衣の上に重ねて着る衣装。

・寝すやいた戸を―寝ている家の板戸を。

・押そぶらひ―激しく押す。
 
・引こづらひ―何度も引いて。
 
・ぬえは鳴きぬ―とらつぐみ。
 
・さ野つ鳥 雉はとよむ―「野つ鳥」は雉の枕詞、ここでは野の意味を残している。
 
・庭つ鳥 鶏は鳴く―「庭つ鳥」は鶏の枕詞、庭の意味を残している。
 
・心痛くも―嘆かわしくも。
 
・打ち止めこせね―鳴くのをやめてほしいものだ。
 
・いしたふや 天馳使―「いしたふや」は天馳使の枕詞。

・事の 語言も 是をば―これをば事件を伝える語り言としようの意か。

・ぬえ草の―女の枕詞。なよなよとした草のような。
 
・ぬばたまの―「黒」「夜」の枕詞。

・朝日の 笑み栄え来て―朝日のような華やかな笑顔をして来て。

・栲綱の―白の枕詞。
 
・そだたき たたきまながり―そっとなでたりたたいたりして。
 
・百長に―いつまでもという意味か。
 
・あやに―そんなに一途に。

■現代語訳


八千矛神は高志国の沼河比売求婚しようと出かけ、その沼河比売の家に着いて、

八千矛神(大国主神)は大八島国中探しても妻を娶ることができず、遠い遠い越国に賢い女性が いると聞いて、麗しい女性がいると聞いて、求婚しに出立し、求婚しに通って、大刀の下げ緒 いまだに解かず、襲をもいまだ解かないのに、女性の寝ている家の板戸を、激しく押し揺すぶ っていると、私はたてば何度も引き 私がたてば青山に悲し気にぬえは鳴いた。野の雉は鳴き 叫び 庭の鶏が鳴いている。嘆かわしくも鳴くのか鳥よ。鳴くのをやめてくれ。天駆ける使い よ。これを事を伝える語り言としよう

と歌った。これに沼河比売はまだ戸を開かず、中から、

  八千矛の神よ。なよなよとした女であるので、私の心は入江の渚にいる鳥のように落ち着き  が有りません。今は私の思うままに振舞いますが、今度はあなたのものになるでしょうか   ら、死なないで下さい。天駆ける使いよ。これを事を伝える語り言としましょう。
  青山に日が隠れたら、夜にはおいでなさってください。朝日のような華やかな笑顔をして来  て、かじの木でつくった縄のように白い腕や、沫雪のように若い胸を、触れたり抱き合い   玉のような美しい手を枕にして、いつまでも寝ていましょうから、あまり焦って恋しいとお  っしゃらないでください。八千矛の神よ。これを事を伝える語り言としましょう

と歌った。それでその夜は会わず、次の日の夜、御会いになった。



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