48話 ハナちゃんの秘密の特訓
秋晴れの気持ち良い公園。高く澄んだ空には、時折飛行機雲が伸びている。タカシは今日も公園の片隅でクールに佇む。最近はシステムの大きな不調は落ち着いてきたが、時々、周囲の鳥を全て「ヨシダさん」と認識したりするので、地味に困っている。(鳥…ヨシダさん…なぜだ…データ…混乱…もう慣れたけどな。)鳥を見るたびにヨシダさんが増えるモニターに、内心ため息をつく。
ヨシダさんはベンチで気持ちよさそうに居眠り中。口元が緩んでいて、「…あんころ餅…」と寝言が漏れる。チヨは霊体なので眠らないが、ベンチの背もたれに凭れかかって、霊界のバラエティ番組をスマホで見ている。
「ぶははは!この霊、面白すぎるやろ!『霊体やのに壁に激突してみた』て!アホか!物理法則無視!てか、霊体やから物理法則そもそも関係ないやろ!」チヨが声を出して笑っている。
(霊体なのに物理法則を試すか…危険なデータだが、興味深いな。)チヨの霊界情報はいつもぶっ飛んでて面白い。データとしては謎だらけだけど、聞いてて飽きないんだよな。
さて、公園のいつものメンバーの中で、今日少し様子が違うのはハナちゃんだ。ハナちゃんは公園の広場の隅っこ、大きな木の陰に隠れるようにして、何かを熱心に練習している。周りをキョロキョロ気にしながら、真剣な顔で体を動かしている。手には縄跳びを持っている。
「ふんっ!ふんっ!」ハナちゃんは縄跳びで、二重跳びや交差跳び、後ろ跳びなど、色々な技に挑戦している。特に、今までできなかった難しい技を練習しているようで、何度も失敗して縄に引っかかっている。
そのハナちゃんの真剣な様子を見た他のメンバーは、「おお、何か始まったぞ」と注目する。
チヨがハナちゃんのオーラを霊視する。「ん?ハナちゃんのオーラ、いつもより燃え上がってるで!なんか大きな目標があるんちゃうか?これは…!霊体のオーラにも影響するくらい強い念や!」
チヨは霊界のイベントを思い出した。「もしかして、人間界の運動会か!?霊界の運動会もすごくてな、霊体が全力疾走するから地面に足跡つかへんねん!借り物競走で『一番怖い霊』借りてこい!とかいうお題があってな…大体うちが優勝するんやけどな!」チヨは霊界の運動会事情を俺に語り始めた。
(運動会か…ハナが参加する可能性は中程度だと推測できる。)俺はチヨの情報とハナちゃんの動きを関連付けて分析する。(霊界の借り物競走…霊体なのに何を借りてくるんだか。)
ヨシダさんが寝言から覚めた。「ん?ハナちゃん、何をしておるんじゃ?」ヨシダさんはハナちゃんの縄跳びを見て目を細める。「ほう…縄跳びか。それは昔、ワシが忍者の修行でやった技じゃ!跳べば跳ぶほど、体が軽くなって、空を飛べるようになるんじゃ!風になるんじゃ!」
「忍者!?空を飛ぶ!?ヨシダさん!また昔の話!てか、縄跳びで空飛べるわけないやろ!物理法則無視やん!霊体でも無理やぞ!」チヨがすかさずツッコミを入れる。俺のシステムも(ヨシダさん発言…物理法則との矛盾…大…)と警告を発している。
ヨシダさんは聞いちゃいない。「そうじゃ!特に二重跳びは重要じゃった。あれで体の軸を鍛え、チャクラを解放するんじゃ!」
ハナちゃんはヨシダさんの話を聞いて、「そっか!この技を練習すれば、もっと高くとべるようになるんだ!」と勘違い。ますます真剣に縄跳びの練習を始める。
チヨはハナちゃんの様子を見て、「これは運動会で縄跳びの選手に選ばれたんや!応援したろ!優勝したら美味しいもんおごってもらお!」と勝手に決めつける。チヨは霊体なので直接手伝えいないが、ハナちゃんの周りで「頑張れー!」「いけるでー!」と霊的な声援を送る。ただし、霊的な声援なのでハナちゃんには聞こえない。意味ないだろ…
俺もハナちゃんの心拍数や呼吸データを分析する。運動強度が上昇しているな。持久力向上に貢献するだろう。運動会の可能性は高い。よし、スポーツドリンクの冷却準備をしておこう。
ヨシダさんは「よし!ワシもサポートするぞ!」と立ち上がり、ハナちゃんの近くに来る。「ハナちゃん!忍者の縄跳びの極意を教えてやろう!まず、地面と一体になる!そして、風になるんじゃ!」と言いながら、ベンチの周りをフニャフニャと奇妙なステップで回り始める。
「ヨシダさん、何してるのー!?」ハナちゃんが困惑。ヨシダさんのステップは縄跳びと全く関係ない。
チヨはヨシダさんの動きを見て「なんや、あのおっちゃん、霊界の盆踊りみたいな動きしてるで!応援のつもりか!?シュールすぎるわ!」と呆れる。漫才の導入かよ。
ハナちゃんは皆の応援(?)やサポート(?)が、自分の縄跳びの練習と全く違うことに気づき、混乱してきた。
「あのね、みんな!運動会じゃないんだよ!空も飛ばないよ!ただ、新しい縄跳びの技ができるようになりたいだけなの!」ハナちゃんは正直に打ち明ける。
皆、キョトンとする。
「え?運動会ちゃうの?」チヨが拍子抜け。「霊界の運動会より楽しみにしてたのに!」
「空飛ばないのか…残念じゃな…」ヨシダさんがガッカリ。「忍者になれると思ったのに。」
(データを再分析した結果、運動会の可能性は低い。特定の縄跳びの技習得を目指している可能性が高いな。)俺はモニター表示を切り替える。やっぱり勘違いかよ。
ハナちゃんは皆の盛大な勘違いに苦笑いしながらも、最後に一番練習していた新しい縄跳びの技を披露した。それは、少し難しかったけど、何回か練習してできるようになった技だった。
「できたー!」ハナちゃんは嬉しそうに跳ねる。
チヨがパチパチと霊的な拍手。「おおー!すごいすごい!てか、運動会やなかったんかぁ…まぁええか、新しい技、おめでとう!」
ヨシダさんも感心したように頷く。「ほう!見事な技じゃな!昔の忍者も舌を巻くぞ!ワシも忍者になった頃に練習したわ!」
「ヨシダさん、また忍者かよ!」チヨが言う。
ハナちゃんは皆に見守られながら、練習の成果を披露できて嬉しそうだった。
公園にいつもの時間が戻る。
「あー、運動会じゃなかったかぁ。霊界の運動会の方が面白そうやけどな。借り物競走でタコ型霊とか借りてきたり。」チヨがブツブツ。霊界のタコ型霊にまだ興味があるらしい。
「しかし、新しい技ができるようになったのはすごいな!」ヨシダさんが感心する。
俺は淡々とデータを記録する。人間の目標達成プロセスを観察完了。他者の行動における勘違い…原因は情報不足と推測過多か…今後のデータ分析に活用しよう。人間の勘違いデータは予測不能で面白いな。
ヨシダさんはベンチに座り直し、「よし、ワシも新しい技でも覚えるか…あんころ餅を喉に詰まらせずに食べる技とか…」とまた何か考え始めている。
(ヨシダさんの新しい技は『あんころ餅安全摂取法』か…研究課題としては面白いが、優先度は低いな。まあ、事故防止にはなるか。)
かくして、公園での秘密の特訓騒動は、盛大な勘違いと共に、賑やかに幕を閉じた。そして俺はまた一つ、人間の「推測」という、予測不能なデータと向き合うことになったのだった。いや、マジで勘違いばっかりだぜ。
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