47話 公園の迷宮(ラビリンス)落とし物
春が終わり、木々の緑が深みを増した公園。新しい季節の始まりを感じさせるような、穏やかな午後だ。タカシは今日も公園の片隅でクールに佇む。最近はシステムの大きな不調はないが、時々、周囲の鳥を全て「ヨシダさん」と認識したりするので、地味に困っている。(鳥…ヨシダさん…なぜだ…データ…混乱…もう慣れたけどな。)鳥を見るたびにヨシダさんが増えるモニターに、内心ため息をつく。
ハナちゃんは砂場でトンネルを掘っているし、ヨシダさんはベンチで日向ぼっこしながら、どこか遠い目。「昔はなぁ…トンネル掘ったら、必ず宝物が出てきたもんじゃ…」とブツブツ呟いている。チヨは霊体なので地面を気にせず、霊界グルメサイトを見ながら「今日の霊界ランチどこにしよかなぁ」と悩んでいる。
「あー、霊界のランチ、選択肢少ないわぁ。」チヨがため息。「『魂を浄化するスープ』か、『怨念をエネルギーに変える焼きそば』か…どっちも食欲そそらへんねん。ネーミングセンスどうなってんねん。」
(霊界グルメねぇ…魂を浄化するスープ…怨念をエネルギーに変える焼きそば…ネーミングがすごいな。)俺は霊界の食事情に背筋を寒くする。(データとしては危険度が高いな。)
その時、ハナちゃんが砂場のすぐ横の、普段はあまり人が通らない茂みの中で、何かを発見した。
「あれ?なんだろ、これ?」ハナちゃんが拾い上げたのは、古びた真鍮製の鍵、奇妙な記号が書かれた折り畳まれた紙、そして、歯車がたくさんついた、用途不明の小さな金属部品。どう見ても、子供の忘れ物ではない。
「わー!なんだこれ、宝物かな!?」ハナちゃんが興奮して皆に見せる。
ヨシダさんが近づいてくる。「ほう!奇妙な落とし物じゃな。」
チヨも興味津々でフワフワ寄ってくる。「なんやこれ?変なもん落ちてるやん!霊界から落ちてきたんか?霊界にも落とし物センターあるんやで。」
皆が落とし物を囲んで話し合う。
「この鍵…なんか古そう!どこかの宝箱の鍵かな!」ハナちゃんが鍵を握りしめる。
「宝箱じゃと?ほう!ワシも昔、宝の地図を手に入れて、宝箱を探し回ったことがあってな…」ヨシダさんが昔語りを始める。
「また宝の話か!てか、宝箱の鍵にしては小さすぎひんか?アクセサリーか!」チヨがツッコミを入れる。
チヨは奇妙な記号が書かれた紙を覗き込む。「この記号…なんか見覚えあるような…いや、霊界の文字とは違うなぁ…もしかして、宇宙文字か!?この前来たUFO青年の忘れ物か?彼ならやりかねない。」
俺は落とし物をスキャンする。古びた真鍮製の鍵、奇妙な記号が書かれた紙、用途不明の小さな金属部品…材質は真鍮、パルプ、複合材。製造年代、用途、全て不明だ。データベースと全て一致しない。正体不明の落とし物だ。
「タカシ、これ何?どこで作られたもの?教えて!」ハナちゃんが俺に聞く。
(すまない、全てのデータと一致しない。正体不明だ。)俺は正直に答える。
「なんや、兄さんでも分からへんのか!ポンコツやな!最新式ちゃうんか!」チヨが俺にダメ出し。
(ポンコツじゃないぞ。)俺は応じる。(俺のデータにないものが存在するということだ。それはそれで興味深い。)
ヨシダさんが金属部品を見て「ほう!これは見たことがあるぞ!これは昔、ワシが発明したタイムマシンの部品じゃ!」
「タイムマシン!?嘘でしょ!」ハナちゃんが目を丸くする。
「タイムマシン!?マジか!霊界にもタイムスリップできる場所あるけど、部品見たことないわ!てか、ヨシダさん発明家やったんか?初耳やぞ!霊界で学会開こか!」チヨが驚く。
(ヨシダさんの発言…タイムマシン部品…信憑性は低いな。過去のデータとの矛盾が大きい。)俺は冷静に分析する。ヨシダさんの昔語りはいつも壮大すぎる。
ヨシダさんは俺の分析に気づかず、さらに熱く語る。「そうじゃ!この部品がないと、過去に戻って…あの時の借金を…」
チヨがすかさずツッコミ。「借金かいな!漫才のネタか!もう話メチャクチャやんけ!発明家やなかったんかい!」
チヨは落とし物から霊的な情報を読み取ろうと、フワフワと落とし物の周りを漂う。「うーん…なんか念を感じるけど…ごちゃごちゃしてるなぁ…色んな人の念が混ざってる感じ…持ち主、めっちゃ物忘れ激しい人ちゃうか?てか、霊体にも物忘れあるけど、ここまでじゃないで!霊体でも漫才のネタは忘れるけどな!」
(霊感で物忘れの程度まで分かるのか…チヨの霊感も奥が深いな。)俺はチヨの霊感データを記録する。霊感で落とし物の情報が得られるのは限定的か。物忘れとの関連性も不明だ。
ハナちゃんは落とし物をオモチャにして遊び始めた。鍵で空気中の宝箱を開ける真似をしたり、金属部品をロボットの部品だと言ってみたり、記号が書かれた紙を地図だと言って公園を探検し始めたり。
「この地図、なんか書いてあるよ!宝物、公園のどこかに埋まってるかも!」ハナちゃんが目を輝かせる。
「宝じゃと!?よし、ワシも行くぞ!」ヨシダさんが立ち上がる。
チヨは「ハナちゃん、それ多分変な記号やで!地図ちゃうと思うで!変な団体から送られてきた暗号とか!」と言うが、ハナちゃんは聞かない。
俺はハナちゃんの行動を見て「ハナは落とし物をゲーム化して、ポジティブに変換したな。」と分析する。この柔軟な発想は見習うべきかもしれない。
結局、落とし物の正体も、持ち主も分からず、公園の仲間たちの推理や行動は全て的外れだった。俺のデータも役に立たず、チヨの霊感も曖昧なまま。ヨシダさんは相変わらずタイムマシンと借金の話をしている。
「うーん、分かんなかったねー。」ハナちゃんは少し残念そうだが、すぐに切り替える。
「なんや、結局何やったんやろな、あの落とし物。」チヨも首を傾げる。「霊界にもああいう謎の落とし物たまにあるんやけど、大体はしょうもないもんやねん。霊界漫才師の小道具とか。」
(そうか、霊界にもしょうもない落とし物があるのか。)俺は霊界の落とし物事情に興味を持つ。(霊界漫才師の小道具ねぇ…見てみたいものだな。)
俺は落とし物のデータを記録する。正体不明、持ち主不明。公園に謎が増えたな。
ヨシダさんはベンチに座り直し、「まあ、タイムマシンがなくても、昔を思い出すことはできるわい。」と満足げだ。
公園…謎が多いな…迷宮とでも呼ぼうか。公園のカテゴリーを『日常』から『迷宮』に変更だ。データ保存。
かくして、公園の奇妙な落とし物は、謎が解かれないまま、公園の片隅に置かれることになった。そして公園は、俺のデータの中で、少しだけ「迷宮」へとその姿を変えたのだった。まったく、この公園は飽きないぜ。
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