6話熱中症にご用心!自販機、緊急事態発生!
夏の太陽が容赦なく照りつける、午後の公園。アスファルトの照り返しで、空気はゆらゆらと揺れている。蝉の声が、まるで焦げ付くような暑さをさらに強調している。タカシは、いつも通り、日陰になっている自分の筐体の中で、ただひたすら暑さを感じていた。
(うー、暑い…マジで溶けるかと思ったぜ。誰か、俺に冷たいもんでもかけてくれねぇかな。)
すると、公園で遊んでいた子供たちの様子が、少しおかしいことに気づいた。顔を赤くして、ぐったりとしている子がいる。母親たちが慌てて声をかけ、「大丈夫? 具合悪いの?」と心配そうにしている。
(…やばいな、熱中症か…)
タカシは、金属の筐体を通して、周囲の異変を敏感に感じ取っていた。自分は動けないけれど、何かできることはないかと考え始める。
(おい、俺に何かできること…って、何もできねぇじゃん!)
だが、タカシは諦めない。彼の「能力」、つまりあの謎のバグを試す時が来たのかもしれない。
まず、冷たい飲み物をアピールしようと、普段はランダムに出てくるはずの「冷たい」と表示された飲み物のボタンを、必死に「思考」で操作する。すると、ガタンガタンと、いつもより頻繁に、キンキンに冷えた缶ジュースやペットボトルが排出され始めた。
(…よし、まずは冷たいもんを!)
次に、熱中症といえば水分補給だ。タカシは、「スポーツドリンク」と「ミネラルウォーター」のボタンに意識を集中させる。すると、それらのボタンが、まるで点滅信号のように、激しく点滅し始めた。
(頼むから、気づいてくれ…!)
さらに、何かできないかと考えるうち、お釣り口から、ジャラジャラと小銭が勢いよく出てくる。まるで、「早く飲み物買って飲め!」と言っているかのようだ。
(…おいおい、こんなに出しちゃって、後で怒られるんじゃないか?)タカシは、内心で焦る。
周囲の人々は、自販機の異変に気づき始めた。
「あれ? なんか、冷たい飲み物ばっかり出るね。」
「故障かな? それとも、新しいサービス?」
ヨシダさんが、日陰のベンチからゆっくりと近づいてくる。
「あんだ、今日はやけに冷たいもんが出るなぁ。熱中症対策かのう? ありがたいこっちゃ。」と、のんびりとした口調で言う。
ハナちゃんは、自販機の様子をじっと見つめている。
「あっ! あれ、もしかして…」
ハナちゃんの目がキラキラと輝いた。
「自販機さんが、みんなに冷たい飲み物を飲んでほしいって教えてくれてるんだよ!」
ハナちゃんは、友達や周りの大人たちに声をかけ始めた。
「ねえ、暑いから、冷たいの飲もうよ! 自販機さんが教えてくれたんだって!」
子供たちは、ハナちゃんの言葉に納得したのか、次々と小銭を入れ、冷たい飲み物を手に取り始める。母親たちも、子供たちの様子を見て、冷たい飲み物を買う人が増えてきた。
冷たい飲み物を飲んだ子供たちは、少しずつ顔色が良くなり、元気を取り戻していく。
タカシは、自分の「SOS」が、ハナちゃんの機転によって、伝わったことに安堵した。
(…よかった…少しは役に立てたのかもな…)
夕方になり、少し涼しくなった公園で、ハナちゃんがタカシの前にやってきた。
「自販機さん、ありがとうね! みんな元気になったよ!」と、満面の笑顔で話しかける。
タカシは、その笑顔を見て、ほんのりと温かい気持ちになる。
その時、ヨシダさんが、タカシの横を通り過ぎながら、独り言のように呟いた。
「いやー、最近の機械は、人の気持ちが分かるようになったもんじゃのう。困った時は、冷たいもんを出すようにできとるんかの。」
タカシは、心の中で(いや、ただの偶然とバグだって!)と叫びたくなったが、声は届かない。
ハナちゃんが、最後にタカシの筐体をポンと叩き、
「またね!」と言って、友達と走り去っていく。
タカシは、静かに空を見上げた。夕焼け空が、夏の終わりの訪れを告げているようだ。
(…次は何が起こるかな。)
彼は、明日もまた、この公園で、人々の様子を静かに見守るのだろう。そして、彼の気まぐれなバグが、また誰かの小さな助けになるかもしれない。
7話 只今編集中(しばらくお待ちください)
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