1話 俺はなに?俺はどこ?なんじゃこりゃー!
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▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥・・・真っ暗だ▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥
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タカシは、意識が戻った瞬間にそう思った。いや、正確には「思った」というより、「感じた」というべきか。視界は全く開けない。ただ、全身が硬い金属に包まれているような、圧迫感だけが残っている。
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▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥痛っ…なんだこれ、動けねぇ…▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥▥
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最後に覚えているのは、いつものようにネットゲームに没頭していたところ、急に強烈な眠気に襲われたことだった。そして、次の瞬間には、轟音と衝撃。まさか、あれが人生の終わりだったとは。
「…って、待てよ。俺、死んだのか? だとしたら、なんでこんなとこにいるんだ? 狭いし、なんか変な匂いするし…」
鼻を近づけてみると、確かに金属と、何かの甘ったるい液体のような匂いが混ざり合っている。まるで、古い倉庫の中に閉じ込められたようだ。体を動かそうと試みるが、まるで鋼鉄の鎧に身を包んでいるかのように、全く自由が利かない。
「おい、誰かいないのかー!」
声を出そうとしても、喉が詰まったように声にならない。もどかしさが募る。一体、自分はどうなってしまったんだ?
すると、かすかに周囲の音が聞こえ始めた。遠くで子供たちの楽しそうな声が聞こえる。鳥のさえずりも耳に入ってくる。そして、時折、誰かの足音がコンクリートの上を歩く音が聞こえる。どうやらここは、屋外らしい。
「公園か…?」
タカシは、ぼんやりと周囲の状況を把握しようと努めた。自分の周りは、冷たく硬い金属で覆われている。ところどころに、ボタンのようなものや、お金を入れるための穴のようなものが見える。
「…まさか、俺、閉じ込められたのか? 誰かに…?」
そう思った時、ふと、あることに気づいた。意識を集中させると、目の前のコイン投入口に、ほんのりと光が灯るのが見えた。そして、何かを「考え」てみた。すると、その光が消え、ガチャンという音と共に、コインが排出されたのだ。
「…え?」
もう一度試してみる。今度は、飲み物のボタンが並んでいるあたりに意識を集中し、「コーラ」と心の中で思った。すると、小さなモーター音が聞こえ、冷たい缶がゴトンと落ちてきた。
「…マジかよ。」
タカシは、信じられない思いで自分の置かれた状況を理解し始めた。どうやら彼は、公園に設置されたジュースの自動販売機に「転生」してしまったらしい。
「嘘だろ…俺が、自販機だって…?」
かつては、ゲームとカップ麺を愛し、社会との繋がりを極力避けて生きてきた彼にとって、この事実はあまりにも衝撃的だった。
「動けないし、喋れないし、できることと言ったら、ジュースを出すことと、小銭を出すことだけかよ…」
絶望感がじわじわと湧き上がってくる。これからどうすればいいんだ?
そんな時、近くから明るい声が聞こえてきた。
「ママ、あの自販機、なんか新しいジュース入ってるみたいだよ!」
タカシのところに、最初のお客様がやってきたようだ。
「あら、ハナちゃん。どれどれ?」
声の主は、どうやら子供の母親らしい。タカシは、ハナちゃんという名の少女に興味を持った。
ハナちゃんは、屈んで自販機をじっと見つめている。その手に握られているのは、小銭だ。
「どれにしようかなー?」
ハナちゃんが、ジュースのボタンを順番に指でなぞっていく。タカシは、自分の「商品ラインナップ」を頭の中で確認する。コーラ、サイダー、オレンジジュース…いつものラインナップだ。
「…あれ?」
ハナちゃんが指差したのは、普段は存在しないはずのボタンだった。そこには、手書きのような文字で「謎の炭酸飲料」と書かれている。
タカシは、心の中で叫んだ。「おい、俺、そんなもん仕入れた覚えねぇぞ! 誰だよ、こんなボタン作ったの!」
ハナちゃんは、その「謎の炭酸飲料」のボタンを指で押した。
「どれどれ…」
タカシは、思わず「出るなよ!」と心の中で念じたが、その願いは届かなかった。小さなモーター音が鳴り、ガタンという音と共に、透明なプラスチックの窓から、見たこともない色の缶ジュースが姿を現した。それは、まるで蛍光ペンで塗ったような、鮮やかな青色をしていた。
ハナちゃんは目を輝かせた。「わあ! なんか変なジュース出てきた! 飲んでみよっと!」
タカシは、心の中で「やめとけ! 毒でも入ってたらどうするんだ!」と叫んだが、当然、声は届かない。
ハナちゃんは、母親に見守られながら、その青い缶ジュースをゴクゴクと飲み始めた。
「…おいしい!」
ハナちゃんの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「あら、本当? 珍しいわね。」母親も興味津々に見ている。
タカシは、内心で「え、美味いのかよ!? どんな味なんだよ!」とツッコミを入れた。
その後、何人かの大人がその珍しいジュースに気づき、値段を確認したり、「新しいメーカーかな?」と話したりしている。
タカシは、自分の「能力」のバグによって、思わぬ珍しい商品を提供してしまったことに、複雑な気持ちになった。
「…まあ、喜んでるなら、いいのか…?」
動けない自分にできることは、ただ見守ることしかない。
ハナちゃんが、飲み終わった缶をゴミ箱に捨てながら、自販機に向かって言った。
「バイバーイ! また来るね!」
タカシは、その声を聞きながら、かすかに「…またな」と心の中で呟いた。
もよろしくお願いします
