シカゴ7裁判('20年10月 シネ・リーブル梅田・ネトフリ) | Que amor con amor se paga

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原題名:The Trial of the Chicago7

大阪都構想住民投票+米大統領選挙なので、この映画Upしてみる。

只今ネトフリ配信中、配信始まった週に劇場1週間限定公開だったので観てきました。

え?ネトフリ契約しないのかって?

ネトフリ契約したら延々と色んなモノ見続けて仕事に支障出るのが判っている+予告で元ネトフリ社員の暴露 ドキュメンタリーを観たので、そっちも別の意味で面白そうだな~と。

米大統領選なので、この映画Upしてみる。

キャストはかなりゴージャス

『ファンタスティック・ビースト』のエディ・レッドメイン
『ボラットシリーズ』のサシャ・バロン・コーエン

『LOOPER』のジョセフ=ゴートン=レヴィット
『ルース・エドガー』のケルヴィン・ハリソンJr

『ファウンダー』のマイケル・キートン
『グレイテスト・ショーマン』のヤーヤ・アブドゥールⅡ世

エディちゃん演じる『いかにも人ウケしそうな兄ちゃん』が、後々間違った事言ってる事や
サシャ・バロン・コーエン演じる『こんなの連れてきたら判事受け悪くて裁判負けるだろqqqq』ってヒッピーが、 ビシっと的を得た事を言う所にも注目の映画。

…人は見た目+物腰+言葉使いが9割とかクソたら言う人もいるだろうし、平和なぬるま湯の中でしか暮らしてない人、 そう思うんだろうけど
世の中動かそうと思ったら、そうも行かないという映画。

そんなワケで予告編こちら、あらすじいってみる。



時は'68年。ベトナム戦争反対の嵐が吹き荒れる米国。

時期大統領選を目指し、イリノイ州シカゴで民主党全国大会が開かれる中、会場近くのグランド・パークでは活動家や学生による反戦デモが行われていた。

学生活動組織SDS(Student for a Democratic Society)に所属するトム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)とレニー・デイヴィス(アレックス・シャープ)は、 物腰も柔らかい理論派の青年。

青年国際党YIP(Youth International Party)のアビー・ホフマン(サシャ・バロン・コーヘン)と、ジェリー・ルービン(ジェレミー・ストロング)は、 ロン髪で身なりもボロボロのいかにもヒッピー。

元コメディアンで、どこまで冗談か判らずドラッグ三昧暴言三昧。

活動家でボーイスカウトのまとめ役も務めるベトナム戦争終結運動(MOBE)のリーダー・デヴィット・デリンジャー(ジョン・キャロルリンチ)は、 いたって普通のファミリーマン。

デモに行く当日は、心配そうに見守る幼い息子ダニエル(ブラディ・ジェネス)妻(メーガン・ラファティ)に挨拶をして出かけた。

黒人支持団体ブラックパンサー党のトップ・ボビー・シール(ヤーヤ・アブドゥール・マーティンⅡ世)は、秘書に『ちょっとした集まりだ、4時間で戻る』と言い黒人の権利を演説する為に出かける。

だがシカゴ市長はデモや反戦運動を許さず、グランド・パークで当日、警察と学生デモ隊による衝突で暴動が起きた。

当時の司法長官ラムゼイ・クラーク(マイケル・キートン)は起訴するに値しないとし、暴動の起訴を取り下げたが、半年後、反戦運動家を目の敵にするジョン・ミッチェル(ジョン・ドーマン)は手段を選ばず暴動を裁判に持ち出した。

任命されたばかりの若き連邦検察官リチャード・シュルツ(ジョセフ=ゴートン=レヴィット)は、民主党大会を攻撃したのではなく、その隣の公園で起きたことで、不法侵入と公共物破損程度で、連邦裁判にはならないという前司法長官の意見に従うべきでは、と疑問を投げかける。

が、司法長官は当時の大統領ニクソンの手前もあり、シュルツの正論を一蹴、それどころか

無職の若者どものが戦争を非難するのは終わりだ
30代を刑務所で過ごさせてやる


の一点張りで、シュルツの上司フォラン(J.Cマッケンジー)も反論しない。

シュルツは暴動当日広場に居た反戦組織が互いに面識がなかったことについてもふれ『これでは共謀罪すら成り立たない』という。

それに対し、司法長官は、とんでもない事をシュルツに、のたまった

彼らは反社会的で下品、反体制的、起訴に値する、証拠はつぶせ、それが君の仕事だ

法に準ずるものとして矛盾だらけの命令を受け納得がいかないという顔をするシュルツ。

こうして'69年9月26日、理不尽というべき裁判が幕をあけた。

被告代理人ウィリアム・クンスラー(マーク・ライランス)、レナード・ワイングラス(ベン・シャンクマン)が法廷に入り、クンスラーは、 被告のうち7人は弁護するが、ボビー・シールは弁護を付けないと言う。

ボビー・シールは傍聴席の最前列に党のイリノイ州代表フレッド・ハンプトン(ケルヴィン・ハリソンJr)を付け、法的アドバイスを貰うことにした。

半年も前の罪で連邦裁判にかけられた若者たち。

彼らに勝ち目はあるのだろうか…

以下ネタバレです。

『ソーシャルネットワーク』『マネーボール』のアーロン・ソーキン監督脚本なので

頭を使うセリフが怒涛の早さで飛び交いますqqqq

観終わってしばらく、ボーっとしてしまう程。

この映画、企画そのものは12年前からあったのですが、俳優組合のストライキで実現しなかった…らしい。

当初の配役だとボビー・シール→ウィル・スミス、クンスラー→フィリップ・シーモア・ホフマンという豪華キャストに なったそうだから、シネコン公開間違いなかったんだろうと思う、うん。

話戻す

民主党といえばJFKだったんじゃないの?と言われそうなんすが

JFK死後、民主党支持は、あっという間におっこちたのです。

後釜についたのが ジョンソンでベトナム戦争泥沼化させたあげく次期大統領候補のボビー(ロバート・ケネディ)は暗殺される始末。

インスタントに立てた候補は共和党ニクソンに負けてしまい、ニクソンはベトナム戦争の徴兵をくじ引きで決めていたので、民主党+共和党ニクソンへの不信感はタダモノではなかったのです。

とはいっても学生の反戦運動家や、活動家全員が面識あるわけじゃーないのです。

ネットもないし、時代が時代なので、自由主義のヒッピーいっぱいいるし。
同じ組織でも連絡取れなくて当たり前。

反戦の元に集まった4つの団体のリーダーたちは、何の面識もないのです。
こいつ誰だあ?ってぐらい。
法廷で初めまして状態。

検事シュルツは司法長官に『こじつけでもなんでもいいから共謀罪でっちあげとけ!』と脅迫まがいに言われてるので
陪審員に対し、被告をこう説明します

あそこに座っている人たちは違う組織に見えますが全員急進左翼で、暴動を扇動した共謀罪です

こじつけにも程があるっつーか(爆)
言ってる本人も『ナンジャコリャ』と思ってる…。

共謀罪が'68年に出来たモノなので『そんな出来立てホヤホヤの罪を適応していいんだろうか?』とフツーの人は考えるよな。

反戦を訴えると言っても、それぞれの組織、言い分は違うのです

SDSのトム→僕たちは反戦はうったえるが、バカはしない(ここが後々どうなったかがミソ)

YIPのアビー→オレらは反戦も訴えるがバカもする(シカゴで集会開く目的がドラッグと○リまくる事と市長にのたまった上、判事にLとRの発音違うぞとヘラヘラ笑ってツッこむ人)

ブラックパンサーのボビー→不当な扱いを受ければ報復は辞さない

MODEのデリンジャーは、彼らより大人で、弁護士のクンスラーよりも年上なので、まとめ役に回っている感じです。

…こんなのじゃ裁判で勝つ負ける以前の問題。

裁判が始まった途端、判事のジュリアン・ホフマン(フランク・ランジェラ)は、アビーが『おっさん、さっきから同じ事ばっかり言ってボケてんじゃねーのかwwww』って態度をとったモノだから
『法廷侮辱罪じゃー!』とカンカン。

アビーやトムには、なんだかんだいって法廷での発言権があるから良いのですよ。

ブラックパンサー党のボビーには発言する権利すら与えられない。

この裁判は'69年なのですが、こういう現実を踏まえると、'71年のヴァージニア州を描いた 『タイタンズを忘れない』とか
'72年のコロラド州を舞台に描いた『ブラッククランズマン』が絵空事と思えないのが判ります。

陪審員裁判なので、陪審員も平等に裁かないといけないはずなのですが、裁判所は被告側に不利になる様に、陪審員を脅すのです。

クンスラーが、裁判の途中で陪審員6の女性(ジュリエット・アンジェロ)が判事の前に呼びされた事に気づきます。

彼女は被告に票を入れていましたが、判事に『ブラックパンサーが脅しに来る』という嘘の脅迫をされて、裁判から外されてしまうのです。

ま~裁判以前に黒人であるボビー・シールを『除外』したいという判事の以降丸わかり。

裁判はますます被告に不利な方向に進むのですが(…あまりに不利なので全部書けない)、ボビーは、立ち上がって叫びます

あの広場に居たのは反戦を訴える以前に自分たちの人種の有り方を演説して、フライドチキンを食べて帰りたかっただけだと。

…それだけ言っただけなのに、法定の外に連れ出され、猿ぐつわをして引き戻されるのです、もう人間扱いされていません。

さすがにこれには、検事のシュルツ、彼の上司のフォランも目を疑う。
裁判以前の問題、不当な人種差別じゃないかと。

シュルツはクンスラーに裁判中断の協議を申し入れ、ボビーは裁判から除外する事を申し出ます。

判事はあまり納得してなさそうですが、渋々受け入れます。

クンスラーから法廷で矛盾した点をつかれ『ナゼですか!』と聞かれても『This is MY Court Room!』とカナヅチならして強引に終わらせるジジイ判事ですから。



安心するのは、早く

被告側の対策事務所に、ブラックパンサー、コロラド支部のフレッドが殺されたという訃報が入ります。

常に裁判の傍聴席の一番前に座り、ボビーに法的アドバイスをしていたフレッドは『消された』のです。

余罪があるボビーは、刑務所に収監されているのでクンスラーが面会に行くとボビーはフレッドが消された事を知っていました。

ボビーは、お前たちとオレたちは戦う対象が違う、とまっすぐ目をみて言うのです。 お前たちは同じ祖先から産まれた、だがオレたちは違う。
フレッドは最初肩を撃たれた.
肩を撃たれたら銃の引き金を引けない、2発目は頭だ。
あいつは『処刑』されたんだ


お前たちには『デモ』という形で権力に抵抗する『自由』がある、それすらない。

何か行動を起こせば『処刑』されるリスクと背中合わせで生きているオレたちとお前たちとは違う、というボビー。

…面会にクンスラーとトムが行ったのですが、トムの『甘さ』っての?白人あるあるの特権意識に気づきなさ杉、が出てましたねぇ、うん。

被告なんだけど案外トムが一番判ってないな~感があるのは、裁判進むと明らかになってくる。

休廷中に街に出たアビーとジェリーが、娘2人を連れているシュルツを見かけるのです。
街に出るとシュルツはいい暮らしをしている普通の人。

アビーとジェリーは、シュルツに『ホントの所、アンタ、この裁判の方向性、矛盾してるなぁって思ってるだろ?』と痛い所をついてきます。

シュルツもホントの所はそうなのですが、それ言っちゃうと今の暮らしがパーになってしまうので言えない。

アビーは、ずけずけとモノ言うのですが、自分が立ち上げたYIPでは『集まってくれたメンバーの為に命をかける』と言葉を選びながら真摯に話すいい面もあり、 その点ではクンスラーは認めているのです。

裁判が進むにつれて、暴動の舞台になったグランド・パークの音声が手に入ります。

最初に手にしたのがクンスラーだったのですが、クンスラーは血相を変えてトムを叱り飛ばすのです。

暴動の原因はお前じゃないか!何が平和的な解決だ!

トムは訳が分からなくなり、暴動があった当時を思い出します。

グランド・パークでおこなれていたデモは最初は単なる『演説』でした。

悪ふざけをして照明にのぼった少年を警官が引きずりおろし袋叩きにしているのを檀上からみたトムはデリンジャーが止めるのも聞かずに、こう叫んだのです。

If blood is gonna flow,let it flow all over the city!(血が流れるなら街中で血を流させろ!)

デモとテロの違いが判らない状態にしてしまったトムの言動は罪が大きいとクンスラーが言うのです。

デモ→大衆が権力者に対し声をあげる正当な手段
テロ→特定の組織が不特定多数を巻き込み攻撃するもの。なので

その証拠に、警官と衝突し、逃げた先で、トムたちは政治家のパーティが行われているバーを巻き込んでしまいます。

警官は『巻き込まれる前』に自分の胸元のバッジを外しているのです、責任逃れです
何かあった時に名指しで罷免されない為の卑怯な手段です。

トムたち反戦家と警察が衝突する街角は『'60年代後半』、建物の中の上院議員のパーティーは『'50年代』で時が止まったまま。

バーの通りに面したガラスは中が見えない作りになっていて誰も気づかない。
そんな中、1人の招待客の女性が外の異変に気づき、その数分後、窓ガラスが割れ、トムがパーティ会場になだれ込んで来て会場に悲鳴があがるのです。

…自分は大まじめで行く行くは政治家を目指して国を変える!と思ってたのに…としょぼくれるトム。

そんなトムに『正反対』で犬猿の仲だったはずのアビーが言うんです。

『血』を『僕らの血=our blood』にすれば良かったんじゃね?

所有代名詞はきちんと使えよなと。

そこっ???と思うんすが、トムがずずーん…と沈んじゃわないためにはこれしかなかったんでしょうねぇ

これ以後、アビーが法廷で活躍していきます(今まで余計なコト言うな黙っとれ扱いでしたが)

…この映画、1つ気になるのは女性の描き方?がぞんざいな事。

被告側の反戦運動家に潜入捜査したFBI捜査官オコナー(ケイトリン・フィッツジェラルド)が法廷で証言に立つ話は、観ててウソだよなぁ~って判るんですよね(涙)

学生運動家にも女性はもっといたそうなので、そういう人たちを描いてくれるのかと思いきや、全然そうではなかった所が、惜しい点でした。

被告の切り札になる前司法長官ラムゼイに、暴動が不法侵入程度で連邦裁判にはならないと証言して貰う時でも、判事の鶴の一声で、陪審員は法廷に入れない、 証言は残さないという、トンデモな方向に裁判が行くのです。

次の法廷では被告側はトムとアビーが立つことになります。

『暴動を扇動したのは誰だ?』と検事シュルツに問われたトムは『我らの血』と答え、アビーにバトンタッチします。

アビーは、文脈を無視すれば言葉はどんな風にも解釈できると答え、警察との暴動はのぞんだのではないと答えるのです。

でもってシュルツの質問の〆にこんな事を答えているのです

ニクソン政権になって任命された司法長官のせいで、自分たちが裁判沙汰になった事も含めてでしょうか。

1861年にリンカーンは言ったのさ、国民の権利を奪う政権は、国民が倒す権利があるってな、でもこの国じゃぁそれって4年おきしかそのチャンスがない。

…この映画が米国大統領選や、Black Lives Matterのムーヴメントに合わせてネトフリで公開されいるのも皮肉な話なのです。

映画のラストは判決の日

判決の前に代表1名だけ法廷に向けての発言が認められるのですが、ホフマンは代表にトムを選びます。

法廷でつつましくいたトムは、判事の意向に背き、レニーがずっと記録していたベトナム戦争での戦没者4752人の氏名と年齢を読み上げいくのです。

これにはシュルツも起立して戦没者への敬意を現します。

実際の法廷ではデリンジャーが名前を読み上げ、途中からトムが読み上げたそうですが、映画の演出上トムにしたんでしょうねぇ。

家でネトフリ契約していて、もう一回みれば、また新たな発見あったかもと思う映画なんすが、法定モノは観だすと何度も見てしまうので(おい)

最後に、劇中で事あるごとに『法廷侮辱罪じゃー!』を乱用しまくった判事、実際はもっと酷かったそうで(爆)

そんなので判事務まるのか??と思ってしまいますねぇ。

判事を演じたフランク・ランジェラが『フロスト×ニクソン』でウォーターゲート事件から失脚した後のニクソンを演じていたのも、面白い配役だなと思いました。