マネーボール(原題名:Moneyball '11年11月 梅田ブルグ7) | Que amor con amor se paga

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日常で気になったコトや動画も載せてます。


原作は、米国のベストセラー

予告編こちら、あらすじいってみる




ビリー・ビーン(ブラット・ピット)は、高校卒業後、ニューヨーク・メッツのスカウトに見込まれ
スタンフォード大学の奨学金を蹴って多額の契約金で入団。

しかしスカウトの『全てが揃った逸材』という思惑とは裏腹にビリーは素質を出せず、
高慢で短気な性格も災いして、トレードでチームを渡り歩き、ついには
弱小球団、オークランド・アスレチックで自らのキャリアに終止符をうつことになる。


数年後、ビリーは球団のGMになっていたが、貧乏チームの低迷は続き、チャンピオンシップは夢の夢となっていた

ビリッケツになった球団に支配人は、ない金は出せない、他のGMも選手は出せない、今日も今日で
クリーブランド・インディアンズのGM・マーク・シャピロ(リード・ダイアモンド)に

『そんな金額じゃ選手は出せん』とケンもホロロに断られたばかり。先立つものがないので文句を言う代わりに
机に山盛りになってるカシュナッツをボリボリかじりながら、ビリーはシャピロが部屋の中にいる一人の男の意見に
耳を傾けている事に気づく。

交渉とも言えぬ交渉が終わった後、ビリーは、その男をインディアンスのオフィスで探す。

男の名はピータ・ブラント(ジョナ・ヒル)。

イエール大の経済学卒業で、選手の統計分析を専門にしていた。

『低予算でいかに強いチームを作り、選手の能力を最大限に引き出すか』

後の『マネーボール理論』をブラントはやってのけようとしていたのだが、肝心のシャピロは自分の言うことよりも腹心の
スカウトの方に耳を傾けているという。

ビリーは彼に『現役時代のオレを分析してみろ、本当に一位だったのか?』。ビリーは彼の結果を聞いてインディアンズから
彼を鶴の一声で引き抜くことにする。

しかし、それはベテランのスカウト陣やアート監督(フィリップ・シーモア・ホフマン)の意向にそむくものだった・・・


原作やその時のメジャーリーグと色々違う面に関してはこちらをごらん頂くとして・・・

ブラピ演じるビリーは最初からやりたくてマネーボール理論をやったワケではないと思います。

ただ自分はスカウトに言われたとおりに歩んだ人生で失敗した、ブラントに
『あのときのオレは本当に一位指名だったのか?』と分析を頼むと、性格面、打撃面、守備面全てを
分析にかけると『9位でいい方』と出た。

やっぱりな・・・あきらめに似たビリーの表情。うすうすと感じていた選手としての才能のなさに
本格的に烙印を押されたと同時に、この理論を信じ、やりぬくことを決意したと思う。

その辺りをベテランスカウトマン・グラディ(ケン・メドリック)に誤解されて暴言を受けるんですが。

スカウトもスカウトで予算がないもんだから、いい選手は引き抜けない、候補にあがった選手の
悪評をいうしか脳のない毎日を送るしかない。

折角ビリーが自分の理論を信じて選手を引き抜いてきたのにチームの士気は乱れるわ、監督は
意固地になって自分のお気に入りの新人ばかり起用するわ、どこへいっても意見が衝突してるチームだから
勝てっこないし、戦力も補強できない。


『数字』だけでなく『選手の人間性』も見なければトレードやスカウトは出来ないという
現実にブチあたるビリーなんだけど、それは過去自分を発掘したスカウトマンが『間違ったこと』と
同じなんだろうと思う。

そうして球団に残ったのはアンダースローのリリーフ・ピッチャーのチャド・ブラッドフォード(ケイシー・ボンド)、
捕手から一塁手へ転向したハッテンバーグ(クリス・プラット)らだった。

球団への感謝の気持ちを忘れない人間だけが引き抜かれて残った形になった

特にハッテンバーグの契約が決まらなくて、奥さんが別室で気を揉んでる所にビリーが
契約書をボンッと持ってくるシーン、アレはホントに良かった。選手なら誰でもあのシーンは
観たいと思うんだよね、本当に。


過去のトラウマや現状のチームが怖くて、GMでありながら試合を見ることが出来ない心の弱さも
持っているビリー。

そんなピリピリしているビリーを家族が心配していないハズもなく、娘のケイシー(ケリス・ドーシー)は
『パパはオバカね、もっと野球を楽しんで・・・』て曲をCDで作ってビリーに渡す始末。

だが、彼が球場に足を運んだことにより、選手は試合は変わり始める、どんな苦境が襲おうとも。

最後の最後、追い詰められたアスレチックの試合の中でハッテンバーグが見せてくれるのには
どんなことでも諦めてはいけないと思う


なんつーても4000万ドルの予算のチームが2億ドルのチームに勝つ方法を書いた、超アメリカンドリームが
原作である。

原題名だって『不公平なゲームに勝つ方法』となってるのだから(爆)

米国にアメリカンドリームというものが存在しなくなった今、この話がどれだけの夢をはこんでくるか、判ると思う。

元々『マネーボール理論』はビル・ジェイムスというポークビーンズ缶詰工場のおっさんが、統計学を元に考えた事だ。

三割打者と、二割七分の打者は見ただけでは判らない、二週間にヒット一本打つか打たないかの差であり、
二割七分の打者の方が、もしかしたら、三割打者より優れてたりするかもしれないなんてコトが書かれてたりする。

野球はスリーアウトになるまで判らないから犠打、盗塁などリスクを取るなとか、書かれていたりする。

どこの球団も『ズブの素人の野球理論なんか』と相手にしなかった、しかし、債権マンが書いたこの
原作本で一気に注目を浴びている所が興味深い。

その分野のマニアが書くとどうしても視野が狭くなる。

もっと違う視点からみれないだろうか、というのがこの映画の目的でもある。

まぁ、野球ってのは『選手が打つ』と面白いわけで、この理論どおりやると、選手が四球選んだりするから、
野球が面白くなくなるというのが本音なのだけど(汗)

でも日本では甲子園で松井選手に四球が投げられたりする事件などもあり、三振やアウトにリスクを削る
日本の野球は米国よりも早くにマネーボール理論は
取り入れられていると思います。


その証拠に、脚本はオスカー受賞のアーロン・ソーキン(『ソーシャル・ネットワーク』)、スティーブン・ザイリアン
『アメリカン・ギャングスター』)の二人が共同脚本になっているが、二人の脚本・製作のスタイルは
全く異なる。

一つの作品に対して全くアプローチが異なる脚本家が取り組みあうのは、なかなかみられるものではないし、
成功する例も稀だといっていいかもしれない。


ブラピの製作する映画は、甘ったるくてツメが甘い傾向にあるので、なんとなく好きにはなれなかったのだけど、
この映画は4年近く製作にかかった『難産』だっただけに納得いく出来です。

ブラピの作品全てにコレを求めちゃうと、ブラピ死んじゃうよな(涙)

本人自身、どうして監督をしないのですかと聞かれて

『ボクは完璧主義者だから、一つの映画には三年ぐらいかかりっきりになる。とてもいい作品を作りたいけれど、
そうすると家庭崩壊してしまうだろうから』と、いうのだな。

今回の映画観てて、ホントにだんだんレッドフォードに似てきたなぁと思うのだ。いい具合にトシもとってきたし。
昔はあの若すぎるとんがり方が、鼻についてどうも好きにはなれない俳優だったのだけど。


が、残念なことにこの『マネーボール理論』を金持ち球団までもが、リサーチチームを動員してやりはじめたことが
マネーボール最大の悲劇かもしれない。

映画でもビリーは金持ち球団レッドソックスから最高金額でGMのオファーを受けるのだけど、
結局『アスレチックで勝ちたい』という思いから断ってしまう。その二年後にレッドソックスはビリーの
理論だけ応用してシリーズ優勝に輝くのだから皮肉な話である。


何事も最初にやりはじめた人間の所に資本金もへったくれもない、なのに最後は金持ちや
有名人が持っていくというのはおかしいじゃないか?

そんな思いを形にしてくれたいい映画でもありました。


ちなみにこの理論を取り入れた野球で有名になったのはロッテですね。








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