348.モギレフスキーのレッスン①
先月、我が家にて行われた、マキシム・モギレフスキーのレッスンを録音したものを、通訳を務めてくれた私の友人、村上雄介氏が訳してくれました。大変興味深い内容です。まずは、ベートーヴェン ソナタ第18番 変ホ長調 作品31-3 第1楽章です。小節番号はヘンレ版を参考1楽章の最後について。通常は、最後だとわかるように、曲はフォルテで終了します。そうでないと、楽章が終わったのかどうか、聞いている側がわからないので。ただし、楽譜の注釈にある通り、ピアノ・フォルテのどちらで終わらせるべきかは、この曲では決まっていません。全楽章を弾く場合は、ピアノで終わらせることには問題がないと思います。コンクールや試験などで1楽章だけ弾くような場合は、フォルテとピアノの中間くらいで弾くのが効果的だと思います。曲の終わりであることを明確にしましょう。おそらく、最後の2音のうち、1音目を少しはっきり、そして2音目を小さく弾くといいでしょう。終わりであるという雰囲気が出せます。(ピアノかフォルテか、というのはよいとして)終わりというのは、説得力(convincing)のある形であるべきです。この作品と作品81a(告別)は、同じ性格を持っていると思います。調性が同じだが、音楽自体が似ています。作品に対して、ベートーベンが書いたコントラスト(対比)を出していきましょう。この曲がモーツアルトやハイドンやシューベルトと異なるのは、ベートーベンらしい強弱やコントラストであり、もっと明るく弾けるところもあるでしょうし、突然の対比というのが出せるでしょう。第一主題には複数の要素があり、これらを性格を違った風に弾けないでしょうか。最初の2小節の繰り返しの音符は、「降ろすという動作(down)」と「あげるという動作(up)」を使ったほうが簡単に弾けると思います。この2回は多少弾き方を変えたほうがよいと思います。ナウモフ先生は「全く同じ繰り返しがある場合、ちょっとした違いを付けられないか見つけてみて下さい」とよくおっしゃっていた。もし全く同じように弾く場合は、それは理由があるでしょう。今回は、例えば2小節目を少し軽く弾くという方法もある。ほんの少しだけ違いを出します。C⇒Fと、メロディは下がり、さらにスラーがついている。そこでdown ⇒ upを意識しましょう。繰り返す音(F)について、弾きやすければ(comfortable)同じ指を使ってもよいが、完璧なコントロールをしなければなりません。弾きやすさとは人により異なり、例えばスタニスラフ・ネイガウスはラヴェルのスカルボで同じ指を使ってました。心地よい指で、よくコントロールして弾いて下さい。鍵盤の使い方として、あまり奥を使わないほうが弾きやすいと思います。(奥はコントロールしずらく、手前はコントロールしやすい)。このフレーズ(C⇒F)は、指を少し滑らすように。ペダルは、最初から踏んだ状態で、それから弾き始めたほうが、ピアノにとっても音を鳴らす準備が出来ていると思います。3小節目から、またちょっと性格が変わります。違ったように弾きましょう。ポルタメントの意識。クレッシェンドを、すぐにするのではなく、4小節目の和音は大きくなりすぎないようにしましょう。6小節目のフェルマータ。ナウモフ先生は「(ベートーベンの)フェルマータについて、どれだけ伸ばすのかを考えておくように」と常におっしゃってました。例えばもう1小節分伸ばす、など(3拍が6拍に)。音楽によりけりですが、事前にフェルマータの長さについて検討しておきましょう。今回の場合は、1小節増やすくらいでよいと思います。7小節目の a tempoはもっと指揮者のように広いビジョンを持ち、方向性(direction)を持ちましょう。1拍子のつもりで弾きましょう。12小節目の和音は、深みを出すために、右手のトップノートと左手の一番下をはっきり出しましょう。19小節目は前の小節に対する解決なので、あまり大きくならずに。ここの右手は冒頭の動きと同様「down」⇒「up」を意識して。トリルを弾くとき、最初の準備休憩(rest)が重要。全般的に、もっと重力/自然落下(freefall)を使って演奏しましょう。重力を使わないというのは、歌手がブレスをしないようなものです。フランツ・リストが言うには、「ピアニストというのは大きい鳥であり、羽で空気を押すのです。羽の動きは呼吸をするイメージです。」26小節目はチェロやベースなど、オーケストラの楽器が独立しているイメージで。26小節目の1拍前をアウフタクトと意識して。33小節目、短調に変わり、音色の違いを意識します。急にピアノになる部分は、ほんの少しだけ時間を取って(長くなりすぎず、よい時間を見つけて)。33小節目の直前のたった一音で雰囲気/性格を変えましょう。35小節目の問いの答えが37小節目、ただし音楽としてそれぞれが繋がったように。35小節目からの和音。4つの管楽器のごとく、バラつくことなく、同時に打鍵します。43小節目。時間の使い方は今のでよいが、あまり遅くなってしまわないようにします。第1主題は八分音符の左手。第二主題は十六分音符の左手。なので、より神経質/ナーバスにエネルギーを持って弾きます。ここの左手は、小さく、近く、そして柔らかく(soft)。46小節目から、右手の3拍目のスラーを意識しつつ、よく聴きましょう。53,54小節目はインテンポで弾くのは難しいので、曲の意味を考えてください。まるで獲物が、木の周りをぐるぐるまわるようなイメージがよいでしょう。この4小節は、クレッシェンドはないものの、方向性(direction)を見せましょう。57,58小節目の最初の符点四分音符に注意を払いましょう。細かい音符を取って、歌の骨格を意識して。59小節目は、難しいけれども、2つずつのスラーで弾くつもりで(pretend)。ここの部分は、弦楽器のボウイングを意識しましょう。59小節目の3拍目の左手Bナチュラルを意識。63⇒64小節目はきつくならず、やさしく(gentle)終わらせる。65⇒66小節目も、終止形なので解決するように、やわらかく。68小節目からのクレッシェンドとスフォルツァンド(トリル上についていることに注意)は、曖昧にするのではなく、厳格に。72小節目から時間を忘れる感覚で。この先の八分音符ではやくならないように。72小節目からの右手の弾き方は、もっと鍵盤の手前を使う(内側をあまり使わないようにする)。78小節目のトリルは横の回転の動きを使って弾くとよいでしょう。86小節目は、蛇のような半音階レガートで(この曲は他の部分で、乾いた跳躍が多いので、そのコントラストを出す)。87⇒88小節目の右手は、冒頭の動きにも近い。提示部の最後の部分だが、冒頭と同じフレーズであるというイメージを。88小節目はディミヌエンド。108小節目はピアノ。116小節目はピアノ。123/125小節目は二分音符を聞いて下さい。127小節目からは左手もフォルテ(はやくならないように)。ただし、131小節目で急にピアノにします。135小節目からのクレッシェンドは、もっと後ろからクレッシェンドしたほうが効果が高いでしょう。137小節目の突入時に、ほんの少しだけ時間をとってもよいです。246小節目はピアノで。245-246小節は右手と左手の対話。247小節目の右手は、親指の使い方に気をつけて、手首を下げるイメージで。手首をやわらかく、リラックスして、手先に血液・酸素が循環するようにしましょう(イグムノフ先生のお言葉)。246小節目からは、同じフレーズを両手で練習するとよいでしょう。最後の2音は、八分音符ではなく四分音符であることを意識。説得力のある(convincing)終わり方を。全般的に、もっと重力(9.8)を使うと、力・音・コントロールなど、より出来るようになると思います。そうでないと、呼吸しておらず、息が詰まったように聞こえてしまいます。右手の手首をもう少し使うと、心地よく弾けると思います。曲に対するイメージはよいので、それをもっと大きく、明るく、強弱豊かに表現して、聴衆がそれをわかるようにしましょう。クリックお願いします!にほんブログ村