今日、レッスンをしていて思ったことです。その生徒は、この春、音楽大学を卒業したばかりで、私の下へ通い始めて半年ほどです。

 

当初は留学を考えていたようですが、私のレッスンを受けるようになって、留学は保留、私の下で勉強を続けることになりました。

 

その生徒の生まれ持った手の性は、指先の関節が柔らかく、従来の弾き方である、いわゆる「指弾き」で弾いていたので、指や手の安定感を得るために、指そのものを固めて、しっかり弾いていました。

 

今日のレッスンでは、ショパンのノクターン8番で、基本的なピアノの弾き方というのに集中したレッスンとなりました。

 

特に後半の右手にある速いパッセージを取り上げて、いかに「弾かずに弾くか?」ということを徹底的に示唆しました。

 

先に申しましたように、指先の柔らかい手の性ですから、固めて指でバタバタと一生懸命弾いていたのに対して、極限まで指の脱力を意識させ、手首の腱をしっかり意識することで、指先の関節の安定感を感じさせること。

 

次に鍵盤というのは1センチしか深さがないところで様々な表現ができるわけですから、極限の脱力をしつつ、鍵盤の浮力を指先に感じられ、鍵盤に押し戻されるような感覚で弾くこと。

 

鍵盤の浮力を感じるということは、速いパッセージを弾く時には、常に感じているべき感覚であり、先に申しあげた、「弾かずに弾く」というタッチの基本であり、それによって、下部雑音がなく倍音豊かに鳴り響くタッチになります。このタッチのことを私はバウンドするタッチと呼んでいます。弾いた瞬間に脱力して鍵盤の底から指先が浮いた状態になり、指先に浮いてきた鍵盤が触れるので、あたかも瞬時に鍵盤を2度打ちしている感覚になり、指先が鍵盤の上をバウンドしている錯覚?感覚を、覚えます。

 

日本では一般的に、下部雑音をしっかり鳴らし、指をしっかりさせ、「指を強くしなさい!」と教師が生徒に言うレッスンが基本ですが、世界の超一流のプロはそんなことはやっていないと思います。

 

以前の章でも申し上げましたが、医学的に指などある一定以上は筋肉などつくはずもなく、柔らかい関節が硬くなるわけでもなく、このことは指で岩を登っていくロック・クライミングの世界では常識であり、指を鍛えるのではなく、腕の腱や靭帯を鍛え強くしてこそ、脱力した状態で、指をコントロールできるようになるわけで、「指を強くしなさい!」と言って、様々な練習方法、中には指上げなど非常に危険なことに至るまで、間違った教育をしている教育現場で溢れていることは残念です。

 

指弾きでは無理な生徒にまで、その弾き方を強要している現実を考えたときに、その生徒に才能がないわけでもなく、努力が足りないわけでもなく、真面目に練習しているにもかかわらず、うまくならないのは、その生徒に問題があるのではなく、教える教師の側の不勉強であり、その現実から進路を変えざるを得ない子供が大勢いることでしょう。

 

今日のレッスンではそのような憤りを感じつつ、このようなタッチでなぜ?皆弾かせないのか?と思ったのでした。









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