講演ネタ 医療も社会保障も大丈夫 | 秋山のブログ

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経済において医療は目の敵にされていることがしばしばです。日本においては医療費亡国論なる話がありましたし、スタンフォード大学の経済学の授業でも取り上げられています。今回はその間違いを正す話をしますね。
どの話でも共通するのは、医療費などの社会補償費は抑制しなくてはいけないという間違った結論です。どうしてそのような話になるかといえば、少子高齢化の日本に限らず、多くの国で社会保障費は年々増加する傾向にあります。社会保障費はどんどん増加しているので、今まで他に使っていたお金が使えなくなるということになり、それは困るということで、社会保障費は抑制しなくてはいけないということになったのです。
経済に関して何の知識も無ければ、一見正しいように思ってしまうでしょうが、これは間違いです。より多く生産し、より多く消費できるようになるのが経済成長ですが、より多く生産できるようになるということは、より多くの収入を得られるようになるということでもあります。社会保障によって消費される分も加えて供給できるのであれば、使える予算は増え得るということです。
ここで問題となるのは、社会においてその社会保障を加えて供給する力があるかどうかという点です。様々な職場で人手不足であるという話を聞いているかもしれません。人口が減少しているから、より多く生産できないのではないかという意見を聞いたことがあるかもしれません。しかしそれで供給力が足りないと考えるのは短絡的な誤りです。先進国の多くの仕事において、買ってくれるのであればより多く提供できるというのが普通でしょう。人が足りないように思えるのも、非効率化やワークシェアリングがおこなわれているからで、女性や老人が働きに行かなくてはいけないほど、人口は減ってはいないのです。
中世に比べて何十倍も生産能力を増やした現代人にとって、供給力不足は考えにくいことです。供給力が過剰であるから、多くの国で失業が生じています。それでも時に分野によって労働力が足りなくなるのは、お金の分配が上手くいっていないからです。
さて、ここで少し前の日本の医療に関して述べてみましょう。当初日本の保険医療においては窓口での支払いがありませんでした。それが一割負担、二割負担、三割負担と上がっていき現在に至ります。窓口負担がゼロであれば、余程財源に困っただろうなどと思われるかもしれませんが、現在のように財源に困るといった話はあまりありませんでした。
当時と今との違いを見れば、累進課税の税率は相当高かったです。そのため高所得層がやる気をなくしていたかと言えばそんなことはなく、法人を作ってうまくやっていました。会社の経費として認められる部分が大きく、それが消費にもつながっていました。
ところが平成になり、累進課税が緩和されると同時に消費税が導入されるといった愚かなことがおこなわれたのです。それはトリクルダウンという全く愚かな思想が日本にも導入されたためでした。富裕層を優遇すると全体のパイが大きくなって中下層も恩恵を得るという話ですが、これは実証に乏しい話であり、現実にはパイは縮小して大きくなることはありません。
昔から経済において観察されてきたことは、立場の弱い労働者からの搾取です。多くの場合労働者はその貢献に見合うほどの報酬を受け取っていないでしょう。そのため低所得層は十分な医療を受けることができませんでした。それに対して富裕層が搾取した分を再分配する仕組みとして、日本の健康保険制度はよくできたシステムでした。再分配の徴収方法は、主に累進課税とインフレ税です。税制が改悪され、累進課税が緩和されたことは既に述べましたが、インフレに関しても間違った方法で抑制するといったことがおこなわれました。
従って正しい政策は簡単です。適切なインフレがおこるまで国が借金をして社会保障費に当てることです。格差やデフレを好む人間が、いろいろな理屈をつけて反対しますが、その根拠に実証により裏付けられたものはありません。もちろんある程度の調整は必要となってきますが、中下層の人間が十分豊かになった時点で、累進課税や利率を上げていけばいいでしょう。