講演ネタ 税金について | 秋山のブログ

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税金と言えば、多くの人がなければいいと思っているものです。今回は、無税国家に関して思考実験をしてみましょう。
まずはいつも使っている経済とお金の関係を示す図を出しておきますね。お金は貸し出しによって発生し、取り引きによっては消滅せず、人々の間を循環していき、返済によってのみ消滅するというのが基本です。徴税せずに国が使う場合は、国債という形でお金を借りて、社会保障としての給付又は何かの対価として、国民に支払うことになります。
 
返済なくお金が供給されれば、お金の循環に存在するお金の量はどんどん増えていきます。単純な貨幣数量説に従うと、その量に比例して物価が上がることになるわけですが、実際は物価の他に消費量が上がる場合もあり、また預金や債券の購入などに使われお金の循環から外れて長い間戻ってこないこともありえます。すなわち状況次第では、無税国家自体は無理なことではないということが言えると思います。
  *例えば、富裕層が庶民から搾取する割合が大きい場合、国がどんどん借金してお金を供給しても、全て富裕層に流れて行ってしまい、一般的な物価は庶民に買う金がないためモノの価格は上がりにくく、富裕層も安いモノで暮らして残りは全て貯金するといったことになって、物価も消費も上がらないといったこともありえます。
これに近いことがおこなわれていたのが、戦時中の日本です。国は国民の労務に対してかなりの割合で日銀からの借り入れでその支払いをおこなっていました。多くの企業や個人が通帳の上では大きな金融資産を持っていました。そんな状況だったので、終戦直後の大きな需要超過に対して、一気に金融資産が貨幣の循環に流れ込み、また日銀の積極的な融資もあって、ハイパーインフレがおこったわけです。
それならば、無税国家をおこなえばハイパーインフレがおこるかと言えば、そんなことはありません。戦争のように大きく急激に需給バランスが崩れるような出来事がない限り、物価の上昇は徐々に起こるものでしょう。そして搾取と需要飽和があれば、お金は預金や債券の購入、又は不動産の購入に向かうでしょう。
おそらくそこが無税国家において問題になってくるところだと思います。土地の価格の上昇はレントシーキングに繋がる可能性があります。インフレ税が発生しないためには、富裕層による金融資産の貯めこみが条件となりますので、これはこれで好ましくないことになります。
結局のところ、国はレントシーキングを防ぐ必要があり、レントシーキングを防ぐよい方法として徴税がありますので、無税国家などおこなわない方がいいということになるでしょう。税は再分配をおこない、搾取の問題を緩和するのみならず、経済成長を促す手段ともなるということですね。
  *基本的に中低所得層から所得税を取る必要はないでしょう。
こんなふうに思考実験をおこなってみれば、どのように課税すべきかということが分かってくると思います。
実体経済を循環するお金の量の調整が重要であることは理解されたと思いますが、その上でどの税がどの段階でお金を流出させるか考える必要があるでしょう。例えば消費税は、各取引毎にお金を流出させますから、景気を冷やす効果は特別強力です。一方、一旦流出したお金にかける税は、国がお金を使う速度は遅いものの、債券として貯めこまれるよりはマシなので、経済に良い効果があるでしょう。どのくらいのお金の量を目指すべきかと言えば、ほとんどの国民が十分な賃金をもらえるレベルまで上げた上で、その後は日本国が生産能力を上昇させる量に比例させて増やしていくのがよいと思われます。そして独占などによる不当に大きな利益がおこらないように、市場機能が十分に働くようにする。レントシーキングからは徴税により取り上げるといったことをすべきでしょう。
  *ベースマネーの調整で、この量を調整することはできません。