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 近頃あまり本を読む気になれず、読みたいと思える本もなく、読書傾向に偏りが生じているように感じている。だから打開策としてこのような本を手にしてみた。でも、あんまりパッとしない。2009年6月初版。

 

 

【本来の「天職」】
三浦  今、マックス・ウェーバーの『職業としての学問』を翻訳しています。「職業=ベルーフ」は日本語では「天職」とも訳されますが、今、就職情報誌などを読むと「天職」という言葉が、「一生やっても飽きない楽しい仕事」というような意味で使われている。でも、本来の天職と言うのは自分の意思で決めたものではなく、天から、神様から「おまえ、これをやれ」と言われて決まった仕事なんです。(p.14)
   《参照》   『悟りは3秒あればいい』 小林正観  大和書房
             【第3の生き方】

 

 

【頭を鍛えるためにはやはり読書】
三浦  情報収集だけなら本を読む必要性は減った。でも、頭を鍛えるためにはやはり読書が必須でしょう、思考力、独創性、発想力など様々な能力が読書で鍛えられると思いますから。(p.14)
 複合的に頭を鍛えるのに最適な方法は、なんといっても読書だろう。
   《参照》   『読書進化論』 勝間和代 (小学館)
            【大事な時間を読書に】

 

 

【「手づくりの情報整理ノート」】
 「小さな企業で地味な事務仕事をするのが自分の現実なのに、海外を飛び歩く有名企業のビジネスマンの仕事術みたいな本を読んでも、辛くなるだけじゃないですか」 と 『情報は一冊のノートにまとめなさい』 の著者、奥野宣之は問いかける。・・・(中略)・・・。90%以上の人は中小企業、零細企業で働いている。・・・(中略)・・・。奥野自身は、売れた理由を「手づくり感」と分析している。(p.18)
 この本の読後に、「手づくりの情報整理ノートは、なかなか良いかも」と感じていたけれど、結局、PCに打ち込むだけで終わっている。仕事で外に出る機会が多い人にはいいんだろうけけど、一日中椅子に座っている仕事の人は、みんなPCひとつで済んでしまうだろう。

 

 

【公共家族】
 「お手軽本より、原材料の本を読もう!」 ということで三浦さんが紹介している本が20冊。
 その中の、『資本主義の文化的矛盾』ダニエル・ベル著(講談社学術文庫)の記事に書かれていること。
 今本書を読めば、これは現在の日本のことが書かれているのかと思えるところも多い。日本でも「文化と経済を結びあわせていた絆が解体し」、「快楽中心の価値観」が主要な価値観になっているからである。我々は昔と比べれば、地域社会や家族とのつながりも、会社の同僚同士の付き合いも軽視するようになっているし、インターネット上にはあらゆる快楽がいつでも引き出せる情報として氾濫している。価値観は相対化し、ひとびとはばらばらになって、個人の世界に引きこもっているように見える。
 だが一方で、たしかに個人の自由は大事だが、もう少しお互いに助け合う社会にすべきなんじゃないかと考える人が増えてきて、NPOやボランティアに参加する人が増えたり、アメリカの政治学者パットナムの『孤独なボウリング』の影響で「社会関係資本」なる言葉が流行し始めたりしていることも、本書でベルが「公共家族」という概念を提案したことと通底するものがありそうだ。
 だが、私は肝心の「公共家族」にこれまで関心がなかった。改めて本書を読み返したい。(p.39)
 最近、若者達が集うシェアハウス(台所を共有する住宅)に関するテレビ番組を、見たことがある。
 江戸時代までは、子供は共同体全体で育てていたというし、ちょっと前までの地域社会にもそれらしい雰囲気が残っていた。公共家族と言うのは、それぞれの地域が経済的に豊かになる前まで、世界中のどこにでもあった本来的なあり方なのだろう。
   《参照》   『日本人を幸せにする経済学』 日下公人・森永卓郎 ビジネス社
             【売春を発達させたのは貨幣経済】

 「木の花ファミリーホーム」なんて、自給自足で生活する、正真正銘の公共家族である。
   《参照》   『生き方の原理を変えよう』 船井勝仁 (徳間書店)
             【時代の空気を捉えているからこそ自給自足】

 生活保護者に対しては、個別にアパート住まいをさせるより簡素なシェア・ハウスを建設してそこに住んでもらえば、孤独も解消できて、デイサービスに行く必要もなく、行政が支出する額だって少なくて済むだろうに、なんて思ったりする。

 

 

【12年間かかる】
 山田昌弘というと、『パラサイト・シングルの時代』、最近では『「婚活」時代』(共著)が有名だが、1996年に出した『結婚の社会学』は、現代における恋愛と結婚を考えるうえでの基本中の基本の文献だと思う。しかもコンパクトな新書。すぐ読める。
 私はこの『結婚の社会学』以来、山田さんの本はほぼすべて読んでいるが、恋愛と結婚に関しては12年前から同じことを言われている。『「婚活」時代』にいたっては新しい知見はまったくないほどで、それはつまり、学者の一つの知見が。『婚活時代』のように一般大衆が読む本として広がるまでに12年間かかるということなのである。(p.53)
 「学者の知見は、12年先の未来を見通しているんだよ」と、著者のような知的世界に住む人々の学識をそれとなく誇っているみたい。
 ところで、今日の非婚状況は、人類進化に関わる特殊ステージにあるからなのだけれど、それを学者さんはどう理屈付けているのか、読んでみようか。
   《参照》   『宇宙戦争 ソリトンの鍵』 光悠白峰 (明窓出版) 《後編》
             【魂が成熟していなければ、結婚してはいけません】

 

 

【読んでみようかなぁ~】
 雑誌「プレジデント」に掲載されていた書評記事が編集されている。その中で、「読んでみようかなぁ~」と思えた3冊。(ただし、図書館にあったら・・・程度である)
 『伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし』 前田佳子著 (ダイヤモンド社)
 『黄金の鍵で心、読みます。』 多桃子著 (祥伝社) (p.82)
 『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著 (青春文庫) (p.83)
 上の2つはコンシェルジュさんの著作。ホテル業界の人が書く本って、比較的面白い内容が多い。
   《参照》   『なぜ英国のホテルは世界で最も愛されるのか』  三澤春彦  オータパブリケーションズ

 

 

【地方自治】
 吉岡忍さんが書いている書評から
 最近私は新潟県の山村を舞台に『奇跡を起こした村の話』(ちくまプリマー新書)を出した。平成の大合併前、全国には約7百の村があったが、そこは唯一人口がふえた村で、過疎地指定も取り消されていた。村役場に行って驚いたのは、職員の4人に1人が外国生活の経験者であり、その彼らが朝暗いうちから夜遅くまで、文字どおり汗水たらして働いていることだった。(p.83)
 外国生活の経験者なら、日本の長短をよく知っているはずだから、具体的な良案が沢山出せることだろう。
 ところで、チャンちゃんの地元は合併して甲斐市になっていて、甲斐市の保坂武という市長は、380億の財政赤字を抱えながら、エスティマという高級な公用車で送迎させ、週末も運転手付き自家用車(BMW)でお出かけという庶民感覚のなさである。
 「平成19年度の住民税増税に関して、平均的な大人で年間どれだけ増額されたか知っていますか」、と訊ねたら、こともなく「知らない(!)」と答えた。
 また「市長のプロフィールに、趣味は読書と書かれていますけれど、年間で何冊くらい読まれますか」と聞いたら、なんと「1冊(!)」である。これで趣味を読書と書く感覚が凄すぎるだろう。
 格差が進み困窮する人がどれほど増えていようと、市の財政状況がどれほどひどかろうと、まずは自分を立派に飾ることから始める人間である。ろくに本など読まない人間というのは、こんなもんである。
      《参照》  『「逆」読書法』   日下公人  HIRAKU
                【人生反比例法則】

 こういう市長の許なので、市の職員たちの職務遂行能力も極限的ひどいものである。そもそもすることがないから出勤すらしていないという職務倫理完全崩壊状態である。職員たちは公務員(=生活保護の特権階級)としてのさばっているだけで、甲斐市のために本気で知恵を出し汗を流して働こうとする意志など誰一人持っていないだろう。頭が腐っているから当然のごとく職員も完全に腐っているのである。
      《参照》   『途上国から見た日本』 小森毅 (文芸社) 《後編》
                【国際協力と社会造り】

 

 

<了>
 
  三浦展