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cb650r-eのブログ

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―K-1の晩夏―

 

さて、夏もそろそろ終わりを告げる頃だ。
この夏、K-1では俺もすっかりスポーツ走行を堪能させてもらった。

本日のバトル相手は――
K-1の古株のひとり、「竹ちゃん」である。
歳は俺より五つほど下だったはずだが、走りに関しては雲泥の差。

コースはK-1往復、二本勝負。

……結果は、ご想像のとおり。惨敗である。
これでまた記録更新、連敗街道まっしぐら。

ちなみに、竹ちゃんの愛車はスズキのモタード、400cc単気筒。
650cc4気筒に乗る俺が、400の単気筒に毎度やられるとはどういうことか。



だが、奴のライディングは実に絵になる。
コーナー進入でスッと足を出すモタードフォーム。
切れ味鋭いライン取り。
気がつけば、俺の視界からすでに消えている。

K-1復帰後の俺の戦績――「
0勝12敗」。
この夏も連敗記録は更新中。

ひとつだけわかったことがある。
乗り続けたアラ還ライダーは強い。バイクの排気量や車種なんて大した問題じゃない。

……まあ、いいんだ。
今、俺は心から楽しんでいる。

CB650R e-clutch のある人生。これ以上、何を望もうか。

 

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

 

ここからは……


静かに余韻を楽しんでいると、久保弟シェフがテーブルのそばにやってきた。
「本日の料理は、お口に合いましたでしょうか?」

湯村社長が満足げに微笑む。
「おいしかったよ。料理も、当時の味そのものだね。完全に再現できていた」
女性陣3名も口々に「すごくおいしかった」と続く。

「ありがとうございます」
久保弟は深く頭を下げると、静かに厨房へ戻っていった。

続いて、久保兄がグラスの位置を整えながら、テーブルの上を丁寧に片づけていく。
卓上は再び、凛とした空気に包まれた。

そのタイミングを見計らったように、伊達木社長が口を開く。
「さて……少し、次の話をしましょうか」

 



その一言に、場の空気が再び引き締まった。

「ここからは、少しだけ“ビジネスの話”をしましょう」
伊達木社長の声に、皆が自然と姿勢を正す。

「早っ……昼に話したことが、その日の夜に具現化するとは。
これが、グローバル企業“フォレスト・トラスト流”のスピード感か……」
天野次長は、心の中でつぶやいた。

そして、湯村社長に、これまでの経緯を簡潔に説明しはじめた。
 

――実家が対馬のアナゴ商社であること。
――近江町市場の視察。
――長崎の寿司文化、旬アジや旬サバの話。
――アジフライの聖地・松浦のこと……。

 


湯村社長は頷きながら耳を傾けていたが、やがて静かに口を開いた。

「名刺に書いてある通り、私は『マルシェつきまち』の代表です。
……少し、築町(つきまち)の昔話をしてもよろしいですか?」

一同が静かに頷くと、湯村社長は、ゆっくりと語りはじめた。

 

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本日のMenu

 

「ALSACE RIESLING CLOS SAINTE HUNE 2019を選びました。アルザスの辛口リースリング、最高峰の一本です」

「出ましたね、アルザスのロマネ・コンティ」
湯村社長がうれしそうに言った。

 



「名門トリンバック家の誇る一本。フランスでも常に高得点を叩き出す、辛口白ワインですな」

料理も、ワインも、会話も。
すべてが自然とテーブルに溶け込んでいく――。

<本日のMenu>

 



前菜の盛り合わせ

サラダ

岩ガキ(石川県産)

ボルシチ

田舎風パテ(ガーリックトースト添え)

雲仙ポークの腸詰め

長崎ビーフのストロガノフ(サフランライス添え)

デザート

コーヒー

最後のデザートとコーヒーは、ホテル・インディゴのレストランからサーブされた。

 

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まずは乾杯!


「まずは乾杯からね」
伊達木社長が、涼やかな声で言った。

「今夜のシャンパンは、《La Grande Année 2015》をご用意したわ」

 



その言葉に呼応するように、久保兄がシャンパンクーラーから丁寧にボトルを取り出し、水気を拭う。
そして、静かに栓を抜いた。澄んだ音とともに、立ち上る香りがシャンパングラスにふわりと広がる。

4つのグラスに金色の泡が注がれた瞬間、伊達木社長が言った。

「今日という素晴らしい出会いに、カンパーイ」

グラスが軽やかに触れ合う。音が消えたあと、一瞬の沈黙。
そして、自然と笑顔がこぼれた。

久保兄が前菜をサーブする。
そこへ、発泡スチロールの箱を抱えた久保弟がテーブルに近づいた。

 



「本日は、石川県の岩ガキが入っております。生牡蠣が苦手な方はいらっしゃいますか?」

そう言って、大ぶりの岩ガキを披露する。
全員が「いただきまーす」と声を合わせた。

「夏のペチカ名物といえば、この岩ガキですよ」
湯村社長が嬉しそうに言う。

「この料理には、白ワインを合わせましょう」
伊達木社長が、空になったグラスを静かにテーブルに置き、次のボトルを促した。

 

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アルザスのロマネ・コンティ

 

「そうよ。今日は本当に“スペシャル”なの」
伊達木社長は、少し誇らしげに微笑んだ。

部屋の中には、すでに二人の男性が立っていた。
控えめに頭を下げながら、来客を迎える。

「こちらが、今はなきロシア料理の名店・ペチカのオーナーとシェフ――久保兄弟です」
伊達木社長が紹介する。

 

 



「うちの会社、いま“新領域ビジネス”として、出張シェフのマッチングプラットフォーム『Premiumシェフ』を展開しているんです。
でも、今日お越しいただいたこのお二人は……ビジネスではなく、友人としてご協力いただいてます」

「インディゴのレストランオープン時にも、いろいろと助言をいただいて。それがご縁で、ね」

そして、もうひとつ明かされた事実があった。
湯村社長は、2020年に閉店するまで、ペチカの三十年来の常連客だったのだ。

「週に二回は通ってましたよ。あの店の味は、忘れようがない」
湯村社長は、少し懐かしそうに目を細めた。

 

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名刺の主は……。

 

名刺には、こう記されていた。
「株式会社マルシェつきまち 代表取締役社長 湯村純一」

 



「……マルシェつきまち……」
天野は名刺をじっと見つめたまま、動かない。

その様子に気づいた伊達木社長が、さらりと声をかける。

「だって天野さん、長崎に“おさかなマルシェ”を作りたいんでしょ? だから湯村さんをお呼びしたのよ」

すると、湯村社長が豪快に笑った。

「いやいや、私は美味しい料理とワインに釣られて来ただけですよ。ハハハ!」

「はい、ビジネスの話は……料理を食べ終わるまで“禁止”ですからね」
伊達木社長は楽しげにそう言って、二人を特別ルームへと案内した。

入り口には、かつて長崎で愛されたロシア料理店「ペチカ」の看板が掲げられていた。
ロシア語で「печь(ペチ)」――暖炉を意味する、あの店のプレートだ。

「えっ……まさか、あのペチカですか? 伊達木さん」
湯村社長が驚いたように声を上げた。

 

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6時集合...。

 

午後5時ちょうど。アルファードはホテル・インディゴ長崎に滑り込むように到着した。



「天野さん、大杉さん。1階ロビーに6時集合でよろしくね」
伊達木社長はそう言い残すと、颯爽とエントランスへ消えていった。

「分かりました。遠慮なく、二人でお世話になります」
天野次長が丁寧に頭を下げる。

それから約一時間後――約束の5分前。
天野次長と大杉主任はロビーに降り、静かに伊達木社長の到着を待っていた。

そのとき、恰幅のいいスーツ姿の男性が玄関から現れた。
 

彼がロビーの中央付近に差しかかったころ、ちょうどタイミングよく伊達木社長も姿を見せる。

「湯村さん、急に呼び出してごめんなさい。でも、今日はきっと楽しんでいただけるはず」
伊達木社長は笑顔でそう言い、天野と大杉を紹介した。

「こちらが、大阪ビジネスコンサルタンツの天野次長と大杉主任です」

紹介を受け、天野と大杉は慌てて名刺を差し出す。
男性の名刺を受け取った瞬間、天野次長の表情がふっとこわばった。

 

 

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手加減というものを知らないやつ…。

 

8月30日、土曜日のK-1。
YAMAHA R1に跨るシータが、K-1の入口でエンジンに火を入れた。
「ピレリのディアブロの実力、見せてもらいましょうか」
還暦間近にしてもなお、挑発的な笑みを浮かべるその姿は若い頃と何も変わらない。

俺も続いてCB650Rを始動させ、シータの背中を追う。
一本目、上り。序盤はなんとか食らいつくが、中盤であっさり突き放され、終盤ではR1の姿すら見えなかった。
二本目の下りに至っては、最初から完全に置いていかれての一人旅。

「相変わらず手加減ってものがないなぁ、シータ」
ヘルメットを脱ぎながら声をかけると、先に休憩所に着いていたシータが、俺のバイクの右後方を眺めていた。


写真の左後ろには上原さんの超カスタムハーレの姿が…


「なに、この乙女チックなFILAバッグは…」
「おっと、またカスタムしちゃいましたけど、何か?」
「カスタムだと? ……だっせぇなぁ、お前ホントに」

そこへ、後から到着したハーレ乗りの上原君(彼も還暦)が笑いながら加わる。
「ハーレ乗りもやりますよ、こういう手作り感のあるカスタム」
「なわけねーだろ!」とシータが突っ込む。

やがて、シータはグローブをはめ直しながら言った。
「今日はここまでだ」
そう言い残し、排気音を残してK-1を下っていった。

時計はもうすぐ正午。じりじりと気温が上がり続けている。
「俺も今日は降りますわ、上原さん。熱中症になりそうで」
そう言って、俺もK-1を後にした。

 

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ロシア料理の名店 Pechka

 

「天野さん、代わって」

電話を受け取ると、柔らかく語りかける。

「千﨑さん? 週末、おふたりをご接待することにしたから――そのお返し、ちゃんと考えといてね」
そう言って電話を切ると、何食わぬ顔でスマホを天野に返した。

「……ありがとうございます」
天野次長が小さく頭を下げる。

その後、伊達木社長は、高速道路に乗るや否や、今度は自分のスマホで電話をかけ始めた。
立て続けに。

「もしもし、久保さん? 今夜、空いてる?」
「ええ、ええ、お願いできそう? お兄さんにもお手伝いお願いできるかしら?」
「じゃあ、ホテルには私の方から連絡しておくから」

次にかけた相手にも、同じように。

「湯村さん、お久しぶりです。今夜、ご予定あります?」
「それじゃあ、6時にインディゴ集合で、楽しみにしておいてくださいね」

ひと通り連絡を終えると、伊達木社長は満足そうに、にっこり笑った。

「……楽しい夜になりそうだわ」

「社長、気になりますって! 何が始まるんですか~?」
大杉主任がじりじりと詰め寄る。

伊達木社長は、少しおどけたように肩をすくめて言った。

 



「わかったわよ、わかった。実はね――昔、長崎に“Pechka”っていう老舗のロシア料理店があったの。2020年に惜しまれつつ閉店しちゃったんだけど」

「Pechka……?」

「ロシア語で“печь”。意味は“暖炉”よ。高級とは少し違うけど、センスが良くて、雰囲気も味も、ほんとに素敵なお店だったの」

「へえ……」

「で、今夜。そのPechkaが――インディゴホテルの中に、一夜限りで“復活”するのよ」

 



「……はあ」
天野次長と大杉主任は、情報量の多さに、まだ理解が追いつかない様子で目を見合わせた。

その表情を見て、伊達木社長は満足げに微笑んだ。
ただ、何かを、確かに動き出させようとしていた。

 

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100年かかってもできないかもしれない。

 

しばらくすると、効きすぎていた車内の冷房がようやく落ち着いてきた。
アルファードの中に、ふわりと穏やかな空気が戻ってくる。

そのタイミングを見計らったように、伊達木社長が、芝居がかった声で切り出した。

「さて――そろそろ、お宅らの“本当の狙い”を教えてもらおうじゃないの」

唐突な問いかけに、大杉主任が肩をすくめる。
が、天野次長は涼しげな声であっさりと答えた。

「はい、伊達木社長のお察しの通りです」

「ふふ、まあそうなるわよね」
伊達木社長は、いたずらっぽく笑いながら、普段のトーンに戻って話を続けた。

「で、長崎市内に飲食ビルでもプロデュースするつもり?」

「いえ、それよりもう少し小規模で、でも地元密着のものを考えています。イメージとしては……金沢の近江町市場みたいな、“おさかなマルシェ”のような感じでしょうか」

 


「ほう。で、それを誰がやるの?」

「うーん……まずは行政に提案してみようかと……」
天野がそう言いかけた瞬間、伊達木社長が語気を強めた。

「それは――絶対やめておいた方がいいわよ。100年かかってもできないかもしれない」

「……たしかに」
天野次長が、少し考え込むように答えた。



ひと息ついたところで、伊達木社長がふっと表情をゆるめる。

「まあ、とりあえず仕事は一区切り。せっかくだし、長崎市内に戻って“美味しいもの”を食べましょうよ」

「そうですね。でも、ずーと美味しいもの続きですけど」

「ヤッホー!」
と、大杉主任が子どものように声を上げた。

その間に、天野次長はスマートフォンを取り出して、本社への報告を始めた。
今日一日の流れと成果、特にCCRCが継続案件として採用されたことは、丁寧に伝える。

通話が終わろうとしたそのとき、伊達木社長がスッと手を伸ばしてきた。

 

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