名刺の主は……。
名刺には、こう記されていた。
「株式会社マルシェつきまち 代表取締役社長 湯村純一」

「……マルシェつきまち……」
天野は名刺をじっと見つめたまま、動かない。
その様子に気づいた伊達木社長が、さらりと声をかける。
「だって天野さん、長崎に“おさかなマルシェ”を作りたいんでしょ? だから湯村さんをお呼びしたのよ」
すると、湯村社長が豪快に笑った。
「いやいや、私は美味しい料理とワインに釣られて来ただけですよ。ハハハ!」
「はい、ビジネスの話は……料理を食べ終わるまで“禁止”ですからね」
伊達木社長は楽しげにそう言って、二人を特別ルームへと案内した。
入り口には、かつて長崎で愛されたロシア料理店「ペチカ」の看板が掲げられていた。
ロシア語で「печь(ペチ)」――暖炉を意味する、あの店のプレートだ。
「えっ……まさか、あのペチカですか? 伊達木さん」
湯村社長が驚いたように声を上げた。
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