長崎へGO!
出張前日。
「大杉さん、合流は新幹線の車内にしましょう」と天野次長が言った。
「それと、現地のことは(長崎の)対馬にいる弟に聞いておくから、事前に調べなくても大丈夫よ」と続けた。
「了解です。」
出張初日。
天野次長は少し早めに新大阪駅に到着した。そして、何気なく自分がこれから乗る新幹線の発車標を見上げた。
「これだ…。新幹線ができて、鹿児島は近くなったと感じるのに、長崎がそう思われない理由は…」

新大阪駅の発車標には「鹿児島中央駅」の文字が並ぶ。しかし「長崎駅」が表示されることはない。JRで移動する限り、長崎は今も“遠い場所”のままなのだ。
新大阪6:00発、鹿児島中央行き新幹線「みずほ」に乗車。
車内で大杉主任と合流し、簡単な打ち合わせを行った。

博多には8:28着。早い。
博多駅で8:54発の在来線「リレーかもめ13号」に乗り換え、武雄温泉駅で10:01発の新幹線「かもめ13号」に対面乗り換えする。

「すごく静かで、乗り心地がいいですねぇ」と大杉主任が言った。
「弟曰く、日本一短い新幹線で、ほとんどがトンネルらしいわよ」
「へぇ~、それはちょっと残念ですね」

そんな会話をしているうちに、列車は長崎駅に到着した。10:32。
「新大阪から4時間半。お世辞にも“近い”とは言えないわね」
そう話しながら駅の改札を出ると、にこにこ顔の男性がこちらを見ていた。
「ながさき漁業協同センターの上田です。厳原(いずはら)トレーディングの田山社長から、駅周辺のご案内をするよう頼まれております」
「すみませーん。弟がお世話になっておりまして。今回ご無理をお願いしてしまって…」
「いえいえ、お安い御用です。さ、参りましょう」
そう言いながら、JR長崎駅の西口へと向かって歩き出した。
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