次長の実家は…。
「さっきの続きだけどね、私の実家は対馬で、“あなご”の輸入買付けと国内販売をしてるのよ」
「えっ……どこかで聞いたような気が……」
「実はね、日本一の“あなご”の水揚げ量を誇るのが、対馬なの。あの海域の深い場所に生息していて、年中獲れるのよ。水深150~200メートル、水温は6度前後。良質な小魚や甲殻類を食べて育つから、身が締まっていて、肉厚で、味も濃厚なの」
「なるほど、それで“全国引き合い”なんですね」
「そうそう。とくに東京の豊洲市場では、対馬産のあなごがかなりのシェアを占めてるのよ。最近じゃ、大谷翔平選手が好んで食べてるってことで、ちょっと話題になったりもして」
「えぇ〜!それは……めちゃくちゃすごいですね!」
「年度にもよるけど、全国の30~40%くらいは対馬産なのよ。それに、市場では“価格の指標”になっていて、うちの卸業者が値決めのベースになるって言われてる。だから、“日本のあなごのプライスリーダー”なんて呼ばれることもあるの」
「えぇ〜、それもう、次長のご実家っていうか……ほぼ“海鮮界のインフルエンサー”じゃないですか!」
「へぇ……ちなみに、そのご実家の会社名って?」
「厳原(いづはら)トレーディング」
「……あっ!!」
大杉主任が急に声を上げた。
「私、昔、大阪貿易の国際業務部で輸入担当してたんですけど――毎日のように、その会社からドキュメント届いてましたよ!インボイスもパッキングリストも、もう見飽きるほど!」
「ようやくお気づきになりましたか……」

「最初に言ってくださいよ、最初に〜!いや〜、懐かしいなあ、あのFAXのロゴ!」
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