長崎と言えば…。
そして、翌週――週初の案件会議にて。
「本日の議題は以上です。部長、何かご発言はございますか?」
進行役の俺がそう促すと、千﨑部長が少し身を乗り出した。
「そういえば先週の会議で、天野次長から何か企画案があると聞いていたね」
「はい。この場をお借りして、簡単にご説明させていただければと思います」
天野次長が、落ち着いた口調で前に出る。
「今週金曜日、長崎県佐世保市にある医療法人H会を訪問し、先日まとめたCCRCレポートの提出と、意見交換の場を持つ予定です」
「うむ。その予定だったな」
と、千﨑部長がうなずく。
天野次長は一度うなずき、会議室を見回しながら、静かに話を続けた。
「ところで、皆さん。長崎と聞いて、何を思い浮かべますか?」
少しの間があって、俺が先に口を開く。
「ちゃんぽん、皿うどん、カステラ……あとは“おくんち”と冬のランタンフェスティバル、ってところかな」
「観光面なら、原爆資料館にグラバー邸、眼鏡橋、それにハウステンボス。世界三大夜景にも入ってましたよね」
と成瀬代理が続ける。
「部長はいかがでしょう? たとえば、お好きな食べ物とか…」
と天野次長が水を向ける。
「そうだな。ズバリ、中華料理と“卓袱(しっぽく)料理”だな」
その言葉に、天野次長と大杉主任が目を見合わせて、思わず笑みをこぼす。
「やっぱり」とでも言いたげな、その呼吸の合い方が、なんとなく微笑ましかった。
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