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cb650r-eのブログ

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アゴは空を飛ぶ。

 

食事の後、西日本魚市の構内にある施設を見学させてもらった。

見学を終えた後の帰り際、宮沢さんが紙袋を手渡してきた。

「これ、おとなりの平戸市の名産なんです。“あご出汁のもと”です」

「“あご”って、あれですよね。東京で流行ってる“あご出汁ラーメン”の“あご”ですか?」
大杉主任がすぐに反応する。

 



「そうです、そうです」

「……え、大杉さん。“あご”って何の魚か知ってます?」
天野次長がいたずらっぽく尋ねる。

「魚、ですよね……?」

「“とびうお”よ」
と即答する天野に、大杉は目を丸くする。

「とびうお……?」

 



「そうなんです」
と、宮沢さんが補足する。

「長崎には“五島うどん”っていう名物があるんですが、その出汁にも“あご”を使うのが定番なんですよ」

「じゃあ……長崎のラーメンは、“あご出汁”が主流なんですか?」

「いや……長崎市内には、あるにはあると思いますけど、店の名前まではちょっと……。平戸の生月島に1軒あったような……今もやってるのかなぁ」

「えっ、長崎の人って、“あご出汁ラーメン”あまり食べないんですか?」

「どうでしょうねぇ……少なくとも、長崎市内ではそんなにメジャーじゃないかもしれませんねぇ」
宮沢さんが少し考えるように言う。

「……長崎の人の、“さかな”に対する向き合い方、ますます “わ・か・ら・ん”……」
大杉主任は困惑した顔で、テーブルの上を見つめた。

そんなやりとりも笑いに変わり、食後の満足とともに、店をあとにする。

「宮沢さん、本当にお世話になりました」
天野次長が丁寧に頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ。千﨑部長によろしくお伝えくださいね」

手を振って見送る宮沢さんに背を向けて、3人はアルファードへと乗り込んだ。
スライドドアが音もなく閉まり、午後の海風に背中を押されながら、車は静かに動き出した。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

季節外れの…。

 

「さて、私から皆さんに、ちょっとしたプレゼントをご用意しました」

食後の余韻に包まれていたテーブルに、宮沢さんの声がふわりと響いた。

「えっ、なんですか?」
天野次長が身を乗り出すように聞く。

「ちょっと季節外れではあるんですが……。こちらの食堂にお願いして、“サバしゃぶ”をご用意しました」

「ラッキー!」
大杉主任が思わず声を上げて、小さく手を叩く。

ほどなくして、カセットコンロと、見事なサバの刺身が運ばれてきた。透明感のある切り身が、皿の上で静かに輝いている。



「真夏にサバしゃぶなんて、私も食べないですけど……」
と伊達木社長が言いながら、一切れをそっと出汁にくぐらせて口に運ぶ。
「ちなみに、つけダレは、長崎の伝統の香酸柑橘「ゆうこう」を使った私のオリジナルです」と宮沢さんがいった。

 



しばらく黙って、噛みしめるように味わってから、ふとつぶやく。

「季節じゃなくても……この旨さ。冬の旬だったらもっと脂がのって……。もっとうまいってこと?」

その言葉に、他の3人も静かに箸を動かす。
出汁の香りがほんのり立ち上り、サバのうまみが広がっていく。

やがて、伊達木社長がぽつりと言った。

「不思議なのよね。どうして長崎の人って、“旬アジ”や“旬サバ”をもっと食べたり、アピールしたりしないのかしら」

 



「ほんとに。不思議ですねぇ」
と大杉主任が相槌を打つ。

そのとき、伊達木社長が宮沢さんの方に向き直った。

「宮沢さん。うちの会社、最近“新領域事業”として、レストラン事業とか、出張シェフのマッチングプラットフォーム――『Premiumシェフ』っていうサービスを始めてるの。今度、改めてご連絡させていただくわ」

「またビジネスしてる……」
と、大杉主任は心の中で小さくつぶやいた。

 

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ブランディングのきっかけ。

 

「実は松浦市では、1997年から『旬サバ』、そして続いて『旬アジ』というブランド作りに本格的に取り組み始めたんですよ」
宮沢さんが続ける。
「きっかけは、当時のサバの豊漁による価格暴落でした。良い魚を適正な価格で流通させるために、“ただ高く売るための名前づけ”からスタートしたんです。でも次第に、漁獲海域・時期・魚種・サイズ・漁法という5つの条件を明確に設定し、商標登録や広報活動によって、しっかりとブランドとして根づかせてきました」

「すごいですね……」と大杉主任が感心する。

 



「地元鉄道の中吊り広告や、シールやステッカー、クリップなどの販促グッズも使って、地域内外への認知拡大を図ってきました」
と宮沢さんが続ける。

「さらに、天然魚の漁獲量が年々減るなか、松浦では養殖マサバ『長崎ハーブ鯖』の開発にも着手したんです。餌の工夫、出荷マニュアルの統一、そして鮮度保持のための迅速な活〆と脱血処理も徹底して。今では航空便での全国出荷も実現しています」

「なるほど……」
伊達木社長も、思わず真剣な表情で聞き入っている。

「それだけじゃなくて、松浦市では水産業の価値を観光にも結びつけてるんですよ。修学旅行の学生向けに、漁業や農業の体験学習、家庭での宿泊、魚のさばき方や調理のレッスンなどを提供して、地域への理解を深めてもらってます」

「すごいな……」
と大杉主任が感嘆の声を漏らした。

「つまり、ブランドづくりにとどまらず、生産現場と消費者を直接つなぐ仕組み、そして体験の場まで用意して、地域振興と経済循環の両立を目指しているんです。2019年に『アジフライの聖地』を宣言したのも、そうした一連の流れの中にあります」

 



話を聞き終えた天野次長は、ゆっくりと湯飲みに口をつけたあと、しみじみと呟いた。

「なるほど……水産物が、地域振興に一役買うか……」

その言葉には、どこか希望のような響きがあった。

 

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ブランディング…。

 

レストラン「旬(とき)」のテーブルには、食べ終えたばかりの旬あじ定食の器が並んでいた。
どの皿もほとんど空っぽになっていて、満足感とともに少しの名残惜しさが漂っている。

そんな中、話題は自然と“アジ”そのものへと移っていった。

「実は、大分県では『関さば』『関あじ』という名称で、2006年に商標登録してるんですよ」
と、宮沢さんが言う。

「知ってます。大阪でもその名前は有名ですよ」
天野次長がうなずく。

「現在の卸売市場では、東京が全体の約5割。次いで福岡が2割、大分県内の消費も2割程度ですかね」
と、宮沢さんがさらりと続けた。

「ただ、『関さば』や『関あじ』にも課題はあります。まずは、魚の絶対数の減少。これはもう、業界全体の大きな問題です。地球温暖化の影響で海水温が変化し、魚の動きや“旬”の時期までもがズレてきているんですよ」

大杉主任が、なるほどと頷きながら、スマホで検索した日本各地のおいしい“アジ”について口を開いた。

「アジって、競合も多いですよね。ノーブランドを含めれば、愛媛の宇和島の大アジ、島根の『どんちっちアジ』、佐伯のアジに、淡路島のアジ……。どれもそれぞれ特徴がありますし」

「その通りです」
と宮沢さんが頷く。

「正直なところ、大阪では『関あじ』『関さば』の知名度はあっても、『旬(とき)アジ』『旬(とき)サバ』を知っている方は、あまりいらっしゃらないかもしれませんね」
天野次長がそう言うと、宮沢さんは軽く笑った。

 

 

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どちらにしようかな…。

 

「さあ、どちらにしましょうか」
宮沢さんが笑顔で尋ねる。

 



「大杉さん、決めてよ」
天野次長がパスを出す。

「ネーミングだけで選ぶなら『魚市食堂』一択なんですけど……ここはあえて逆張りで、『大漁レストラン旬(とき)』にしましょう!どうです、宮沢さん!」

「大丈夫ですよ、どちらも間違いなくおいしいですから」

軽く肩をすくめた宮沢さんに、大杉主任がズコッとずっこける仕草をしてみせる。
そのまま4人は、「レストラン旬(とき)」へと入っていった。

席につくと、大杉さんがメニューもよく見ずに注文する。

「旬(とき)アジフライ定食、4つください!」

運ばれてきた定食には、ふわふわのアジフライが美しく盛られている。箸をつけた瞬間、伊達木社長が思わず声をあげた。

 



「おいしい……!」

舌の肥えた彼女の口から出たその一言は、まぎれもない本音だった。

「宮沢さん、“旬”の時期って、いつ頃なんですか?」

「『旬あじ』は4月から8月、『旬さば』は10月から2月ですね」

「なるほど。そりゃあ、うまいはずだわ……。このアジフライ、絶品。ふわふわでサクサク、ほんの少しだけレア感を残した感じが絶妙だわ」

伊達木社長の言葉に、他のメンバーもうなずいている。

「ネットか何かで、松浦市が“アジフライの聖地”って呼ばれてるって記事を見たことがありますよ」
と、大杉主任がふと思い出したように言う。

「そうなんですよ」
宮沢さんが嬉しそうに頷く。

「2019年に、松浦市が“アジフライの聖地”を公式に宣言したんです。それが話題になって、今では観光にも地域振興にも、しっかりとつながっています」

 



昼のひとときは、旨いものと、ちょっとした地元の誇りとともに、穏やかに流れていった。
 

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タイヤで走りは変わるか…。


友人θ(シータ)のすすめで「ピレリ・ディアブロ・スーパーコルサ」に履き替えた、CB650R。
果たして、その走りの違いを体感できるのか。

「公道も走れるレーシングタイヤ」という触れ込みだが、その真価やいかに。

今朝のK-1はバイクの姿が一台もない。

 


まあ、今日はまず皮むきが目的。ひとりで軽く流してみる。

グリップ力は問題なし。純正で付いていたダンロップ・スポーツマックス2もかなり良かったけど、ディアブロもそん色ない。
コーナーの倒し込みも、正直あまり変わらない気がする。

ということで――素人の俺が公道で違いを感じ取れるはずもなく、皮むき終了。

 



…どうやら「違いの分かる男」には、まだまだなれそうにない。

 

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お魚のプロ。

 

エンヨウの建物に入ってすぐの玄関ホールで、一行はしばらく待っていた。すると、奥の通路から若い男性が現れる。



姿勢よく歩み寄ってきたその男性と名刺を交わすと、肩書にはこうあった。

「エンヨウ漁業協同組合 主査 宮沢 幸正」
そしてその下に、小さくもう一行。

「長崎海洋大学 水産学科 客員教授」

「すごい、大学の客員教授なんですね」
天野次長が思わず感嘆の声を漏らす。

「いやいや、そんなたいそうなもんじゃないんです。趣味の延長みたいなもので」
宮沢さんは少し照れながら、肩をすくめてみせた。

「でも、正直驚きましたよ。そちらの千﨑部長からお電話いただいて」

「千﨑さん、以前うちの大学の夏季セミナーで講師をされてて。たしか、テーマは“海洋資源の可能性”だったかな。終わった後に意気投合しちゃって、長崎市内の料亭でご馳走になったのを覚えてます」

「その料亭って、『橋本』じゃ?」と、大杉さんが目を細める。

「そう、それです」

「やっぱり、ここでもやってますねぇ、次長」

「そうですねぇ」
天野次長が苦笑いまじりに返す。

そんな会話の余韻を引きつれながら、宮沢さんの案内で敷地内の食堂へと向かうことになった。

 

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選んだタイヤは…。


さて、YAMAHA R1に乗る友人θ(シータ)にバイクショップについてきてもらい、俺のライディングに合ったタイヤを選んでもらった。

「山ちゃんの今のライディングだったら、ツーリング用の安いやつでもいいと思うぜ」
「本気で言ってる?」
「冗談、冗談」
「お守りだと思って、ちょっとだけいいやつにしようぜ」
「予算内のやつにしてくれよ」
「分かってるよ」

二人で店内のタイヤ売り場を見て回った。

「これなんかどうだい…」とθが指さした。
「何々…。『公道も走れるレーシングタイヤ』だと?? キャッチ最高じゃん!」と俺が言うと、
「ピレリ、ディアブロ、スーパーコルサだよ」とθが言った。

「お高いんでしょ〜」と俺が夢グループ風に言うと、
消え入るような声で「〇万9800円」とθが返した。

俺が付いている値札を見て、「お、ギリギリ予算内じゃん」と言うと、
「じゃあ、決まりだな」とθが答えた。

1時間半ほどのピット作業を経て、真新しいタイヤをはいたCB650Rがお出ましだ。

 



「お、いいねぇ」と俺は大満足でバイクに跨った。

スマホの天気予報によると、もうすぐ夕立が来そうである。

「山ちゃん、皮むきちゃんとしろよ!」と言いながら、θは先にバイクを発進させた。

 

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千﨑部長のお仕事は…。

 

「じゃあ、千﨑部長は何してんの?」

突然の問いに、大杉さんがニヤリと笑う。

「うーん。我々が出張のたびに、全国各地の“飲み友達”へ連絡と調整をしてくれてますね」

それが本気なのか冗談なのか、聞いているこちらにはわからない。けれど、言った本人はいたって真顔だ。

「まあ、千﨑さんらしいわね。今回も彼のおかげで、あなたたちと会えたわけですし」

「そうそう、あの人、こういうときはホントに役に立つんです」
大杉さんがふざけた口調でそう言うと、車内に笑いが広がった。伊達木社長も、天野次長も、自然と笑みをこぼしていた。

そんな和やかな時間の中、アルファードは松浦市へと入っていく。
佐世保から西九州自動車道に乗り、佐々インターで下りたあと、福井洞窟――旧石器時代から縄文時代の遺跡として知られる場所――を横目に、山道を抜けるルートを選んだ。時間をぐっと短縮できる、ちょっとした裏道だ。

「ここ、『調川(しらべがわ)』って読むの?」と伊達木社長。

「いえ、『つきのかわ』と読みます」
運転手がすかさず答える。

大杉主任がスマホを片手に、後部座席から指示を出した。

「運転手さん、調川の西日本魚市の敷地内に入ってください。『エンヨウ』という会社の建物の近くに車を停めていただけますか」

そう言いながら、すでに電話をかけていた。

「お世話になります。大阪ビジネスコンサルタンツの大杉です。……あ、宮沢さんですか。ちょっと早めなんですが、御社の前に到着しました」

 



電話の向こうから、明るい声が返ってくる。

「そうですか。私が玄関まで降りてきますね。そのまま、昼食に行きましょう」

 

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弊社の新しい業務の領域は…。

 

「フォレスト・トラストグループは、コーポレートスローガン『Change the Future』のもと、既存の不動産投資の枠を超えて、新しい領域への挑戦を続けています。たとえば、ウェルネス事業や保育所の開発など、御会と連携できる可能性もあるかもしれません」



少し間を置き、軽やかに続ける。

「また、CCRCに関わるスタートアップ企業との協業や連携を通じて、新たなイノベーションの創出も、お手伝いできると考えています」

一切の押しつけもなく、それでいて芯のある提案だった。
その場にいた誰もが、“この人は本気だ”と直感するような、そんな一言だった。

横で聞いていた大杉主任は、心の中で思わず叫んでいた。

(ちゃんと、ビジネスにしとるやないかい!)

だが、その言葉はもちろん、胸の中にしまっておいた。
会議室には、まだじんわりと熱の余韻が残っていた。

佐世保での会議を終えた一行を乗せて、黒のアルファードはさらに北へと向かっていた。目的地は松浦市。空はすっかり晴れ、窓越しの光が車内をほんのり温めている。

天野次長と大杉主任の方を見やりながら、伊達木社長が口を開いた。

「OBCって、私、成瀬さんくらいしか知らないんだけど……なんでそんなに介護や福祉に詳しいの?」

唐突な問いに、大杉主任が照れくさそうに笑いながら答える。

「いやぁ、実はですね……四菱総合研究所の松川主任調査役のレクチャーを受けたばっかりの、付け焼き刃ってやつでして。へへへ」

すると、すかさず天野次長が補足する。

「いえいえ、うちの副部長の山本は、もともと医療・介護分野のコンサルを10年近くやってまして。CCRCについては、かなり詳しいんですよ」

「ほう……」
伊達木社長が小さくうなずき、楽しげな声で続けた。

「じゃあ、不動産や開発は成瀬さん、医療・介護・福祉は副部長、人事・エンゲージメントは天野さん、国際と外為は大杉さんって感じなのね」

 


 

「まあ、そんなところですね」
天野次長が少し誇らしげに答えた。

 

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