懐かしき良き地域とコミュニティ
「高齢者、大学生、病気の人、障がいのある人――
分け隔てなく、誰もが手を携え、家族や仲間、そして社会に貢献できる街。
かつて存在した“良き地域コミュニティ”を、もう一度よみがえらせる街……か」
大杉主任が、手にしたパンフレットを見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
その声には、どこか懐かしさのような響きがあった。
「あの建物が、サービス付き高齢者向け住宅です。全部で32戸。部屋は1LDKで、大切なペットとも一緒に暮らせるんですよ」

と、大矢氏が歩きながら説明を添える。
「木の温もりを感じますね、これは木造ですか?」と天野次長が尋ねると、
「はい。構造にもこだわっていまして、テラスからは街路の木々が一望できます。春には桜、秋には紅葉も楽しめますよ」
と、大矢氏は微笑んだ。
「こちらが児童入所施設です。障がいのある子どもたちが、4つのユニットに分かれて、3つの建物で生活しています。“小規模ケア”の形をとっていて、一人ひとりの状態や個性に合わせた、きめ細やかな支援ができるのが自慢です」

淡々とした説明の奥に、積み重ねてきた時間と想いが滲んでいた。
天野次長は、しばし目を閉じてその場の空気を吸い込むと、
「ここでは“暮らし”が、ちゃんと息づいているんですね」と、静かに呟いた。
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