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ワインは素敵な恋の道しるべ

白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。


大変な出張だった。


上海での交渉は予想外に難航し、決裂の危機を何度も迎えた。


それらを何とか乗り越えて、契約調印に漕ぎ着けたものの、疲労困憊のあまり達成感は感じなかった。


虹橋空港から羽田空港に帰着しても、疲れは残ったままだった。

そこで車に乗り込むと行きつけの店に電話し、席を確保した。


『メルシャン・サロン』(京橋)の席を当日に取ることは至難の業だが、今夜は幸運にもテーブルが一つ空いていた。


一人で静かに飲みたい気分だった。 


彼女に電話し、心の癒しを求めたい気持ちもあったが、こんなに疲れ果てた自分を彼女に見せたくはなかった。


羽田空港から都心までは電車だと一時間近くかかるが、車だと高速が渋滞さえしていなければ、30分もあれば着いてしまう。


機内では食事をする元気も無かったので、お腹は空いていた。


しかし、料理を選ぶ力も残っていなかったので、お任せで頼んだ。


行きつけの店は私の好みを熟知しているので、こんな時は本当に助かる。


ワインは、強い赤を一本選んでくれるように店長に頼む。


何時もは、ブルゴーニュかトスカーナを進めてくれる店長が、珍しいワインを一本、私のテーブルに運んできた。


それは、アルマヴィーヴァ、2006年。

ワインは素敵な恋の道しるべ

なんと素晴らしく、嬉しい選択であることか。


フランスの巨匠、バロン・フィリップ・ド・ロートシルトと、チリの名門、コンチャ・イ・トロのジョイントで造られる、スーパー・プレミアム・ワインだ。


カベルネ・ソーヴィニヨン72%、カルメネール28%のセパージュで、あくまで濃く深く、心に滲みるワインである。


店長は、素敵な女性。


その気遣いに、心が和む。

ワインの名前は、モーツァルトのオペラ、「フィガロの結婚」に登場するアルマヴィーヴァ伯爵のこと。


エチケットのアルマヴィーヴァの文字は、作家ボーマルシェの筆跡。


ボーマルシェは、18世紀のフランスの劇作家で、ロッシーニのオペラ、「セビリアの理髪師」や、モーツァルトの「フィガロの結婚」の原作者として有名である。


また、エチケットの図柄は、古代チリの祭礼用の太鼓に描かれた太陽と宇宙を表すデザインである。


ところで、アルマヴィーヴァ伯爵といえば、フィガロの結婚相手、スザンナに言い寄る好色な人物。


なるほど、そんなアルマヴィーヴァ伯爵の名を冠するワインだけあって、飲むほどにすっかり元気になってしまいました。


素敵な店長と、モーツァルトと、ボーマルシェと、バロン・フィリップ・ド・ロートシルトと、コンチャ・イ・トロに感謝感謝の夜でした。





東京のだだっぴろい景色。


地平線まで山が無い。 遠くに見える工場の煙は、東京湾の向こう側。


パーク・ハイアット東京からの眺めは、巨大都市の夕暮れ。 


明治神宮の向こうには、六本木ヒルズ、愛宕山ヒルズ、そして東京タワー。


灯が点り始めると、全ての営みがその実態とは離れ、美しく輝き始める。


今夜は彼女のために、特別のスパークリング・ワインを準備した。



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イタリア、トレンティーノ・アルト・アディジェ州が誇るフェッラーリは、1902年創業。




















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その百周年を記念する、特別なスプマンテ、ペルレ・ネロ、2002年。



黒真珠という名のスプマンテ。 


赤ワイン用のぶどうから造られた、ブラン・ド・ノワール。


蜂蜜のように濃い色合い、しかし非常に強いぶどうの凝縮感に満ちたエクストラ・ブリュット。








今夜は彼女にわがままは言わせない。


だって、こんな素敵な部屋とスプマンテを彼女のために用意したのだから。


そしてもちろん素敵な赤も。
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今夜の赤は、フレデリック・マニャン、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、1997年。 


彼女が、そして私も好きなブルゴーニュの造り手。



マニャンが、20年をかけて熟成が進むと言うグラン・クリュ。 まだ12年しか経っていないが、もう飲み頃になっていることに期待し、コルクを抜き、息をさせる。


パーク・ハイアット東京のルーム・サービスの質は高い。 


ペルレ・ネロには、前菜三皿を合わせる。


スペイン産生ハム、チョリソー、オリーブとパエリア・サラダ。


ズワイガニ、マンゴー、アボガドのサラダ。


そして、ニース風サラダ、鮪の燻り。


クロ・ド・ベーズは、パスタとメインと共に味わう。


リングイネ、ワタリガニのソース。


アンガス牛のサーロイン・グリルをレアで注文。


照明を落とした部屋からは、都心の明かりが別世界のように眺め渡せる。


「素敵な眺めをありがとう」 グラスを持ったまま、彼女がつぶやく。

「素敵な君をありがとう」 私が応える。


「誰にありがとうって言っているの」 彼女が再びつぶやく。


「君をこの世に造りたもうた、全能の神に」 


再び二人の間には静寂とシャンベルタン・クロ・ド・ベーズの豊かな香りが漂う。


そして私は、心の中でもう一度『ありがとう』とつぶやいた。



海外から帰国すると、鮨を食べたくなる。


日本に居る時は、何時もイタリアン、フレンチ、カリフォルニア料理を食べ歩いているのに、海外から成田や羽田に到着すると、何故か鮨屋に行きたくなるのだ。


成田から彼女に連絡し、東京駅で待ち合わせることにした。


電車の中で、どの鮨屋に行こうかと思案する。


時間があれば浅草の先の『鮨勝』(今戸)が美味くて良いのだが、東京駅からだちょっと遠い。


南青山の『花井』のカウンターも好きだが、やはり遠い。


日本橋の老舗、『蛇の市』も美味い江戸前だが、ワインを置いていないので、彼女と一緒のときは行きづらい。


『蛇の市』に行く時は、三越本店で冷えたシャンパーニュか白ワインを仕入れて行くのだが、今夜はそんな時間的余裕が無い。


という訳で、東京駅から車でそんなに時間のかからない六本木に行くことにした。


『琴』(六本木)のカウンターに陣取ると、早速ワイン選定に取り掛かる。


食事は、席を予約する時に、板さんのお任せを頼んである。


選択に迷っていると、店長がリストに無い、私達が好きなシャンパーニュを特別に出してくれるという。


出されたボトルは、ペリエ・ジュエ、ベル・エポック、2000年である。
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彼女は、今夜は鮨よりもフレンチかイタリアンの方が良かったようで、少し不機嫌気味。


ところがベル・エポックを見た途端、急に明るくなり、顔が輝いた。


ベル・エポック、”美しき良き時代”、まさに彼女にお似合いのシャンパーニュだとつくづくそう思う。



今までは1999年のヴィンテージだったが、もう2000年に切り替わったようだ。


お通しは、ほうれんそうのおひたしと、つぶ貝。


続いて、旬の刺身、そして鱈の白子に鰤大根。


和食とベル・エポックのハーモニーが美しい。
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帆立の安倍川が出されるときに、赤ワインに切り替える。



赤は、和食に合わせ、強いものは避ける。


そして選んだのは、シャンドン、ピノ・ノワール、2008年。



今まではグリーンポイントと呼ばれていたが、このヴィンテージからシャンドンと名前が変わった。


シャンパーニュの大御所、モエ・エ・シャンドンがオーストラリアで経営するワイナリーである。


さすがモエ・エ・シャンドン。 ピノの奥深い味わいがしっかりと乗った良い出来である。



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彼女も今夜のワインの選択には満足の様子。


私はずっと日本に居たのに、何故お寿司屋さんに行かなければならないのかと不満を口にしたことなんかとっくに忘れた模様。


でも、それで好いのです。


君が喜んでくれれば、その何倍も私は嬉しいのだから。



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平目の握り。


塩でいただく。

















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ボタンエビの甘さがたまらない。




















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そして、旬の味覚が次々と供される。




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彼女も満足したようだ。


やはり、日本は素晴らしい。


そして、彼女も。


ベル・エポックとシャンドン。


日本は美味いと言いながら、フランスのシャンパーニュのお陰で、彼女の心を掴んだ夜でした。




夕方の羽田空港は発着便が集中する。


地方から到着する便は出発空港か、羽田の上空で待機させられ、延着することが多い。


今夜も到着が遅れた。


ターミナルを出るとタクシーに飛び乗って、丸の内に向かう。


ところが首都高速も真っ赤な渋滞サイン。


運転手と相談し、高速を避けて一般道の抜け道を疾走する。 道に詳しい車に乗れて幸運だった。


それでも『グランド・セントラル・オイスター・バー丸の内』に到着したときには、ワイン会の開催時間を既に10分も過ぎていた。


ニューヨークの『グランド・セントラル・オイスター・バー』には、オイスターを食べに良く行った。


当時は薄暗い地下道を延々と歩く、恐ろしい場所にあった。


今では再開発が進み、華やかな場所になっている。


遅れると、彼女と主催者に連絡してはいたが、気が咎める。



レストランに飛び込むと、ウェイティング・スペースで彼女が心配顔で待っていた。


私を待たずに先に会場に入るように言っておいたが、待っていてくれたなんて嬉しくなる。


ところが、彼女の言葉は予想外だった。


「ね、急いで。 みんな貴方を待っているから」


どうして私を待つ必要があるのかと訝りながら広い会場に入った途端、その理由がわかった。


メイン・テーブルに座る、主賓のネイスン・ワックス(NATHAN WAKS)氏と奥様の隣に、二つの席が空いている。


主賓の隣の席の客が来ないので、会を始めることができなかったのだ。


ワックス氏に遅れたことを詫びて着席すると、すぐにキリカヌーン・ワインズの試飲会が始まった。


キリカヌーン・ワインズのオーナー、ネイスン・ワックス氏はシドニー交響楽団のチェロ首席奏者でもあり、美しいワインを生産している。


最初に供されたのは、ヴーヴレ・スパークリング、2006年。 キリカヌーンがフランスで生産するスパークリングである。


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次は、ザ・ラッキー・シャルドネ、2007年。 
(写真は、シラーズ)

ザ・ラッキー・シリーズは、キリカヌーンのセカンド・クラスであるが、充分に美味い。























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続いて、モーツ・ブロック・リースリングが抜栓される。


リースリングは今やオーストラリアの辛口が主流となった感があるくらいだが、キリカヌーンのリースリングも華やかさを保ちながらも切れの良い辛口で、とても美味い。














ワックス氏と奥様との会話も楽しい。 会話にはお二人の暖かな人柄と、ワインと音楽への情熱が溢れている。


彼女も久しぶりの英語での会話を心から楽しんでいる。


生き生きとした彼女を見るのは、本当に嬉しい。


私は、主賓や多くの参加者を待たせてしまったことで最初は気後れしていた。


しかし、ワックス氏の機知に富んだ話しと、彼女の輝く横顔のお陰ですっかり立ち直り、ホストとしての役割を楽しむことができた。


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そしていよいよ今夜のメインのワイン、キラーマンズ・ラン・シラーズ、2005年がグラスに注がれた。


これは美味い。


ぶどうの凝縮感に富む、重厚な仕上がりである。


彼女もこのシラーズには満足した様子。


彼女の要求レベルは非常に高く、妥協を許さないところがある。


今夜の彼女は、ワインというよりそれを生み出すワックス夫妻が好きになり、従ってワインの評価点も上がっているようだ。


キリカヌーン・ワインズ。


数多いオーストラリアの優良ワイナリーが生産するワインの中でも、長くお付き合いをしたいワインとなった夜でした。




シシリー料理、またはシチリア料理。


寒さが増してくると、なんとなく暖かい地方の名前に惹かれ、シチリア料理を食べたくなる。


ワインにしても同じこと。


以前、シチリアのワイナリー、ドンナフガータについてご紹介しました。


でも、シチリア・ワインを語るには、それだけでは片手落ちです。


そうです、プラネタの存在を忘れることはできません!

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シチリアで300年以上のぶどう栽培の歴史を持つプラネタ家がワインの生産に乗り出したのは1985年。


ワイン生産を主導したのは、プラネタ家当主の娘、フランチェスカと甥のアレッシオとサンティの三人の若者。


フランチェスカは金髪の美人、社長になった今もこのとおりの美貌を保っています。


かく言う私も素敵なフランチェスカに魅せられて、そして次には彼女が生みだすワインの力強さに惹かれて、プラネタ・ファンになってしまったのです。







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プラネタのシャルドネが、1996年にトレ・ビッキエリを獲得し、世界にその名を知られるようになりました。

















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その後もその名声は留まることを知らず、2005年にはチェラスオーロ・デ・ビットリアがシチリア初のDOCGとなりました。



プラネタは、シチリア原産のぶどうを用いた良いワインの生産にも力を注ぎました。



このチェラスオーロは、ネーロ・ダーヴォラ60%、フラッバート40%のセパージュで造られています。








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また、ネーロ・ダーヴォラのみで造られたサンタ・チェチリアも出色の出来と言えます。















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更に、フランスのぶどうを用いたワインにも、素晴らしいものがあります。


ブルデーゼはカベルネ・ソーヴィニヨン。


どのボルドーにも負けない力強いぶどうの凝縮感に溢れています。













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そしてこのシラー。


とても洗練された素晴らしい出来栄えです。








プラネタは他にも良いワイン達を生産しており、日本でも容易に入手できます。


ラ・セグレタ・ビアンコ


ラ・セグレタ・ロッソ


メルロー


コメータ


ロッソ・ディ・シチリア


彼女の前で、密かにフランチェスカに想いを馳せながら飲むプラネタ。


貴方も試してみませんか。




今夜はワイン通の友人一組を招いて、ワインの試飲会。


彼女と僕がホストを務める。


本当は彼女と二人だけで試飲をしたかったけど、二人では三本のワインはとても飲みきれない。


そこで残念ながら一組の友人を招いて、六本木のグランド・ハイアット東京の部屋で試飲会を行うことにした。


二人のゲストが、ペックのロースト・ビーフや、海老のサラダ、ペンネのサラダ、ドライ・トマトのエクストラ・ヴァージン・オリーヴ・オイル漬け、そしてプロシュートやサーモンのサンドウィッチを大量に持ってきてくれた。


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歓迎のワインは、ローラン・ペリエ・ウルトラ・ブリュット。


ドサージュ(加糖)を行わず、糖度の高い良質のぶどうのみを用いて造られる、切れの良い辛口シャンパーニュである。
















喉を潤した後は、食事をしながら今夜の目的のワイン、三本を抜栓する。



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一本目のワインは、アルトロヴィーノ、2005年。


直訳すると、”他のワイン”。


”格別のワイン”とでも訳せば良いのだろうか。











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二本目は、ドゥエマーニ、2004年。


つまり”両手”という名前。










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そして三本目は、スイサッシ、2004年。


”小石の上”というおかしな名前。









なんとも奇妙な名前の三兄弟。


これらのワインは、イタリアのスーパー・エノロゴ=天才醸造家であるルカ・ダットーマの作品なのだ。


ルカ・ダットーマはトスカーナの素晴らしいワインを次々と生み出してきた巨匠であり、その彼が自らワイナリーを開設したのは2000年のこと。


カベルネ・フラン、メルロー、シラーの三種のぶどうを植え付け、バイオダイナミック・ワイナリーの資格を取得し、有機栽培によるワイン造りに注力してきた。


そして2003年に世界に最初に送り出したワインが、このアルトロヴィーノなのだ。


アルトロヴィーノのセパージュは、メルローとカベルネ・フランが50%ずつ。


次に世界を驚かせたのが2004年にリリースされた、ワイナリーの名前を冠するドゥエマーニと、ダットーマの最高峰のワイン、スイサッシである。


ドゥエマーニはカベルネ・フラン、スイサッシはシラーから造られている。


アルトロヴィーノについて言えば、2004年はカベルネ・フランを全てドゥエマーニの生産に回してしまったので、アルトロヴィーノは生産されていない。


またアルトロヴィーノは、2005年がダットーマの求める本来のワインと言われている。


そこで、今夜のワインは、ドゥエマーニとスイサッシのヴィンテージが2004年であるのに対し、アルトロヴィーノは2005年を選んだのだ。


どれも生産量が少なく、入手困難なヴィンテージである。


でも、僕の彼女は少々のことでは感心してくれない。


友人たちはさておき、彼女の尊敬を勝ち取ることは大変なのだ。


その彼女も、今夜は驚いたようだ。


僕の素敵な彼女。 君が居るから僕は努力し、常により上を目指して頑張ることができる。


今夜は彼女の暖かさに包まれた、特別な夜となりました。




「ね、また出張なの?」


「うん、大分に行ってくる」


「国内ならまだいいけど。でも、何かあってもすぐに会えないかと思うと、なんだか不安なの」


「僕もすぐに君のもとに駆けつけることができない所に行くのは寂しいけど、でも僕の心は常に君と共にあることを忘れないでね」


ということで、大分にやって来た。


ここには好きなレストランがある。


大分全日空ホテルの最上階、21階にある『ラウンジ21』である。


大分の街が、そして別府の高崎山まで一望できる、静かなラウンジである。


彼女が一緒なら楽しいのにと思いながらも、友人たちとの会話に花が咲く。


最初に抜栓したのは、フェッラーリ、ペルレ、2002年。 
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イタリア、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の高名なスプマンテ、フェッラーリのミレジメである。


深い味わいは、並みのシャンパーニュを凌ぐ素晴らしいスプマンテだ。


乾いた喉を潤すと、あっという間にボトルは空に。













そこで、二本目に白を注文する。



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ヴィッラ・ブローリアの、ガヴィ・デ・ガヴィ、2007年。


イタリア、ピエモンテ州を代表する、辛口の白である。



そうこうする内に、前菜が運ばれてきた。


パルミジャーノのクリーム・ブリュレである。



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続いて、シャンピニオンのポタージュ。


お腹が空いていたので、あっという間に平らげてしまう。


















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魚料理は、やがらのムニエルを選ぶ。


ガヴィとの相性がとても良い。


















ここでワインを赤に切り替える。

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フレンチ・レストランに敬意を表し、赤はボルドー、ポイヤックのグラン・クリュ、ポンテ・カネ、1999年を選んだ。


ふくよかな香りと酸味、そして滑らかなタンニンのバランスが良く、10年を経ているとは思えない若々しさを保った素晴らしいワインである。







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ここで、口直しのシャーベットが供される。


かぼす風味の洋ナシのシャーベットである。

















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そして最後は子羊のロースト。


ポンテ・カネとの絡みが絶妙で、ワインの選択が正しかったことに安堵する。


















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デザートを食べながら、今夜のワインと食事をどのように彼女に報告しようかと考える。


そのまま報告すると、彼女が一緒に居ない時に、素敵なワインと食事を楽しんだことに心が痛みそうだ。


でも、今夜のワインの選択を評価し、褒めてもらいたいとの思いもある。


彼女の反応を考えていると、一人でニヤニヤしていたようだ。


友人達から、何を考えているんだと言われ、急いで顔を引き締める。


今夜の彼女へのお休みメールは、「僕の心は常に君の傍らにあり」から始めよう。


暖かな気持ちを抱き、満足した胃と共に、『ラウンジ21』を後にした夜でした。



愛媛県の川之江に来た。




私が学校で習った時は川之江市だったが、今は四国中央市という味わいの無い名前になってしまった。




川之江市と伊予三島市と土居町が合併し、四国中央市になったのだそうだ。




この辺りは四国山地の扇状地であり、良い伏流水が流れている。




そのため、良い酒が造られている。




だから、川之江という名前が美しいのだ。




夕方到着し、近くの洋風居酒屋に夕食を食べに行った。



CHICという名前の店で、チーズフォンデュを準備してくれた。



ところが、メニューにはワインが無い。



あるのは、ビールやサワー、カクテルばかり。



仕方ないので生ビールを注文し、ついでにワインは置いていないのですね、と店のご主人に確認する。



すると、何があるかわかりませんが、実家の酒屋がすぐそばなのでちょっと走って取ってきますとのこと。



そこで、出来るだけ良い赤を二本持ってきてくれるように頼む。


届いた一本目は、ポルトガルのニーポート社が造る自信作、エト・カルタ・ドウロ、2007年。


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ニーポート社が日本向けに造るボトルで、エチケットのデザインは清水麻紀氏。



エト・カルタを持ったネズミが、十二支の動物の元を旅するという図柄だ。



もうお気付きと思うが、エト・カルタという名前は、そう、干支のカルタなのだ。



トウリガ・フランカ等の地ぶどうを用いた、なかなかしっかりしたボディのワインで、チーズフォンデュに良く合う。



二本目は、テヌータ・ディ・ノッツォーレのキャンティ・クラシコ・ラ・フォッラ。


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ご存知のとおり、イタリア、トスカーナ州のワインであり、ぶどうはサンジョヴェーゼである。



それほど重くはないが、充分に楽しめる赤である。



出張中なので彼女に会うことはできない。




でも、仲間と気軽に飲むワインはまた別の意味で楽しい。



今夜のワインを、彼女に報告する楽しみもある。


実家に走っていって、ワインを持ってきてくれたご主人に感謝、感謝の夜でした。


























首都高をのろのろと進むゴルフ帰りの車の後部座席で、一人焦っていた。


どんどん強くなる雨が、フロントグラスを激しく叩いている。


流れ落ちる雨の先に、首都高の交通情報案内が赤く霞んで見える。


渋滞を示す赤いラインの先には、赤のぺけ印が点灯している。


事故だ。


携帯を開き、時間を確認する。


既に待ち合わせには、一時間近くも遅れている。


彼女は帝国ホテルのレセプション前でイライラしながら待っているはずだ。


車がなかなか進まないので、彼女に到着予想時間を連絡できない。


ようやく首都高の出口を降りると、今までのフラストレーションを振り払うように、車は日比谷に向かってスピードを上げる。


帝国ホテルのエントランスに飛び込むと、彼女が駆け寄ってくる。


「ごめん。事故渋滞で・・・」


「無事に到着して良かった。雨が強くなったから、無理して急いで事故を起こしたりしないか心配していたの」


この一言で、冷たい雨に固まっていた緊張が一挙に解け、心の中に彼女に対する熱い思いが湧き出てきた。



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彼女の手を取るとエレベーターに乗り、鉄板焼きレストラン『嘉門』に向かった。


ところで、鉄板焼きは和食なのだろうか?


魚介類や牛肉を焼くところだけを見れば、純粋な和食とは言えない。



しかも、料理人ではなく、シェフがサーヴしてくれる。


もちろんシェフの服装は洋装である。



でも鉄板焼きは、世界に認められた日本生まれの素晴らしい料理なのだ。


その証拠に、海外でも料理の名前はTEPPANYAKIである。


早速前菜に合わせて白ワインを注文する。

ブッチ、ヴェルディッキオ・クラシコ・スペリオーレ、2007年は、イタリア・マルケ州のワインだ。


通常は軽いワインだが、ブッチは軽さの中にもコクがあり、魚介類の鉄板焼きに良く合う。


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アミューズは里芋の揚げ物。


う~ん、和食と言うか、何と言うか、でも美味い。









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続いて前菜。


鴨が美味い。





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続いて、目の前で焼かれた大きな車海老。


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さらに、黒ムツ。












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そして、牛肉の前の、焼き野菜。


年代物のバルサミコとの相性が素晴らしい。



ここで赤ワインに変える。


今夜の赤は、リブランディ、グラヴェッロ、2005年。



イタリア南部、ブーツで言えば丁度爪先の位置にあるカラブリア州の、スパイシーなワインである。



セパージュは、カラブリアの地ぶどう、ガリオッポ60%に、カベルネ・ソーヴィニヨン40%である。

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有機栽培のぶどうを用い、新樽で醸造されたグラヴェッロは、カラブリアのトップ・ワイナリー、リブランディ社の代表作で、焼肉や唐辛子にもマッチする強いボディを持っている。


レアーで焼いてもらった、ヒレとサーロインが美味い。


二人でヒレとサーロインを交換しながら食べると更に美味い。


今日のゴルフは後半雨に祟られ、帰り道では事故渋滞に巻き込まれ、彼女を一時間以上も待たせてしまった。



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でも、『嘉門』のお陰で彼女も上機嫌。


終わり良ければ全て良し、の夜でした。


彼女と一緒に、友人を招いてワイン・パーティを開くこととした。


各人が好きなワインを一本ずつ持ち寄る、飲み較べの会である。


男女4組の、計8人の会だ。


今夜の会場は、恵比寿のウェスティン東京のスイート・ルーム。


私の好きなホテルだ。


ワイン・パーティをホテルの部屋で開くと、ワイン・グラスもシャンパーニュ用、白用、赤用を必要なだけ準備してもらえ、ワイン・クーラーにも氷にも不自由しない。


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食事も、前菜、パスタ、メインをその都度注文すれば、適温の料理を食べることができる。



ところで、ホストとしてどんなワインを準備するかは悩ましいところだ。


私と彼女の担当は、スパークリングと赤ワイン。



赤は、サン・ポリーノ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、2001年を選んだ。


有機栽培で造られたワインであり、イタリアでも最高賞を受賞したグレート・ワインである。


この選択に異を唱える参加者はいないはずだ。


しかし、シャンパーニュの選択には悩んでしまう。


いくらプレステージ・キュヴェでも、メジャーなシャンパーニュでは面白くない。



彼女の尊敬を勝ち取り、四組の参加者の中で、私の同伴者であることを誇りに思うような選択をしなければならない。


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そこで選んだのが、アルフレッド・グラシアン、キュヴェ・パラディ、ブリュットである。


キュヴェ・パラディはノン・ヴィンテージであるが、基本的には単一ヴィンテージのぶどうを用いている。


セパージュは、シャルドネ 65%、ピノ・ノワール 18%、ピノ・ムニエ 17%。


大手メーカーでは一次発酵をステンレス・タンクで行っている。


一次発酵を樽で行っているのは、今やアルフレッド・グラシアンとボランジェくらいと言われている。


ルミアージュも手で行うなど、伝統的な造り方を踏襲しているのだ。


フランスの三つ星レストランでは、必ずワイン・リストに収録されているという隠れた大物であるが、日本ではマイナーな、そして入手困難なシャンパーニュである。


彼女は、私がアルフレッド・グラシアンをテーブルに置いたときに、小さく驚きの声をあげ、誇らしげに私を見上げた。


他のメンバー6人が到着する前に、シャンパーニュ・グラス、白ワイン・グラス、赤ワイン・グラスがそれぞれ8個揃っているか確認する。


ワイン・クーラーも、花も届いている


部屋の確認を終え、彼女を見ると、手持無沙汰な様子。


集合時間までには、まだ少しある。


彼女をやさしく抱きしめると、どんなシャンパーニュもどんなブルネッロも及ばない、素敵な彼女の香りを心行くまで味わった。