『新参者』  東野圭吾 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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新参者/東野圭吾
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***この本は2009年10月に読了しました***

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。
(Bookデータベースより)



「刑事の仕事は捜査だけじゃない。
事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。
そういう被害者を救う手だてを探し出すのも、刑事の役目です。」



著者には珍しいシリーズモノである加賀刑事シリーズ。その最新作ですね。
加賀刑事ものは全部読んでますので、そのうち過去のものをちょくちょくupしていきたいと思います。


今回、加賀刑事は日本橋署に赴任します。
連作短編集というのかな。一つ一つの短編にそれぞれの登場人物たちの人間ドラマが描かれてて良いです。
江戸文化の香りが濃く残る下町情緒溢れる地域だけに「人情」が全体の大きなテーマになっています。
帯の謳い文句を借りるならば、「人情という名の謎」が加賀の前に立ちはだかります。



描かれている地域は、多少わかる地域だったので入りやすかった。
今も残る昔からの老舗。煎餅屋・料亭・瀬戸物屋・時計屋・・・、さまざまなお店が舞台になり、そこにいる登場人物達がそれぞれの物語を紡いでいきます。

この町では新参者の加賀刑事。
彼が日中、どのように考え、どこを動き回っているかが、短編を読み進めることによって、読み取れます。
事件にまるで関係のなさそうなことでも、真摯な姿勢で一つ一つを明らかにしていく。
直接的に関係がなくても、結果的にそれが真相解明に繋がっていく。
彼のそういう信念の通り、物語も関係ないと思うところから解決の糸口が見えてきます。



日本橋署の署長さんに言わせると「頭は切れるがひねくれ者で、おまけに頑固」な加賀刑事。
今回感じたのは、加賀刑事、いままでよりちょっと丸くなったかな?と。
いままでは鋭く研ぎ澄まされたイメージのほうが強かった気がする。
まぁ今回は人情に絆されるテーマだったし、物語的にもあまり起伏もなかったから、あんまり鋭すぎないように描いたのかな。それともだんだん歳とってきたのかな?笑


どの章も最後は、優しさや人情が心に柔らかく沁みるようで良かったです。
好きな章は五章ですが、好きなシーンは第二章の最後。
いつも思う、加賀刑事のような人とお酒を飲んでみたい、と。


そして事件解決の際ですら「人情」です。
ほんと、「THE 人情」って感じの作品でした。
シリーズものなのでちょっと甘めの評価にしましたが、普通に面白かったな。


最後に、この作品を述べた著者の言葉を。

「この町のことを思い浮かべるだけで、忽ち様々な人間が動きだした。そのうちの一人を描こうとすると、そばにいる人々の姿も描かざるをえなくなった。まるでドミノ倒しのように、次々とドラマが繋がっていった。同時に謎も。最後のドミノを倒した時の達成感は、作家として初めて味わうものだった」



★★★★

その他の東野圭吾作品
『卒業』  ◇『11文字の殺人』  ◇『名探偵の掟』  ◇『どちらかが彼女を殺した』  
『悪意』  ◇『白夜行』  ◇『片想い』  ◇『レイクサイド』  ◇『さまよう刃』  ◇『夜明けの街で』
『新参者』  


加賀シリーズはこちら
『卒業』
『眠りの森』
『どちらかが彼女を殺した』
『悪意』
『私が彼を殺した』
『嘘をもうひとつだけ』
『赤い指』
『新参者』



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