『レイクサイド』  東野圭吾 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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レイクサイド (文春文庫)/東野 圭吾
¥530
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***この本は2006年6月頃読了、2009年12月に再読しました***

妻は言った。「あたしが殺したのよ」―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこに?そして事件は思わぬ方向に動き出す。傑作ミステリー。
(Bookデータベースより)



中学受験を控えた子供たちの勉強合宿に、4組の親子と塾講師が参加していた。
そこへ参加者の1人である並木の愛人が突然訪問し、その夜―殺された。
並木の妻は言った。「あたしが殺したのよ」
するとなぜか、ほかの親達も必死で協力し事件の隠蔽しようとする。
他の親達がなぜそこまで妻を庇ってくれるのか?4組の家族の結束の固さはどこからきているのか?
疑問に思った並木が迫った真実とは――。



真夜中の湖の底よりも暗く深い、そして黒く不快な人間のエゴ。
愚かだと、笑い蔑むのは簡単だけれども、それをできない自分も傍らにいることを自覚してしまう。
人間の持つ弱さと儚さ、そして強さと卑しさと汚さに心を揺さぶられた。



親は子を想い、子も親を想う。
想いの強さは親の方が強かったとしても、想いの純粋さは子供のほうが上なのだろうか。
純粋過ぎるということは、ときに何よりも残酷なのことかもしれない。



ページ数も多くなく、さくっと読める量でサスペンスドラマとかの映像化とかにも向いてそうな作品。
だけど、やるせない気持ちにさせられ、考えさせられる部分は決して少なくない。
こんな親や子供や学校や先生はいるのかー?って思うけど、絶対にいないとは言い切れない。
逆にいてもおかしくないんじゃないかと、思わされるうまさ。
読後感は決して良くはないなのに、作品自体をあまり嫌いじゃないのは千街晶之氏の解説にあるように、際どい選択肢の設定の妙なんだろうか。


解説で気付かされたが、この作品には登場人物の心理描写が一切、ない。
それを嫌い、つまらなく感じる人もいるかも知れない。
だが自分は、それぞれの登場人物の想いを想像し、胸を打たれた。
想う気持ちは双方同じでも、想いの伝え方は一辺倒ではないし、伝える側が本当に伝えたかったことが受け取り側に伝わるとは限らないものだ。


最後の決断とそれを促すとあるシーンは、自分の心にある湖に石を投げ込まれ、ゆっくり波紋が広がっていくかのように様々な想いが胸を巡った。
簡単に正しい結論を出せない選択肢、それでも答えを出さなければならない立場だからこその、賛否両論なんだと思う。
暗い湖の底。本当にどす黒いのは人間の心か・・・。



「俺たちの魂はこの湖畔から離れられないんだ。」


★★★★


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