『夜明けの街で』  東野圭吾 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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夜明けの街で/東野 圭吾
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渡部の働く会社に、派遣社員の仲西秋葉がやって来たのは、去年のお盆休み明けだった。僕の目には若く見えたが、彼女は31歳だった。その後、僕らの距離は急速に縮まり、ついに越えてはならない境界線を越えてしまう。しかし、秋葉の家庭は複雑な事情を抱えていた。両親は離婚し、母親は自殺。彼女の横浜の実家では、15年前、父の愛人が殺されるという事件まで起こっていた。殺人現場に倒れていた秋葉は真犯人の容疑をかけられながらも、沈黙を貫いてきた。犯罪者かもしれない女性と不倫の恋に堕ちた渡部の心境は揺れ動く。果たして秋葉は罪を犯したのか。まもなく、事件は時効を迎えようとしていた・・・。
(出版社/著者からの内容紹介)



あらすじはほんと、上記通りなので、ご参照下さい。
不倫相手と家族との間で揺れ動く男の心理描写と、その不倫相手の家で15年前に起こった時効直前の殺人事件に関するミステリー、と言う2本柱のメインテーマで物語は進んでいきます。



「不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。」


不倫を軽蔑していた男が、いつの間にか抜け出ることができない不倫と言う名の迷路に迷い込んでしまう。
泥沼のようにもがけばもがくほど、逆にハマっていく禁断の恋。
知らなければ良かった。だけど蜜の味を知ってしまったからにはもう、知らなかった頃には戻れない。
障害があればあるほど、払った犠牲が大きければ大きいほど禁断の世界は魅力的なのだ。


奥田英朗の「マドンナ」 も同じように、妻帯者が年下の部下に恋するシチュエーション。
こちらも心理描写もうまかったが、結局、不倫は成就せずだった。

逆に今回の作品はものの見事に不倫が成就しまくりで、なんとクリスマスイブの夜も愛人と一緒にいるために、新谷君を筆頭とした学生時代の友人達がアクロバティックな方法で助けてくれたりする。

そんな感じで不倫にハマっていく描写も良ければ、逆に現在の妻と離婚を具体的に考えだすに連れて、狡くなり尻込みしていく描写もまたうまいと思った。
馬鹿だよなぁ、って思う自分がいる反面、何だか分かっちゃうんですよね、男の気持ちも、愛人の気持ちも、妻の気持ちも・・・。だから、余計に怖い。



殺人事件の方では、いろんな意味で女性の強さや弱さが伝わってきた。
時効まで15年間と言う歳月をどんな気持ちで過ごしてきたのか。時効を迎えたときに全てを告白した秋葉の心境。女として、娘として、愛人として、どんな心持ちだったのだろうと想像が胸を穿つ。だけど最後の涙は本物だったと信じたい。
そして夫の不倫を気付いていながら敢えて問い詰めず、お手製のサンタクロースの残骸がやけに生々しかった妻の心境。怖くもあり、切なくもあり、可哀想でもあった。




おまけ、みたいな「番外編 新谷君の話」は面白おかしかった。
経験者は語る!とはこういうことを言うのだろう(笑)



ちなみにこの作品、読む人が読めばすぐ分かりますが、Southern All Starsファンにはおなじみの不倫をテーマにしたあの曲がベースになっています。
出だしの歌詞はそのまんまこの作品のタイトルですし、会社で秋葉の視線を後ろから受けるシーンがあったり、と。
曲に出てくるあの場所がそれとなく出てきたり、渡部がまんまその曲をカラオケで歌うシーンなんかも出てきて、思わずニヤリとしちゃいます。
普段小説を読まないサザンファンも軽く手にとってみてはいかがでしょうか。
逆に現在進行形で、不倫をしている人は軽々しく手に取らないほうが良いかもしれません(笑)



不倫は不倫のまま終わらせるべき!なのだろうけど、元を質せばそもそも不倫自体するべきじゃないんだよね。



「赤い糸は、二人で紡いでいくものなんだ」



★★★


その他の東野圭吾作品
『卒業』  ◇『11文字の殺人』  ◇『名探偵の掟』  ◇『どちらかが彼女を殺した』  
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『新参者』  



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