『マドンナ』  奥田英朗 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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マドンナ (講談社文庫)/奥田 英朗
¥620
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***この本は2009年8月に読了しました***

人事異動で新しい部下がやってきた。入社四年目の彼女は、素直で有能、その上、まずいことに好みのタイプ。苦しい片思いが始まってしまった(表題作)ほか四十代・課長達の毎日をユーモアとペーソス溢れる筆致で描く短編5編を収録。上司の事、お父さんの事、夫の事を知りたいあなたにもぴったりの一冊です。
(巻末あらすじより)



40代のいわゆる仕事盛りのサラリーマンを中心に描いた短編集5編。
新人の時期をすぎ、30代でキッチリ仕事をこなし、自分の仕事に責任とプライドを持って働いている40代。
段々少なくなる上司に手もみして社内営業したり、たまに食って掛かったり。
自分の同期を見回してみると、出世街道驀進中のやつもいれば、そうでないやつも・・・。
そしてドンドン増えてくる部下に口うるさく説教じみたことを言う。
大企業の中間管理職ならではの、苦悩と葛藤、それを著者独特のユーモアとアイロニーを交えて描く短編集。



結構大企業中心に描かれているので、人数の少ない会社や中小企業や自営業者の人が読むと他人事かな。
でも年齢的には40歳前後じゃない人がても読んで面白い作品。
40代といえば、会社で責任が出てくるだけでなく、家庭においても反抗期やら子供の進路方針やら、色々な苦悩と葛藤が出てくる頃である。
そんな40代の上司のことが分かったり、逆に反面教師にできたり(笑)



会社にいる上司や同期だって、部下だって、そして自分の子供ですら自分とは違う価値観を持っていたりする。
いやむしろ違う価値観だらけの場合も多いことだろう。
生きてきた時代、環境、境遇がそれぞれ違うのだから。
そんな違う価値観を持っている人同士の衝突。苦悩、葛藤。そして和解。
いろんな人がいろんな考えを持って生活しているからこそ成り立つ社会。
嫌なこともたくさんあるけれど、世の中そんなに捨てたもんでもないかな、と教えてくれる作品。



個人的には表題作の「マドンナ」以外の4編のほうが面白かったな。
まぁ分かりやすく表題作に持ってきたのかも。
著者の代表作「イン・ザ・プール」 の伊良部シリーズのように、どの短編も終わりの数行で心が温められた。



同じコンセプトで女性の視点で描かれた著者の「ガール」、こちらは未読なのでそのうち読んでみようと思う。


サラリーマンの男性読者30~50代は共感できる作品で、女性読者は共感できないと思いますが、40代のサラリーマン像を知るには良作かも知れません。
40代中間管理職の夫がいたり、これから大人数の会社のサラリーマンと結婚する女性読者も軽い気持ちで手にとってもいいんじゃないかと思います(笑)



「マドンナ」 「ダンス」 「総務は女房」 「ボス」 「パティオ」の5編を収録。


★★★★


その他の奥田英朗作品
『真夜中のマーチ』  ◇『イン・ザ・プール』  ◇『マドンナ』  ◇『空中ブランコ』  ◇『ガール』


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