- 空中ブランコ (文春文庫)/奥田 英朗
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***この本は2006年6月頃読了しました***
伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。
だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が・・・。
この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?
直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
(Bookデータベースより)
「いらっしゃーい」
中から明るく甲高い素っ頓狂な声が響く。
中に入ると太った中年の白衣を着た医師が座っている。
胸には「医学博士・伊良部一郎」
前作イン・ザ・プール からあまり間を置かずに読んだからか、前作ほどの衝撃と言うか笑劇と言うか、ではなかったかなぁ。
とは言え、伊良部節はしっかりと健在!!
面白かった。相変わらず読んでいて、いつの間にかニヤニヤしちゃうんだよな~。
基本的に前作イン・ザ・プール 同様、いろんな患者さんが、色々な悩みを抱えて伊良部の元を訪ねてきます。
でもイン・ザ・プールより患者が身近ではない人たちかな。
サーカス団員、ヤクザ、医者、プロ野球選手、作家・・・。
それでもどんな患者が相手でも、伊良部のスタイルは変わらない。
そして今回は、最後の最後で看護婦マユミちゃんにすごく心を温めてもらった。
普段、無愛想なマユミちゃんだけに、そこがまた良かったな。
マユミちゃんの挿絵も見てみたかったかも。笑
でもね、よくよく考えると最後の女流作家を治したのって、伊良部じゃなくて、編集者のさくらなんじゃね?笑
「空中ブランコ」・・・サーカスの花形、空中ブランコ。パートナーのせいで失敗を繰り返し、怒るリーダーだが?
「ハリネズミ」・・・尖がった先っぽを見ると恐怖するヤクザ。ドスなんかを見た日には・・・。
「義父のヅラ」・・・文字通りです(笑) 明らかにヅラな人が周りにいる人は一回は読んどくべき!かな?笑
「ホットコーナー」・・・一塁への送球の仕方を忘れた名三塁手。イップスの代表例?
「女流作家」・・・過去に書いた小説と同じ登場人物やシチュエーションを書いてるんじゃないか、と病む女流作家。
どの作品も、前作と一緒で最後の3,4行あたりに、ギュと凝縮されています。
「人間の宝物は言葉だ。
一瞬にして人を立ち直らせてくれるのが、言葉だ。
その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。
神様に感謝しよう。」
この言葉は、きっと著者の気持ちそのままなんじゃないかな。
著者はこれからも素敵な物語を、創り出してくれること間違いなし!かな。
世界中のあちこちで起きている激しい出来事に比べれば、作家の仕事など砂粒のようなものだ。
消えたっていい。
風に飛ばされたっていい。
そのときどきで、一瞬だけ輝いてくれれば。
「いらっしゃーい」
きっと今日も誰かが、地下一階のドアをノックしてるんだろう。
あぁ、おれも通院してぇ!
★★★★★
その他の奥田英朗作品
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