こんにちは。
「心の傷を癒すということ」劇場版を観ました。
よかったです!!
公式サイト…
安田和隆は、小学生のときに、
自分が在日韓国人だと知って驚く。
アイデンティティに悩む和隆。
成長して、本名の安 和隆(あん かずたか)と名乗る。
「心のことを知りたい」と精神科医になった和隆。
神戸で阪神淡路大震災にあう。
避難所を回り、心のケアをしようとする。
心のケアとは、何なのか?
和隆(柄本拓)の話し方が優しい。
寄り添って聴くときの聴き方も、静かで誠実ですてきだった。
力まず、力が抜けてて、
それでもおなかには力がある感じの聴き方。
その聴き方や話し方を見るだけでも一見の価値があると思う。
「寄り添う」ってバランスがむずかしいのだ。
相手を押してはいけないし、
かといって引きすぎても寄り添えない。
聴くことは大事だけど、ただ聴くだけでは足りないときもある。
そういうときは、どう伝えるか?
和隆がやって見せてくれている。
和隆が避難所で小学生の子と話すシーンが素晴らしいです。
「ひじって10回言ってみて」(子ども)
「ひじひじひじ…」(和隆)
このさりげないシーンで、泣きそうになります。
その子は、ほんとうは話したいことがある。
でも遠慮している。
それでもだまっているのがつらくて、
和隆にどうでもいいことを話しかけている。
和隆は、忙しいのに、おだやかに「ひじひじひじ…」と答えるのです。
子ども時代の和隆が、日本名の名札を捨てるシーンは胸が痛かった。本名を名乗れないことは、「うそを言う」ことになってしまう。
高校生時代に、和隆が友人と公園で話すシーンがよかった。
自分は韓国人だ、と打ち明ける和隆への、友人の返事がいい。
その後の、階段のシーンもよかった。
友だちっていいなあと思った。
恋愛のドキドキもあった。
夫婦がお互いを思いやり合うシーンがあたたかい。
すてきな夫婦です。
地震のあとに、夫婦で話しているときに
おひざにいる子どもの表情が印象に残る。
3歳くらいかな?
黙っているけど、よく聞いているのがわかる。
避難所で子どもたちが地震ごっこをするシーンが出てくる。
子どもは自分の混乱した心、こわかった気持ちを
癒そうとして、遊びにして解放しようとするのです。
和隆と恩師の関係、ジャズ喫茶(バーかな?)の店主との関係も
いいなと思った。お互いを思い合い、いたわり合う。
憧れの教授に話しかけたときの会話がすてきだった。
看護師さんとの会話もよかった。
和隆が「自分のつらさを先生に話したら、先生がつらくなる」と言って話そうとしないとき、先生が、「私にとってつらいのは、君が1人で抱え込んで孤立することだ」と返すのです。言い回しは少し違うけど。
胸を打たれます…。
和隆のお父さんは、がむしゃらに働く。
仕事から帰ると、妻子は玄関に整列して出迎える。
家父長制の空気だ。
お父さんは、「心のことなんて、かまってられるか!!」と言う。
そういう時代だったよなあ。と思った。
まず、稼いで食べなくてはならなかったのだ。
和隆のお兄さんが原子力工学科に進学するシーンも、
そういう時代だったんだなあ。と思った。
昭和の始め、これからの花形の分野になると思われていたのだ。
(今からだって、廃炉にする研究は花形の職業だと思う。
花形という言い方はちがうかもしれないけど、大事な分野だ。)
避難所で、「弱さがあっていい」と和隆が言うシーンがとてもいい。
「弱さがあるから助け合える」と。
じんわりと陽だまりのような、あたたかい映画だった。
名言も多数。
原作も読んでみたい。
さりげなく画面に出る本が楽しい。
いちばん出てくるのがドリトル先生シリーズ。
きっと和隆の愛読書だったのだと思う。
ドリトル先生は、差別をしない。
子どもとも動物とも外国人とも先住民とも、対等に尊重して接する素晴らしい先生だ。
石ノ森章太郎のサイボーグ009、ミヒャエル・エンデのモモもあった。
「町は復興したけれど、
人の心の苦しみは、まだあることを忘れてはならない」という意味の言葉があった。本当にそうだと思う。
建物の復興より、心の復興は時間がかかる。
また、心は目に見えないから、復興が大切にされないこともある。
悲しみが終わっていない人もいる。
いまも抱えたまま生きている人たちがたくさんいるのだ。
そのことを忘れたくないと思う。
関連映画
・「浅田家!」をみて
震災と避難所が出てきます。
・「風の電話」をみて
東日本大震災で家族を失った少女の旅路と、出会う人々。
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