青桐美幸(Blue)

ライフスタイルレコードの場にようこそ♡


自己紹介はこちらから。

 

 

自分自身と向き合い

幸せな毎日を創るために。

仕事も遊びも恋愛も、
「好き」を表現することから

自分を確立するライフスタイルを

綴っています。

 

 

 

今までの話はこちら。↓

 

◆高校生編はこちらから。

◆大学生編はこちらから。

 

【片恋物語】社会人編①過ちはいつも後戻りできなくなってから気づく。

【片恋物語】社会人編②新しく出会う。それは誰かとの決別を意味する。

【片恋物語】社会人編③誰でもよかった。自分を認めてくれる人ならば。

【片恋物語】社会人編④関係を断つのは、まるで自分の甘さと弱さに足元を掬われた感覚に似て。

【片恋物語】社会人編⑤それはどこまでも追いかけてくる。だって振り返ることをやめないから。

【片恋物語】社会人編⑥自尊心を満たす。それだけのために利用した代償は重かった。

【片恋物語】社会人編⑦欲望は、時に刃となって傷つける。

【片恋物語】社会人編⑧愛してほしかった。でも愛されなくてもよかった。

【片恋物語】社会人編⑨ごまかしても燻る熱が消えないなら、いっそ灰になるまで。

【片恋物語】社会人編⑩再び会う。過去の清算と未来へ繋がる絆のために。

【片恋物語】社会人編⑪惑わせるのは、蘇る思い出か募る恋心か。

【片恋物語】社会人編⑫14年越しの恋は、愚かでも幼稚でも消えることなくここに在る。 ←今ここ

 

 

 

 

 

 

 

盆休み真っただ中の今日。

 


実家に帰省していたSと
約3週間ぶりに会った。

 


映画はレイトショーを予定していた
から昼から待ち合わせする
必要はなかったのだけれど、
なぜか昼食を終えてすぐに
地元の駅で落ち合うことになった。

 


そして更に不思議なことに、
なぜか2人でホテルに来ている。

 


お互い実家にいるため、
他人のいない場所が限られて
いるという理由は事実だ。

 


しかしだからと言って、
冗談で「ホテルに行ってみたい」
と嘯いてあっさり乗ってくる
とは思わないではないか。

 


どうせ私相手なら何も起こらないと
安心しているからだろうけれど。

 


かくいう自分もSと一緒にいて、
今更何かが起こるわけもないと
わかっていて言ってみたわけだけれど。

 


そんな呆れとも諦めとも
つかない感情を胸に抱きつつ、
未知の場所に足を踏み入れた。

 


微妙に緊張している私をよそに、
Sは寛いだ様子で着替えを確認し、
汗をかいたからとさっさと
シャワーを浴びに行ってしまった。

 


どこまでもマイペースなSと、
どう振る舞えば良いのか困っている自分。

 


このままではこの間の疑問をぶつける
こともできないと1人項垂れていた。

 


その困惑は、
バスルームから出てきたSが
私の隣に座った時も継続していた。

 


改まって「話がある」とSに
言われてもまだ心ここにあらずで。

 


とりあえず顔を上げた私に、
Sは天気の話でもするかのように言った。

 

 

 

 

 

S「結婚しようか」

 

 

 

 

 

――――空耳だろうか。

 


今、この耳は、一体何を聞き取った?

 


B「……冗談だったら笑えないんだけど」

 


冷静に切り返せた自分を褒め称えたい。

 


S「じゃあ、同棲しよう」

 


いきなり何を言っているのかこの男は。

 


B「何で突然そんなこと言い出したの?」

 

S「お前と一緒にいたいと思ったから」

 


1ミリも納得できる理由ではなかった。

 


だっておかしいではないか。

 


あの日、Sが私に何を言ったか。

 


結果、私達がどうなったか。

 


思い起こせばすぐにでも脳裏に蘇るのに。

 


B「……6年前のこと覚えてる?」

 

S「事細かく覚えてるよ」

 

B「じゃあ何で今そんなこと言うの?」

 


それからSの言い分を黙って聞いた。

 


6年前はきちんと考えられずに逃げたこと。

 


自分のことが嫌いで自信もなく、
他人を背負えるとも思わなかったため、
私の気持ちを受け止められなかったことを。

 


「恋愛対象として見たことは一度も
なかったはずだ」と口を挟むと、
「その気がなければ家に呼ばないしあんな
ことしようとも思わない」と断言された。

 


ただあの時のことが原因で気まずくなり、
傷つけてしまったことにずっと責任を
感じて連絡を取れずにいたらしい。

 


今回私からメールを送ったことで
改めて私とのことを考え、
一緒にいたいと思ったとのことだった。

 

 

 

 

 

一通りSの心情を聞いても、
正直全く信じられなかった。

 


だって、

 


B「一緒にいるだけなら
今までのままでよくない?
私はそれでいいよ」

 


肝心な言葉を聞いていなかったから。

 


友達でも一緒にいることはできる。

 


ずっとそうしてSの1番近くにいた。

 


だから今更曖昧な言葉だけで
関係が変わることはない。

 


私はどうしても事実を決定づける
はっきりとした言葉がほしかった。

 


その思いは十分すぎるほど
Sに伝わったようだった。

 


長い間逡巡した末、
とうとうSは私に問いかけた。

 

 

 

 


S「恋とか愛とかわからないけど、
お前と一緒にいたいと思ったから、
俺とつき合ってくれる?」

 

B「…………はい」

 

 

 

 


やっと聞けた言葉に対する答えは
それ以外に存在しなかった。

 


私を抱き締める腕も温もりも、
私だけに向けられたものだと自覚すると、
今までの思いが溢れて少しだけ涙が出た。

 


14年。

 


盲目に慕っていた4年も、
あるがままで良いと思っていた4年も、
距離すら遠のいていた6年も、
好きでいることをやめたことはなかった。

 


傍にいられなくても、
一生好きでいるとすら思っていた。

 


それがまさかこんな形で成就するなんて、
予想もしていなかった。

 


けれど今、
Sが目の前にいて私を見つめている。

 


一緒にいられる喜びを
全身で表してくれている。

 


それは紛れもない真実だ。

 


だから私もSの背中に
手を回して抱き締め返した。

 


この恋が確かなもので
あることを実感するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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