青桐美幸(Blue)

ライフスタイルレコードの場にようこそ♡


自己紹介はこちらから。

 

 

自分自身と向き合い

幸せな毎日を創るために。

仕事も遊びも恋愛も、
「好き」を表現することから

自分を確立するライフスタイルを

綴っています。

 

 

 

今までの話はこちら。↓

 

◆高校生編はこちらから。

◆大学生編はこちらから。

 

【片恋物語】社会人編①過ちはいつも後戻りできなくなってから気づく。

【片恋物語】社会人編②新しく出会う。それは誰かとの決別を意味する。

【片恋物語】社会人編③誰でもよかった。自分を認めてくれる人ならば。

【片恋物語】社会人編④関係を断つのは、まるで自分の甘さと弱さに足元を掬われた感覚に似て。

【片恋物語】社会人編⑤それはどこまでも追いかけてくる。だって振り返ることをやめないから。

【片恋物語】社会人編⑥自尊心を満たす。それだけのために利用した代償は重かった。

【片恋物語】社会人編⑦欲望は、時に刃となって傷つける。

【片恋物語】社会人編⑧愛してほしかった。でも愛されなくてもよかった。 ←今ここ

 

 

 

 

 

 

 

――――何が起きたのかわからなかった。

 

 

 

 


気づけば仰向けに倒れていて、
背中にはシーツの感触が伝わっていた。

 


視界を覆うのは私を見下ろすSの顔で、
その真剣な眼差しに射止められて
身動きすることすら忘れていた。

 


目を逸らすことも
言葉を発することもできず、
Sが私に何をしたのか考える余裕もなく。

 


時間さえ止まったと
錯覚するほどの静寂が訪れ、
空気だけがわずかに揺らいだ。

 

 

 

 

 

Sの唇が私の唇に触れたから。

 

 

 

 

 

――――キスを、された。

 


そう理解するのに
どれだけかかっただろうか。

 


Sとの間でこれまで一度も
なかったことが起きていた。

 


Sを好きになってから8年、
今、初めてキスされた。

 


この瞬間の喜びをどう
表せば良いのかわからない。

 


頭では散々、嫌になるほど散々、
「Sとは友達のままでいい」と
言い聞かせていた。

 


1番近くにいられるのだから
友達のままで十分だと。

 


でもあくまでそれは感情を抑圧して
優等生の振りをしていただけで、
本当はずっとそうされることを
望んでいたのだと思い知った。

 

 

 

 

 

その目で愛しそうに見つめられたかった。

 


その手で優しげに触れられたかった。

 


心を、向けてもらいたかった。

 

 

 

 

 

でも絶対に叶わないと思っていた。

 


それが、
信じられないことに今この身に起きて、
泣きそうになるほど嬉しいのだと
胸の内で叫んでいる自分がいた。

 


それはSの口づけが首元に移っても、
服をはだけられても変わらなかった。

 


たとえSの気持ちが伴っていなくても。

 


魔が差したのでもやけになったのでも、
何かにすがりたかっただけだとしても、
自分を求めてくれているのなら
理由は何でもよかった。

 


好きで。

 


好きで。

 


どうしようもなく好きで。

 


自分の気持ち以上に
必要なものは何もなかった。

 

 

 

 

 

それなのに。

 

 

 

 

 

私の身体に触れていたSの手が止まった。

 


閉じたままでいた目を開けると、
苦しそうな表情のSがいた。

 


S「…………ごめん」

 


何に対して謝られたのかわからなかった。

 


でもSが静かに離れていくのを見て、
どうあっても理解せざるを得なかった。

 


ああ、Sにとって私は、
身体すら魅力として映らないのだと。

 


どこまでいっても異性の対象として
意識されることはないのだと。

 


友達の枠を超えることは決してない。

 


それがSにとっての私という存在なのだと。

 

 

 

 

 

身体だけの関係でもよかったのに。

 


私に触れてくれるなら、
その源にある欲がどんな種類の
ものであってもよかったのに。

 


好きだから。

 


どうしようもなく好きだから。

 

 

 

 

 

結局Sは私のどんな思いにも
応えることはなかった。

 


心身共に完膚なきまでに拒絶されて、
ただただ呆然とするしかなかった。

 


その後、Sの家を辞する時まで
彼から私に近づくことはなかった。

 


それがSの答えなのだと
受け入れるしかなかった。

 


互いに気まずさを抱えたまま別れ、
その日も次の日もメールを
送ることはできなかったし
Sからも連絡はなかった。

 


それは時間が経てば経つほど大きくなり、
最早何を言えば良いのかわからなかった。

 


今更元の関係には戻れない。

 


かと言って、なかったことにもできない。

 


どうすることもできないまま
着信の鳴らない携帯を見つめ、
やがてそれを気にすることすらなくなった。

 

 

 

 

 

そうして気づいた時には、
Sと連絡を絶ってから
6年の歳月が経過していた。

 

 

 

 

 

⑨に続きます。

 

【片恋物語】社会人編⑨ごまかしても燻る熱が消えないなら、いっそ灰になるまで。

 

 

 

 

 

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