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子肌育Blog アトピーに負けない生活。

子どものアトピー性皮膚炎治療、スキンケアなどについての正しい知識を、わかりやすくまとめています。

赤ちゃんなら、薬はミルクに混ぜれば飲みやすいでしょ?


こんにちは。橋本です。


赤ちゃんや、まだ小さな子どもは、大人が飲むような錠剤やカプセルのような薬は、うまく飲めません。


苦味が強い薬も、拒否しがちです。


そのため、シロップ薬やドライシロップのような粉薬が、出されることがほとんど。


子どもが飲みやすいように、という気づかいですね。


大きくなってしまえば、薬を飲むことぐらい大した問題になりません。


しかし、子ども、とくに赤ちゃんによっては、口から吐き出したり、思うように薬を飲んでくれないこともあります。


毎回嫌がって薬を飲んでくれないなんてことになると、少し困ってしまいますよね。


とくに、アトピーのかゆみをやわらげるような、アレルギーのお薬だと、長い期間、飲み続けることもありますから。


それなら、赤ちゃんが好きなミルクに混ぜてあげれば、ゴクゴク飲んでくれるんじゃないか、という発想もありますが。


しかし、赤ちゃんには、「ミルクに薬を混ぜて飲ませない」が基本です。


赤ちゃんの薬:ミルクに混ぜない


 


薬と一緒にとっていけないものは、注意説明を聞く


「ミルクに薬を混ぜたらダメ」の大きな理由は、「薬の効果が落ちてしまうから」ではありません。


たしかに、ミルクの成分と反応して薬の効き目が弱くなるものもあります。


しかし、よく「ミルクを飲むと、胃に膜が出来て吸収しにくくなる」といわれますが、実際には、そのように薬の吸収に影響するようなことはありません。


ミルクと一緒に飲んでも、薬の効き目は変わらず、きちんと吸収される薬もたくさんあります。


何に影響されるかは、それぞれの薬で、特徴がまるで違います。


食事に含まれるものが、処方された薬に影響する。


または飲み合わせに注意が必要なお薬が出された場合は、お医者さんや薬剤師さんから、注意説明があるはずです。


 


ミルク嫌いになったら困るから


では、なぜミルクに薬を混ぜたらダメなのか?


それは、赤ちゃんがミルク嫌いになったら困るからです。


薬でミルクの味が変わってしまって、ミルク嫌いになっては困る。


ミルクは赤ちゃんにとって、ご飯であり、主食。


完全ミルクの赤ちゃんが、薬の混ざったミルクに違和感を感じる。


そうすることで、「ミルクはまずい!」と覚えちゃったら、食べるものがなくなってしまいますからね。


ミルク嫌いは、順調な成長に影響を与えかねません。


もちろん、「いつも薬はミルクに混ぜて飲ませてますよー」という人もいるでしょう。


それを今から無理に変える必要はありません。


しかし、うまくいったのは、たまたま、ラッキーだったのかもしれないのです。


薬を飲んでもらうためだけに、わざわざ、ミルク嫌いになるリスクを負う必要はないですよね。


同じように、離乳食など、薬を食事に混ぜて食べさせるのも、おすすめできません。


赤ちゃんの場合だと、


シロップ薬

薬をスポイトで吸い上げ、口の中にタイミングよくそっと流し込む


粉薬

軽く水で練って、ペースト状にして、ほっぺ(口の内側)に塗る


といった方法が基本です。


 


 


 


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食物アレルギーの食事療法はどう変わってきたか?…過去の不適切治療の例


こんにちは。橋本です。


食物アレルギーの治療の基本。


今のところは、アレルギー症状をおこさせる原因食物の除去が中心です。


これは、昔から変わりません。


しかし、昔と今では、治療内容に対する考え方が大きく転換してきています。


同じ「食物除去」でも、その内容が大きく違うわけです。


必要最小限の食物除去


 


「疑いがある食べ物は、なるべく除去」の罪


ひと昔前までのやり方。


それを少し、乱暴にいってしまえば、


アレルギーの「可能性がある」食物は除去


ということもありました。


たとえば、肉親関係、親戚関係にあるような食べ物。


卵アレルギーかもしれない子どもには、鶏肉も食べさせない、とかいう食事指導がおこなわれることもあったわけです。


牛乳が除去なら、次は牛肉も。


大豆アレルギーなら、豆類、マメ科の食品。


さらには、大豆から作られた醤油や味噌もやめましょう、という具合です。


つまり、ひと昔前までは、「疑わしきは除去」という治療があったわけなんですね。


たしかに、大は小を兼ねるで、どんどん疑わしいものを除去していけば、ほんとうに原因になっている食べ物を食べなくて済み、症状が出なくなる確率は高くなる。


ですが、その考え方は、物事の一面しか見ていません。


こうやって次々と食べるものを制限していくやり方は、子どもや母親の QOL(生活の質)を極端に落としてしまいます。


治療と引き換えに払う代償は、あまりにも大きい。


根拠なく「リスクゼロ」「絶対安全」を求めれば、最終的に「食べられるものがほとんどない」ということになるわけですから。


たとえば、


料理に手間がかかり、栄養のコントロールにも手間がかかる

外食や旅行先でも、必要以上に気を使わなければいけない

周りの人が食物除去に批判的で、理解してくれない


しまいには、食べさせるのが不安になってしまう、なんてことにもなりかねないんですね。


食べさせるのが怖い。自分の子どもを育てにくいと感じてしまう。


そんなところにまで追い込みかねないような治療。


そのような、必要以上に厳しい食物除去は、今から振り返ると、メリットより罪の部分が大きいように考えられています。


「牛乳がダメなら牛肉もダメ」というアレルギーの一致。


いわゆる交差抗原性(こうさ・こうげんせい)というものも、それぞれの食品群によって、大きな差があることも検証されてきています。


たとえば、牛乳アレルギーの患者が、牛肉にアレルギーをおこしていたのは、実際には10%ほどだったという報告もされています 1)


しかも、牛肉なら加熱を十分にすれば食べられるというケースもあります。


 


「必要最小限の食物除去」へ


ひと昔前までは、疑わしきは除去。


「いきすぎた食事療法」も、指導されていました。


それが今の標準的な治療、考え方では、「必要最小限の食物除去」へと、大きく変わってきました。


つまり、より正確な原因食物の診断をして、ほんとうに除去の必要が確かめられたものだけを除去しよう、という治療です。


「食べられるものは食べる」をなるべく目指す。


これは、子ども、ひいては家族の QOL を、治療の最優先に考えた結果でもあるわけなんですね。


正確な原因食物の診断には、血液検査やプリックテストだけでは、限界があること。


そして、食物除去試験・食物負荷試験のダブルチェックによって、アレルゲンの正確な判定がされるようになったこと。


この診断の変化は、食物アレルギー治療の進歩。


大きな目で見たときに、子どもにとって、より負担が少なく、 QOLを高める治療にも、大きな役割を果たしているわけです。


 


 


 


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牛乳アレルギーだと、カルシウムはどうするの?


参考文献:

1) Scott H. Sicherer. Clinical implications of cross-reactive food allergens. JACI 108(6): 881-890, 2001.


どうして柔軟剤で、洗濯物がやわらかくなるのか?


こんにちは。橋本です。


柔軟剤は、「必ず使わなければいけない」というものではありません。


だからといって、「使ってもしょうもないもの」というわけでもありません。


柔軟剤には、様々な期待される効果がありますが。


たとえば、いい匂いに包まれたいとか。


人によって違うかもしれませんが、、やはり一番期待される効果は、なんといっても、洗濯物の仕上がりを、ふわっとやわらかくすることですよね。


柔軟剤によって、やわらかくなり、肌すべりのいい服を着ることで、肌への刺激を減らすのではないか、という指摘もされています。


反対に、服に残った柔軟剤が、肌を刺激するのではないか、アトピーを悪化させるのではないか、といった指摘があるのも事実です。


その論争を追求するには、ぜひ知っておきたいことがあります。


そもそも、どうして柔軟剤を入れただけで、洗濯物がやわらかくなるんでしょうか?


柔軟剤あり:柔軟剤なし


 


界面活性剤の「親水基と親油基」


ものを洗うとき。


いわゆる洗浄するときに使われる洗剤には、界面活性剤というものが含まれています。


この界面活性剤のはたらきで、汚れを落としているわけですね。


で、その界面活性剤には、


水になじむ部分(親水基:しんすいき)

油になじむ部分(親油基:しんゆき)


注) 油になじみやすいということは、水を受けつけにくくなるともいえるので、親油基を疎水基(そすいき)とよぶこともあります(「疎(そ)」は、「遠ざける」という意味)。


という2つの部分があります。


もちろん目には見えないミクロの世界ですが、よくこの構造をマッチ棒のような絵であらわしたりします。


親油基:親水基


普通では、なじむことのない水と油に、「親水基と親油基」の2つを持つ界面活性剤を入れることによって、水と油がうまく混ざる。


そうすることで、服についた油汚れを、水の中に溶かし込む。


それが、界面活性剤が汚れを落とすメカニズムです。


このような洗浄力を持った界面活性剤は、アニオン界面活性剤(または、陰イオン界面活性剤:いんいおん)とよばれることがあります。


つまり、洗剤やシャンプーに含まれる界面活性剤はもちろんのこと、石けんもアニオン界面活性剤のひとつです。


では、アニオン界面活性剤は、どんな性質をもった種類の界面活性剤なんでしょうか?


 


アニオン界面活性剤とは?


アニオン界面活性剤は、親水基に、ごく弱い電気を帯びています。


電気の持つプラス・マイナスでいうところの、マイナスの電気を帯びているんですね。


アニオン界面活性剤:マイナスの電荷

アニオン界面活性剤


 


だから、「マイナスの電気を帯びている」という性質から、アニオン界面活性剤(陰イオン界面活性剤)という種類でよんでいるわけです。


 


カチオン界面活性剤とは?


洗浄剤には、アニオン界面活性剤。


一方の柔軟剤には、カチオン界面活性剤(陽イオン界面活性剤:よういおん)が含まれています。


カチオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤とは性質がまったく逆。


親水基が、ごく弱いプラスの電気を帯びています。


だから、陽イオン界面活性剤ともよばれるんですね。


カチオン界面活性剤:プラスの電荷

カチオン界面活性剤


 


さらに、カチオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤と比べると、一般的には洗浄力が弱く、すすぎ時に繊維から離れにくい性質があります。


その理由もあって、カチオン界面活性剤は柔軟剤やリンスに、よく利用されるわけなんですね。


 


柔軟剤のメカニズム


洗濯洗剤の主成分は、アニオン界面活性剤。


アニオン界面活性剤が洗濯物に溶け込むと、洗濯した繊維の表面は、水中でマイナスの電気を帯びます。


そこに柔軟剤の主成分、カチオン界面活性剤を流し込むとどうなるか?


カチオンがアニオンに引きつけられる


マイナスの電気を帯びた繊維の表面に、プラスの電気を帯びたカチオン界面活性剤がくっつきます。


繊維表面が親油基で覆われる


マイナスとプラスが引きつけ合うわけですね。


すると、カチオン界面活性剤の油になじみやすい部分、親油基が繊維表面をコーティングしたような状態になります。


いわば、ごく薄い油の膜でおおうような形。


これが繊維と繊維のすべりを良くして、手触りもふんわり、やわらかくしてくれるわけです。


繊維に柔軟効果が出る


 


柔軟剤は、投入するタイミングが大事


というようなメカニズムからあきらかなように、洗剤と同時に柔軟剤を洗濯の最初に投入しないのは、このコーティングをうまく作るためなんですね。


洗剤と柔軟剤を同時に入れてしまうとどうなるか?


アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤が、洗う前に結合して、水に溶けにくくなってしまいます。


これでは、親油基が繊維表面をうまくコーティングしてくれません。


うまくコーティングを作るには、柔軟剤を、すすぎの最後の工程で加える。


やはり、この「タイミング」が大事なんですね。


 


「柔軟剤はいいか?悪いか?」の問題点


「柔軟剤はいいか?悪いか?」については問題点をすべてあげると、どうしても長くなってしまいます。


柔軟剤で綿のゴワゴワがやわらぐ、もうひとつの理由

柔軟剤は、肌着やタオルの吸水性を落としてしまうのか?

柔軟剤を使う・使わないでアトピーの症状はどう変わったか?(ランダム化比較試験)


といったことについては、また後日、合間をみて公開しようかなと思っています。


 


 


 


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Kanye West - Good Life


こんにちは。橋本です。


今日は、Kanye West(カニエ・ウェスト)の曲、Good Life(グッド・ライフ)を紹介します。


kanye_west-graduation


 


Kanye West


Kanye West(カニエ・ウェスト)は、アメリカのシカゴを拠点として活動するラッパー。


楽曲もおもに自身で製作する、プロデューサーの役割もこなす。


Kanye West は、新作を出すたびに、ヒップホップの枠を押し広げるような音楽の形を見せる。


そのため2005年には、アメリカのタイム誌が毎年発表する「世界で最も影響力のある100人」に、選ばれた。


彼の型破りな行動、アートセンスは、つねに世界の注目を集めている。


Kanye が、次はどんな手を打ってくるのか、と。


Kanye Westは、シカゴの美大に通いながら、アメリカ最大の衣料品店チェーン、GAPでアルバイトをして生活し、音楽活動をはじめたという。


彼のセンスには早い時期から注目が集まりだし、それがはじめに花開いたのが、人気ラッパーJay-Z(ジェイ・ジー)のアルバム、Blue Print(ブルー・プリント)でのこと。


ニューヨーク・ヒップホップの転換点を示したこのアルバムで、Kanye Westは13曲中、4曲を手がける。


当時、多くのアーティストがスタイルの差別化をはかることができず、行き詰まり感を見せていた。


今から振り返ると、Kanye Westが、Jay-ZとともにBlue Printでみせた新たなスタイルは、時代の突破口を打ち破るのに十分だったとの評価も多い。


時を同じくして、Kanye Westは、Jay-Zのレコード会社、ロッカフェラ・レコードと契約を結ぶ。


2004年、彼の評価を決定づけるアルバムが生まれる。


自身のファーストアルバム『The College Dropout(カレッジ・ドロップアウト:大学中退)』が、それだった。


音楽活動に夢中になり、美大を中退した自身の経験をアルバムに込めている。


2002年には、運転する車で交通事故にあい、口の中にワイヤーを通さなければいけないほどの大ケガを負う。


その体験談もアルバム収録曲のタイトル、「Through the wire(ワイヤーを通して)」にしてしまうのも、彼の創作センスをよくあらわしている。


(「Through the wire」では、Chaka Kahnの曲、「Through the fire(炎をくぐり抜けて」をサンプリングし、ここにもタイトルの意味をかけている。)


つねに新たな可能性を押し広げる作品、発言をみせるKanye West。


まだまだ、創造力はおとえることを知らない。


 


Good Life


Good Life(グッド・ライフ)は、2007年のアルバム『Graduation(グラデュエーション:卒業)』からシングルカットされた曲。


軽やかなシンセのリフ。


それと共演、T-Pain(ティー・ペイン)のオートチューン(音程を機械加工された声)が印象的な曲となっている。


ぱっと聞くだけではわかりにくいが、マイケルジャクソンの曲、「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」に出てくる、キュートな声をサンプリングしているのもユニーク。


Kanye Westはこの曲で、第50回グラミー賞、ベストラップソングを受賞している。


また、ビデオクリップは、フランスのアートディレクター、So-Meが制作し、これもまた独特の世界を作り上げている。


この曲の開放的な雰囲気、メッセージはアルバムの中でもいいアクセントになっている。


 


Good Life ft. T-Pain

Kanye West

グッドライフ ft. ティー・ペイン / カニエ・ウェスト


 


 


 


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フィラグリン遺伝子変異


「フィラグリン遺伝子変異」の発見で、アトピー治療はどう変わったか?


こんにちは。橋本です。


2006年、「フィラグリン遺伝子」というものに、人によって変異(へんい:違い)がおきていると、皮膚の表皮、その一番外側の角層(かくそう)に異常がおきることが指摘されました。


これは、当時の皮膚科学にとって、大きな意味を持つニュースでした。


アトピー治療に関する研究を進める上でも、今も大きな影響を与えています。


 


遺伝子は、体を作る設計図


遺伝子というのは、設計図のようなものです。


この設計図に書かれた情報にしたがって、日々、体が作られ、皮膚も入れ替わっていくわけです。


新しい表皮細胞が生まれると同時に、古い角質細胞がアカとなってはがれ落ちていく、という感じで。


 


表皮細胞が4つの層をのぼっていく


表皮細胞は、表皮のいちばん底、基底層で生まれます。


そして、皮膚表面に向かって、


皮膚の表皮:4つの層(一番下の層~上の層まで)

基底層(きていそう)

  ↓

有棘層(ゆうきょくそう)

  ↓

顆粒層(かりゅうそう)

  ↓

角層(かくそう:角質層)


と4つの層を通過して、アカとなってはがれ落ちていく。


皮膚の再生サイクル


そのように皮膚の再生サイクルを、絶えず繰り返し動かすための設計図が、暗号のように小さな小さな遺伝子につまっているわけです。


 


フィラグリン、フィラグリン遺伝子ってなに?


表皮細胞が4つの層をのぼっていく途中。


2番目の層、有棘層(ゆうきょくそう)で、表皮細胞の中にプロフィラグリンという大きなタンパク質が生まれます。


「プロフィラグリン」というのは、「フィラグリンになる1つ前の段階」という意味でネーミングされています。


表皮細胞が、表皮の中をさらにのぼり続けていくうちに、1本のプロフィラグリンは、徐々にちぎれます。


その結果、10~12個ほどのフィラメント状(細い糸状)のフィラグリンという分子になります。


この様子、「フィラメント状のものが集合したタンパク質(filament-aggregating protein)」から、「フィラグリン(filaggrin)」と名づけられました。


フィラグリン


そして表皮細胞が角層にたどりつくと、角層細胞となり、角層内をさらに上層へとのぼっていく中で。


この「フィラグリン」というタンパク質は、アミノ酸にまで分解され、天然保湿因子(てんねんほしついんし:略して「NMF」)の生成へとつながり、細胞内に満たされます。


つまり、フィラグリンは、皮膚の保湿機能、バリア機能にかかわる天然保湿因子の供給源になっていると考えらるんですね。


こうして、正常な肌の再生サイクル(角化:かっか)が繰り返されることで、やわらかい肌、皮膚のバリア機能がキープできるわけですが。


この「プロフィラグリンフィラグリン天然保湿因子(NMF)」という一連の流れ。


最初のプロフィラグリンを生みだす設計図となっているのが、「フィラグリン遺伝子(FLG)」となるわけです。


 


フィラグリン遺伝子に変異があると何が問題なの?


では、フィラグリン遺伝子に変異(違い)がおきると、何が困るのか?


それは、フィラグリン遺伝子変異があることによって、プロフィラグリンが不完全な状態で作られたり、あきらかに減少してしまうことに問題があります。


こうなると、正常な肌の再生サイクルがうまく回らなくなり、それが皮膚の保湿力の低下、バリア機能の低下といったことにつながることが考えられるわけです。


バリア機能が低下した皮膚には、外からの刺激、アレルゲンがカンタンに侵入できるようになるので、アトピーの症状もおこしやすくなる。


つまり、フィラグリン遺伝子変異が、アトピー発症の原因のひとつである、と考えられるわけです。


 


日本人のアトピー患者の3割弱にかかわる


先天的遺伝性(うまれつき)でおこる病気に尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)という病気があります。


この皮膚障害は、患者の肌の再生サイクル(角化:かっか)を通常の7~10倍にさせるといわれ、皮膚が激しく乾燥し、肌表面が硬い鱗(うろこ)におおわれたようになります。


2006年、ヨーロッパ人の尋常性魚鱗癬家系において、フィラグリン遺伝子(FLG)に遺伝子変異が発見された 1)


このことが、「フィラグリン遺伝子変異」の研究のスタートになりました。


ここから次々と、フィラグリン遺伝子変異についての解析(かいせき)が進められることとなります。


日本人でも、尋常性魚鱗癬家系、そしてアトピー患者を対象として、フィラグリン遺伝子変異が解析されました。


そうすると、7つの日本人固有のフィラグリン遺伝子変異が見つかり、アトピー患者の27%以上にも、この部分に変異があることがわかったんですね 2, 3, 4, 5)


さらに、現在も新たに1つの遺伝子が日本人固有のフィラグリン遺伝子変異として報告されているので、この先、患者と医師による研究協力が進めば、また新たな報告が続く可能性もあります。


つまり、少なく見積もっても、日本人のアトピー患者の3割弱は、フィラグリン遺伝子変異が、発症にかかわっている可能性が考えられるわけです。


フィラグリン遺伝子変異:日本人のアトピー患者


 


オーダーメイドのような治療


フィラグリン遺伝子変異。


それによるプロフィラグリンの不具合、不足によって、正常に皮膚の再生サイクルが進まなくなる。


さらにそれによって、皮膚のバリア機能が低下し、肌に侵入しやすくなった刺激、アレルゲンがアトピーをおこす。


こういうケースが、日本人アトピー患者の3割弱におきているかもしれない。


そうわかったことで、皮膚のバリア機能をサポートしてあげるような治療の意味。


つまり、保湿剤などによる、ていねいなスキンケアの重要性が、病態生理学(病気のメカニズムを解明する学問)の面からも証明されつつあるわけです。


ただし、保湿剤のみに過剰に期待しすぎては、治療に対する大きな失望をうむことにもつながります。


たとえ、フィラグリン遺伝子変異がアトピーの発症にかかわるとしても、アトピー治療のかじ取りには、三本柱のバランス感覚が重要なのは変わりません。


それでもなお、この研究の活用がさらに期待されるのは、フィラグリン遺伝子の診断による、治療方法の個別化。


たとえば、フィラグリン遺伝子変異がたしかめられれば、それに見合った治療をするとか。


プロフィラグリンの不具合、不足をおぎなうような治療方法が開発されれば、オーダーメイドのような治療ができるわけなんですね。


 


 


 


関連記事:

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参考文献:

1) Smith FJD, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, Sandilands A, Campbell LE, Zhao Y, Liao H, Evans AT, Goudie DR, Lewis-Jones S, Arseculeratne G, Munro CS, Sergeant A, O'Regan G, Bale SJ, Compton JG, DiGiovanna JJ, Presland RB, Fleckman P, McLean WH. Loss-of-function mutations in the gene encoding filaggrin cause ichthyosis vulgaris. Nat Genet, 38: 337-342, 2006.

2) Nomura T, Sandilands A, Akiyama M, Sakai K, Ota M, Sugiura H, Yamamoto K, Sato H, Smith FJD, McLean WHI, Shimizu H. Unique mutations in the filaggrin gene in Japanese patients with ichthyosis vulgaris and atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 119: 434-440, 2007.

3) Nomura T, Akiyama M, Sandilands A, Nemoto-Hasebe I, Sakai K, Nagasaki A, Ota M, Hata H, Evans AT, Palmer CAN, Shimizu H, McLean WHI. Specific filaggrin mutations cause ichthyosis vulgaris and are significantly associated with atopic dermatitis in Japan. J Invest Dermatol 128:1436-1441, 2008.

4) Nomura T, Akiyama M, Sandilands A, Nemoto-Hasebe I, Sakai K, Nagasaki A, Palmer CNA, Smith FJD, McLean WHI, Shimizu H. Prevalent and rare mutations in the gene encoding filaggrin in Japanese patients with ichthyosis vulgaris and atopic dermatitis. J Invest Dermatol 129: 1302-1305, 2009.

5) Nemoto-Hasebe I, Akiyama M, Nomura T, Sandilands A, McLean WHI, Shimizu H. FLG mutation p.Lys4021X in the C-terminal imperfect filaggrin repeat in Japanese atopic eczema patients. Br J Dermatol 161: 1387-1390, 2009.