「ステロイドじゃないから安心」と思っていませんか?
こんにちは。橋本です。
「ステロイドを使うと、後で苦しむことになる」
そんなような話を耳にすると、なるべくなら、うちの子にはステロイドの塗り薬なんて使いたくない、と思うのが親心。
そこで、ステロイドを塗りたくないママは、こう言います。
「薬はステロイドじゃなきゃダメですか?」
お医者さんによっては、診察でこう言われると、少し悩むかもしれません。
で、ママの訴えに負けて、ステロイド外用薬の処方をやめる先生もいます。
患者さんが納得しやすい治療をしよう、ということで。
「お母さん。ではステロイドじゃない塗り薬を出しておきます」
それを聞いて、ほっと安心して、薬をもらって帰る。そんなママも多いようです。
なんで出される薬をステロイド外用薬以外にしただけで、安心するか。
それは、頭の中に
・ ステロイド → 怖い薬
・ステロイドじゃない → 安心
という図式が、強烈に焼きついているから、なのかもしれません。
しかし、結論から言うと「ステロイドではない塗り薬だから安心できる」とは、いいきれません。
ステロイドを含まない塗り薬・・・いわゆる、「非ステロイド外用薬」。
「非ステロイド外用薬」には、欠点が2つあります。
皮膚の炎症をおさえる力がおだやか
1つ目。それは、皮膚の炎症をおさえる力がとても弱いこと。
あきらかにひどいもの。「真っ赤」になっているとか、「湿疹」とか、「強いかゆみ」なんかをおさえる力は、あまりありません。
アトピーの症状が強いのに、非ステロイド外用薬でよくしようというのは、少し無理があるわけです。
「非ステロイド外用薬」の効能には、“消炎鎮痛作用”、“抗炎症作用”などと書いてあり、文字だけを見ると、皮膚の炎症にとても効果がありそうに感じます。
ところが実際は、それほど大きな「炎症をおさえる力」はないのです。
かぶれることがある
そして、非ステロイド外用薬、2つ目の欠点。
こっちのほうがより重要なのですが、その欠点とは、「非ステロイド外用薬は、かぶれることがある」ということです。
しかも、皮膚の状態が悪いと、結構な頻度でかぶれます。
とくに、カサカサしたりジクジクした湿疹は、とくにかぶれやすいと考えられています。
その問題も無視できず、非ステロイド外用薬のひとつだった、「アンダーム」が2010年5月に販売中止された、という事例もあります。
参考資料(外部サイト):
「アンダーム軟膏5%」及び「アンダームクリーム5%」の販売中止のご案内(PDF)
気づかないうちにかぶれで悪化するケース
塗った直後にかぶれるなら、まだわかりやすいです。
しかし、かぶれは気づきやすいものばかりとは限りません。
効いていると思って長期に渡って使用する。ところが、徐々にかぶれ出し、アトピー自体も悪化させてしまう。
そんなパターンもありえます。
これが、ものすごくやっかいなんですよね。
つまり、最初は問題なくても、途中からかぶれはじめている。
こういうパターンだと、「非ステロイド外用薬が湿疹の悪化原因」だと気づきにくいんですね。
これ防ぐには、「非ステロイド外用薬にも、かぶれることはある」ということを、事前に知って使うしかありません。
だから、「ステロイドじゃないから安心」とは、限らないのです。
薬は、正しい使い方が大事
ステロイド外用薬は、毒薬ではありません。
「皮膚の炎症をしずめて湿疹を治す効果」が、いくつもの臨床試験によって、きちんと証明されている薬です。
アトピーの症状をよくする点では、ステロイド外用薬は、非ステロイド外用薬より、はるかにすぐれた薬です。
ステロイドについては、「注意のいる薬だ」ということが、過剰なほどに宣伝されています。
ステロイド外用薬同様、じつは非ステロイド外用薬も、安易に使ってはいけない薬です。
「非ステロイド外用薬は使うな」と、おどしているわけではありませんが。
たとえば、
・ 症状がごく軽い場合
・ アトピーでない急性の皮膚炎の場合
・ どうしても副作用を避けなければならない場合
こういうときに、慎重に使用するかどうかを決めるものなんですね。
すべての薬は、時と場合で使い分ける必要があるわけです。