『トラック野郎 度胸一番星』を観ました。
ある雨の夜、佐渡で待つと言い残して消えた美女の言葉に運命を感じた桃次郎は金造と共に佐渡島へ向かう。
佐渡島に着いた桃次郎は、田舎の分校に荷物を運んだ先で教師の水名子[ミナコ]を見て驚く。水名子は、先の夜に見た美女と瓜二つの姿だったのだ。
一方、川で砂金を採取する水名子の父と知り合った金造はトラック稼業を捨て、砂金採りに精を出す。
砂金が採れない金造を励ましたり、無邪気に生徒と戯れる桃次郎の姿を見ているうちに、水名子の心は徐々に……といったお話。
今作最大のトピックと言えば、シリーズ第5作にしてようやく桃さんの恋愛がついに…!という点ですよね。
とは言え、毎度のパターンは崩さずに、この後に5作も続いてる時点でお察し……とは言え、シリーズ最大級の悲しい別れ方です。“星水名子”とか書いてあげたくなるじゃん…!
どっかの洋画に感化されたようなファンタジー要素を取り入れたり、細かいところでパターンを崩した今作は、シリーズの中でも異色作と言ってもいいかもしれません。
洋画と言えば、クライマックスの大爆走で、警察がパトカーやブルドーザーで道路を封鎖する画は『バニシング・ポイント』ですかね?
金造=ジョナサンの家族が一切登場しないのもシリーズ初。
ジョナサンは家族のために身を粉にして働いている全国のお父さんを投影したようなキャラでしたが、
今作では家族の描写がほぼ皆無のせいか、一家の大黒柱としての側面が薄く見えます。
その裏で今作では、全国のお父さんの過半数がそうであろう、奥さん以外の女性に目が行ってしまう心理を代弁しています。
ジョナサンって、もちろん女性に興味はあるけど、しっかりとした浮気ができない人なんですよね。浮気の願望はあるけど、単に“食べ方”を知らないだけで(笑)。
そんなジョナサンは砂金で一獲千金を夢見て、トラック稼業から足を洗ってトラックを売り払おうとします。『~望郷一番星』でも似たようなシチュエーションがありましたね。
そこでどれだけ突き放しても、仲違いしていても、桃さんはジョナサンがトラックを売る事だけには猛反対します。
これ、個人的に感動するポイントなんですよ。
映画にしろテレビドラマにしろ、昭和のシリーズ物って前作までの設定をコロッと忘れる事が多いけど(笑)、桃さん&ジョナサンの関係性だけは不動、かつ一貫しているのがいいんです。
シリーズで最強のワッパライバルは?と聞かれると、『~望郷一番星』でのカムチャッカの熊=梅宮辰夫さんが挙げられる事が多い気がします。
…待て待て、今作のライバルであるジョーズを演じるのは千葉真一さんだよ? それだけで最強じゃない?と思うんですが、意外にもシリーズ最強の座には就けません。
ジョーズは無線の4チャンネルの使用を腕ずくで禁止したり、多くの仲間とつるんでいたり、原発建設の立ち退きに遭ったという悲しい過去があるものの、桃次郎の指摘通り、根っこにあるのは焼きもちやひがみ。つまり、ずいぶん卑小な人物なんですよ。
終盤では男っぷりを見せてくれるものの、この辺のせいで損をしているんじゃないかな。
とは言え、アクションシーンに限れば最強の座はジョーズに決まりでしょうね。
女性キャストに注目すべきはジョーズの幼馴染み、マヤを演じるのは夏樹陽子さん。
個人的に夏樹さんは『吉宗評判記 暴れん坊将軍』での、おその役を見て以来のファンなので贔屓目に見てしまいます。
そして、当時のリアルトラック野郎の間でも超人気だった(らしい)八代亜紀さんが満を持しての登場ってんだからラッキー&クッキーですよ(笑)。公開時の最新曲『恋歌』のしみじみした曲調が画面とマッチしていて、いい雰囲気です。
余談ながら、夏樹さんと八代さんが今でも交流があるのは本作繋がりだという話を聞くと嬉しくなりますね。
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Blu-ray版の映像特典は予告編のみという最低限仕様。
先にも綴ったけど、夏樹さんや八代さんあたりは本作をよき思い出としていてくれてるっぽいので、当時を振り返るインタビューや座談会でも映像化して欲しいんだよなぁ。
まぁ、主役二人がいない今では、それも叶わないんですが…。
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