観た、『トラック野郎 熱風5000キロ』 | Joon's blog

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『トラック野郎 熱風5000キロ』を観ました。

 

信州に向かった桃次郎は、身に覚えのない当て逃げの罪で警察に連行される。誤解は解けたものの、これをきっかけに桃次郎は被害に遭った女性、夏と知り合う。

そんな折、給料がいいという話に飛び付き、材木の運送会社に勤める事になった金造が事故に遭ってしまう。金造の見舞いに行った桃次郎は、そこで働く夏と再会。夏は運送会社の社長である日疋の娘だったのだ。

夏との飲み比べに負けた桃次郎は、修理に出している一番星号が戻ってくるまでの間、日疋の運送会社で働く事に。

桃次郎はそこで働くノサップとライバルのような関係になるが、ノサップには夏と日疋に隠している過去があり……といったお話。

 

シリーズ第9作。

この辺に来ると作り手側が飽きてきているのか、シリーズ序盤のノリからかけ離れてきています。

コメディ要素もあるにはあるけど、それ以上にシリアス要素が強いんですよね。コメディシーンに下品さがないんですよ。

いい大人が、まるで小学生が読むギャグ漫画のように演じているのをお父さんの脇で見てゲラゲラ笑う子供もいたと思うんですよ。ウンコ&チンチン、おならプ~とかやっときゃ昭和の子供には爆ウケ間違いないでしょ(笑)?

コメディよりも、人間の奥深さを描くドラマに重きを置くようになってしまった嫌らしさは、少なからず感じてしまいます。

 

辛い過去を背負うノサップは、その原因となった日疋を目の仇にします。

そして日疋に対する怒りが爆発した時、ノサップはとんでもない行動に出ます。

このシーンの直前、夏はノサップに向けてライフルを向けますが、まさかトラック野郎シリーズにおいて銃を向けるシーンが登場するだけでも衝撃的なのに、それ以上の事をしようとしますからね。トラック野郎シリーズにおいてはキャラのほとんどが道交法上の罪を犯していますが、それらが可愛いものに思えるくらい。

あんなデカい事件を起こしながらも、何もお咎めもないのがトラック野郎時空です(笑)。夏も、それでいいんかい…。

…でもね、そのくらい大らかでいいんですよ。たかが映画という絵空事なんだし。

その辺を現実変換して、矛盾や不条理をネチネチ糾弾するバカが増えましたが(ツイッターとかヤフコメとか)、こういう虚実の境が付かない連中が娯楽の幅を狭めているんだよな。

 

かつての夫”安曇野”と別れ、今ではスナックのママをしている、はる恵。

“安曇野”が亡くなり、二人の娘である陽子を引き取ろうとするかどうかという、シリーズではよくある定番の話(笑)が今作でも展開されます。

はる恵は初めは嫌がるものの、やはり自分の子供ですから結局は引き取る方向になり、醜態を見せてしまった罪悪感でもあるんでしょうね(ハイヒール越しの陽子のカットが印象的)、陽子に認めてもらうためにも、はる恵は店を辞めます。一から出直す決意の表れです。

ここで思い出すのは、日疋と夏の関係。日疋も再出発するために夏を引き取ったんですよね。

特に親の立場にあるまともな大人は、子供があればこそ外道に身を落とさずに済むはずです。大人が大人として頑張れるのは心の拠り所があるおかげであり、その多くは子供の存在なんでしょうね。

コメディ要素が薄まった代わりにこういったドラマ性が強くなり、深く沁みるエピソードが増えたのもシリーズ後半(or終盤)の特徴です。

本来、トラック野郎シリーズは人情話ですしね。

 

シリーズにおいて、もう一人の主役である一番星号の出番が少ないという意味でもレアな作品です。

かと言って、桃さんがワッパを握らないわけにも行きませんから、短期間ながら運送会社で働く事になります。

色々と不本意が重なったとは言え、まさか桃さんが緑ナンバーのトラックを運転する日が来るとは…!

 

材木を乗せたトラックが走る山道の風景を見ると、『恐怖の報酬』を思い出します。

実はトラック野郎シリーズにはシナリオ止まりの作品が2作ほどあるようで、その1作がニトログリセリンを運ぶってんだから、もうね(笑)。

リメイク版『恐怖の報酬』が公開されるタイミングだったせいでお蔵入りになってしまったようだけど、そこは強気で通して欲しかったな~。痛快度だけなら確実に勝算があっただろうに…!

 

マドンナは小野みゆきさん、ワッパライバルは地井武男さんが演じていますが、二人とも実にワイルド! 山猫や山男というワードがよく似合います。

小野さんは撮影当時19歳って事にも驚けますが、若くシャープな地井さんがカッコ良いんですよ。優しそうなお爺ちゃんという晩年のイメージしか知らない人は、こちらに驚けるんじゃないかな?

 

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Blu-ray版の特典は、相変わらずの予告編のみです。