『トラック野郎 御意見無用』を観ました。
その他の鑑賞記はマメに綴っていたのに、記念すべき第1作たる本作はまだだったんだよね。気にしている人なんか皆無だけど。
全国を股に掛けるトラック野郎の桃次郎=一番星と金造=ジョナサン。
ある日、ドライブインで働く洋子に一目惚れした桃次郎。助手に迎えた千吉を使って思いを伝えようとするが、千吉の勘違いから、女トラック野郎の京子に惚れられてしまう。
様々な出来事を経ながら洋子との仲も親密になってきた桃次郎は告白を決意。しかし洋子は大きな秘密を抱えていて……といったお話。
第10作まで続くシリーズの第1作目。
以降のシリーズ作品では似たようなパターンが踏襲されますが、やっぱり本作が面白かった証左なんでしょうね。笑って泣けて熱くなる、まさに娯楽重視の作品です。
深読みや考察なんか無粋、一般的な感情がある人であれば誰でも直感的に分かるストレートさが最高です。
数ある横筋とも言える小さなエピソードが集まって大きな縦筋になるという作風も、その後のシリーズでも定番となります。このエピソード群が秀逸なのです。
桃さん&ジョナサン以外の、出番の多い登場キャラそれぞれにドラマがあり、嫌いなキャラであっても最終的には好きになれるのがいいんですよ。
『トラック野郎』ってどんな作品なの?と訊かれれば、人情ドラマであると答えるのが正解ですからね。
そんなウザキャラと言えば、ストリップの踊り子に手を出してクビになった千吉。
絵に描いたお調子者で、ゴマを擦って世渡りするようなキャラです。桃さんに社長!とか取り入る姿なんて、確実にイラッとしますからね。
それでも千吉に大きな見せ場というか、しっかり泣けるシーンがあるんだから、荒っぽく見えて実は優しい世界なんですよ。ドライブインに集まったトラック野郎たちが拍手を送るシーンとか、どんだけあったかいんだよ。
個人的に真のウザキャラは松下家に貰われた捨て子の由美。昭和の子役の大根っぷりは目に余るものがありますが(特に東映作品に多い気がする)、この子はその極み。父親に捨てられたショックで感情が欠落してしまったんだと思い込んでもフォローしきれないヒドさは、ある意味においては一見の価値があるかも…。
マドンナはシリーズの定番ですが、もう一人の、桃さんの視野に入らないサブ的なマドンナも登場します。
本作で言えばマドンナは洋子、サブマドンナは京子ですね。
そして、中にはサブマドンナの方がいいじゃん?と思わせるキャラもチラホラいて、本作であれば、個人的には洋子より京子の方がいいと思うんだよなぁ。荒っぽく見えて中身は乙女というギャップも可愛らしいじゃないですか。パンを食いながら、京子が千吉に身の上を話すシーンは特にいい。
サブマドンナは庶民感に溢れる女性が多く、気楽に長く付き合えそうなのは明らかだけど、どうも桃さんは自分とは違う世界の、いわば高嶺の花のような人に憧れる傾向があるようですね。
シリーズが10作も続いてくれたのは、桃さんがその辺に気付けないでくれたおかげでもあるんでしょう(笑)。
余談ながら、女性ドライバーは現在ではようやく珍しくなくなりつつありますが、トラック野郎シリーズには当たり前のようにトラックを運転する女性キャラが登場します。そして、その多くはトラックに乗らざるを得ない事情を抱えています。
当時=1970年代にもいない事はなかったんだろうけど、極めて稀有な存在だったんじゃないかな? コテコテの男社会の中に女性ドライバーの役を設定したのは巧いですね。
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映像特典は予告編のみというショボさ。
まぁ、安定の東映ビデオ品質です。
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