『釈迦』を観ました。
インドのカピラ城に太子が生まれた。生まれた直後に「天上天下、唯我独尊」と喋った子はシッダと名付けられる。
20年後。シッダは美しい妻ヤショダラーを迎え、豪奢な宴が毎日催されるような暮らしを送る。しかし、自分がこうも恵まれた生活を送れるのに対し、身分の低い者たちは今も飢えに苦しみ死んでいる現実を憂うシッダは出家を決意。両親や妻を残し、一人旅立つ。
後日、シッダの帰りを待つヤショダラーの前に、シッダのいとこダイバが現れる。ヤショダラーに思いを寄せていたダイバは、シッダの留守を狙いヤショダラーを犯す。絶望のあまりヤショダラーは自害し、ダイバは追放の身となる。
6年間の修行の後に悟りを開き、シッダは仏陀[ブツダ]となる。そんなシッダに救いを求め、弟子入りを望む者が次々に増えて行く。
これを快く思わないダイバは邪悪の神通力を会得し、シッダに取って代わろうとするが……といったお話。
タイトル通り、仏教をモチーフにした作品。
だからって仏教の教えを説いた布教のための作品ではなく、仏教を始めるに至った人のお話なので、正確には伝記ですね。
「釈迦と仏陀って同じ人なの?」なんて質問から始まるような俺ッチでも、そこそこ理解できた(と思う)上で楽しめました。
宗教の教祖を描いた映画は多々ありますが、映画というエンターテインメントゆえのフィクションや捏造も少なからずあると思います。原作(笑)と違う!と指摘する人も多かったでしょうね。
そもそもインドのお話を日本の映画にするという発想が、なかなかのチャレンジ企画に思えます。この手のデカい宗教は国家間の問題にも発展しかねないのに…。
本作の見どころは、“一大スペクタクル巨編”という宣伝文句が伊達ではないほどのスケールの大きさ。
アメリカでは『十戒』や『ベン・ハー』(『クレオ・パトラ』もそうなんだろうけど未見)のような、呆れるほどに人と金を使った時代劇がありますが、それらと余裕で肩を並べられるくらい。
日本映画でこれほどまでにセットの奥行きが深い作品は見た事がありません。クライマックスに登場する巨大な神像(28メートルもあるとか!)とか、実際に作ってるんだよ?
さすがに超常現象的な描写は特撮を使わざるを得ないものの、総じて合成も綺麗で、素人目にも映像に細工がしてあるのが見て取れるような、“古い作品の特撮あるある”が皆無に等しいんですよ。マットアートはバレちゃいましたけど(笑)。
古い日本映画=庶民を描いた地味なドラマというイメージが強いけど、ここまで大規模な作品があったのかと目からウロコが落ちる作品でした。日本映画のどこにそんな金があるんだ?と感じたのは本作と『CASHERN』くらいです。
美術関連のみならず、キャストに関してもお金が掛かっていそうな印象です。
俺ッチからすればふた昔も前の大スターなんでしょうが、今でもその名が通るくらいの面々が多々登場しているんだから、大スターの共演でもあったんでしょうね。中村玉緒さんが若い、可愛い!
主人公のシッダを演じている本郷功次郎さんは、古めの作品を観る際に目にする機会が多いですが、あんまり話題に上がる事がないんだよね……何でだろう? 確実に昭和イケメンなんだけどなぁ。
そんな本郷さん演じるシッダと言えば、悟りを開いた後は顔は見せず(ロングショットでのシルエットばかりになる)、ほぼほぼ声だけの出演になります。
よっぽど貴い立場になられたお方のご尊顔は、たとえ映画であっても容易く拝顔はできないという事でしょうか(笑)?
キャストと言えば、エキストラの数も尋常ではありません。
プレスシート(=宣伝チラシ)によれば、スタッフは30800人、エキストラは55000人ってんだから、もはや目眩がしますね(笑)。
序盤での、城下町の住民には驚くべきところがあって、住民は飢えに苦しんでいるという設定上、これを演じているエキストラの体は過剰に痩せてガリッガリなのが秀逸です。
奴隷の割に筋肉質だったりとか(笑)、アメリカ映画ではここまでのこだわりは見受けられませんしね。
特に主人公の生き様に感化され、実生活の参考や糧にできるのも映画としての機能ですが、本作でそれをやる人はいない、正確にはできないでしょう(笑)。
なので、何の深読みもせず、画面の壮大さに目を奪われるだけの作品と割り切って観るのも一つの楽しみだと思います。その程度の一見の価値は確実にあります。
…さて、予備知識も身に付いた事だし、黄金聖闘士編の処女宮のあたりでも読み返すかな…。
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Blu-ray版の映像特典は予告編のみ。
あと、無意味に『泣き笑い地獄極楽』という、本作には1ミリも関連のない作品のDVDがオマケに付いてきます。