The Sea Hawk

ジェフリーが率いるアルバトロス号は、駐イギリス・スペイン大使が乗った船を襲撃した。
その後、パナマからスペインへ運び出される財宝を狙ったが、罠に嵌り捕らえられた。ガレー船の船底でオールを漕がされた。
その間、イギリスとスペインの関係は悪化し、スペイン大使は女王に対して最後通告を行って帰途についた。
ジェフリーたちはガレー船を乗っ取り、さらにスペイン大使が帰国するための船を乗っ取った。そこでスペインのスパイとなっているウルフィンガム卿への秘密書類を取得した。
ジェフリーは、その秘密書類を持って宮殿に向った。


製作:1940年、監督:マイケル・カーティス


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ジェフリー・ソープ(エロール・フリン) - アルバトロス号の船長
 エリザベス1世(フローラ・ロブソン)
 ウルフィンガム卿(ヘンリー・ダニエル)
 ドン・ホセ・アルヴァレズ(クロード・レインズ) - 駐イギリス・スペイン大使
 マリア・アルヴァレズ(ブレンダ・マーシャル) - アルヴァレズの姪、母親はイギリス人
 ロペス(ギルバート・ローランド) - スペイン船の船長

シー・ホークとは、イギリスの海賊の集団。ジェフリー/アルバトロス号も一員。

マリア役にはオリヴィア・デ・ハヴィランドが予定されていたらしい。しかしオリヴィアが辞退したとのこと。エロールとオリヴィアは、8作も共演しているゴールデンコンビである。

エロール・フリン、オリヴィア・デ・ハヴィランドの共演映画
 


■ あらすじ

◆ アルヴァレズ大使

イギリスでは女王を中心に「強国スペインにどのように対処するのか?」という会議が続いていた。一つは融和・妥協する、もう一つは対決する。

どちらかといえば妥協派が優勢ではあったが、いつも堂々巡りで結論が出なかった。妥協派の筆頭はウルフィンガム卿であった。

一方スペインでは、海賊を野放しにしているイギリスに対して、批判が相次いでおり、イギリスを抑えにかかるように策が練られていた。

このような情勢の中で、ドン・ホセ・アルヴァレズは大使として、スペイン船に乗船してイギリスに向かった。主なる任務はイギリス女王を丸め込んで、抑え込むことである。注、この船の名前は明示されない。

アルヴァレズの姪のマリアも同行していた。マリアをイギリス宮廷の女官にするためである。アルヴァレズは、マリアを女官にすることによって、自分の出世も期待していた。

◆ アルバトロス号

アルヴァレズが乗ったスペイン船が次第にイギリスへ近づいて行った。船長のロペスは、見張りを増やすように指示をだした。

アルバトロス号が接近してきた。そしてマストにドクロの海賊旗を掲げた。アルヴァレズは「大使が乗った船を襲うわけはない」と言った。

しかしアルバトロス号からは砲撃が開始された。スペイン船も反撃した。両者の距離は詰まっていき、スペイン船には多数の砲弾が撃ち込まれた。

距離が詰まり銃撃も開始された。アルバトロス号から鉤付きロープが投げられてスペイン船の舷に引っかかる。スペイン船では、そのロープを叩き切ろうとする。しかし次第に引っ張られる。スペイン船のオールが折れていく。

アルバトロス号の帆を張る横棒に吊り下げられた多数のロープを利用してブランコのようにスペイン船に突入する。

剣や拳銃を使って白兵戦・肉弾戦が展開された。次第にアルバトロス号有利の状況になっていく。

スペイン船のラッパ吹きが剣を突き付けられて、戦闘停止のラッパが鳴り響いた。スペイン船は制圧された。

◆ 戦闘決着後

ジェフリーは、次々と指示を出していった。ケガ人の収容、スペイン船の船員を捕らえる、スペイン船の奴隷を解放する、スペイン船の武器・弾薬・宝物の接収。これらはアルバトロス号に積み替えられた。

アルヴァレズとマリアもアルバトロス号に移動させられた。ロペスは移動を拒否したが、最後にアルバトロス号に飛び乗った。両船の間のロープが切断された。

この後、スペイン船は海に沈んでいく。映像としては見栄えがするが、(金属部品はあっても)基本的に木造船なので、このような形で沈んでいくとは思えないが。

ジェフリーはイギリスに到着すれば、スペイン船の船員と奴隷を解放することを約束した。また奴隷は希望すればアルバトロス号の船員になることができる。

アルヴァレズとマリアは、海賊船でできうる範囲ではあるが丁重に扱われた。

アルバトロス号は次第にイギリスに接近していった。そしてジェフリーはマリアに興味を持ったようである。

ついにイギリスが見えてきた。乗組員は歓声を上げた。

補足。他の海賊映画に比較し、戦闘決着後の様子は、かなりリアルに描かれており、参考までに紹介した。

◆ アルヴァレズ大使の着任

アルヴァレズとマリアは宮殿に参上し、大使着任の挨拶をした。そしてアルバトロス号の襲撃の件を訴えた。

女王は今後は同様の事件を発生させないと約束したが、奪った財宝の返還は拒否した。

この場には、シー・ホークの船長たちも呼び出されていた。しかしジェフリーだけは、連れてきたサルが行方不明になったせいで遅れてきた。注、サルのほうが先に登場した。このサルはアルバトロス号にも乗っていた。

女王は船長たちに、このような事件は起こさないようにと指示したが、それ以上の罰は与えなかった。

◆ ジェフリーと女王

その後ジェフリーは、女王に居残りさせられて二人で話した。

女王はジェフリーに今回の件を詰問したが、ジェフリーは「イギリス人の奴隷を救うためであった」と弁明。

ジェフリーは、スペイン船から奪った宝石を女王にプレゼントした。またサルが愛嬌を振りまいたこともあって、女王の機嫌は直った

ジェフリーは、さらにパナマから運び出される財宝を奪う許可を求める。海上ではスペインの軍艦が警護するので不可能だが、パナマの港に運ばれる前に陸上で奪えば可能であると説明した。

女王は「許可はできないが、勝手にやるならば、それもよし」とずるい回答をした。

◆ ウルフィンガムとアルヴァレズ

ジェフリーは「ナイルに向けて出航する」とウルフィンガムに申請を出した。注、ウルフィンガムは大法官。

実はウルフィンガムはスペインのスパイであって、アルヴァレズと通じている。ジェフリーの意図を疑った二人は探りをいれる。

ジェフリーは、船の修理をし弾薬や食料を積み込んだ。また乗組員も新規に募集した。ウルフィンガムとアルヴァレズは、乗組員募集の場にスパイを送り込んで、行き先を探ろうとしたが、ジェフリーは行き先を明らかにしなった。

ジェフリーは海図業者に出向いて海図の作成を依頼した。ただし海図には地名を入れないという指定である。ただし海図業者は「アルバトロス」と船名をいれ、さらのオリオン座のマークを入れた。オリオン座は目的地の緯度を表現している。

ウルフィンガムとアルヴァレズは、この海図業者を訪れて「スペインの海図と比べてみたい」と申し出た。ちょうどその場にはジェフリーが発注したアルバトロス号の海図があり、二人はその海図を眺めた。

さらに二人は別の人物を訪ねて行って、目的地はパナマであることを把握した。

◆ マリアがジェフリーに知らせようとする

アルヴァレズは、この情報を本国に知らせて、アルバトロス号を罠に掛ける手筈をととのえた。

アルヴァレズとマリアが一緒にいるところに、罠の設定の完了の知らせが入った。マリアは、これを認識し馬車でドーヴァーに急いだ。注、当時は電信などはないので、どのようにスペイン本国と連絡したのかは疑問だが。

一方ジェフリーは出航までに少し間があるので、ロンドンに戻ってマリアに会うつもりであった。しかし女王からの使いが来て「すぐに出航するように」と指示を伝達した。注、出航の指示は、女王がジェフリーの航海の意図についてせっつかれたのを嫌がったからで、罠とは無関係。

アルバトロス号は出航し、マリアはわずかのタイミング差でジェフリーに罠の存在を知らせることができなかった。

◆ パナマ

パナマでは、先にスペイン軍が到着し待ち構えている。

ジェフリーたちは財宝を運び出す途中の道でロペスが率いる隊列を待ち構えて襲った。彼らを制圧して拳銃で脅して、何もなかったかのように偽装して隊列を進めていった。

しかしスペイン軍の大軍に包囲・攻撃された。ジェフリーたちは沼地に逃げ込んだ。「沼地に入れば生きて帰れない」ということで、敵の追跡は中断された。

酷暑の中を歩いた。死者・脱落者が相次いだ。沼地を抜け出したが、次はジャングル。道なき道を進む。やっと海が見えた。

ボートを見つけてアルバトロス号に向かった。「はぐれた仲間は戻っているだろうか?」。

アルバトロス号を見つけた。しかし人影はない。船に上った。それでも人影はない。

だがしかし突然、ロペスが率いる部隊が出現し取り囲まれた。「抵抗すれば撃つ」といわれ、全員が捕らわれた。

裁判が行われジェフリーたちは終身刑となった。彼らは奴隷としてガレー船を漕ぐことになった。

◆ 船から脱出

ガレー船の船底に縛り付けられて、鞭が撃たれて、ジェフリーたちはオールを漕いだ。

ジェフリーの隣にいた仲間が死亡した。代わりが連れてこられた。

その男は「この船に秘密書類がある。それを奪おうとしたが、その前に捕らえられた」とジェフリーに伝えた。その書類はウルフィンガムに宛てたものである。

またシー・ホークの船長たちが捕らえられて、乗組員たちが手配されているらしい。

港が近づいた。ジェフリーの合図でオール漕ぎをサボった。見張りの鞭が飛ぶ。見張りを倒してナイフを奪い取った。見張りの遺体を彼らの間に隠した。再びオールを漕ぎ始めた。

港に入り、多くの船員は上陸した。ジェフリーたちは、自らの鎖を解いた。木の柱にナイフを突き立てて鎖を外す。金属の工具を手に入れて、鎖を体から外していく。最初は遅々として進まないが、次第にスピードが上がり、ついに全員の鎖を解いた。

甲板にでてスキを窺って見張りを一人ずつ倒して船を制圧した。武器を奪った。

みんなで隣に停泊している船に乗り移った。中で「無敵艦隊がイギリスを奇襲する」という話をしていた。こちらも制圧した。これはアルヴァレズが帰任するのに迎えに行く船である。

ジェフリーは、ウルフィンガムに宛てた秘密書類を手に入れた。注、ここは上述の「この船に秘密書類がある」という話とは矛盾する。秘密書類は新しく乗っ取った隣の船にある。アルヴァレズを迎えに行く船なので、こちらにあるのが正しいと思われる。

みんなでオールを漕いで、帆を上げて出発した。今度は奴隷としてではなく、乗組員としてオールを漕いだ。注、乗っ取った船にいた奴隷はどうなったのか?

◆ アルヴァレズ大使帰任

アルヴァレズは女王に対して強硬な要求を突き付けて「要求が容れられなければイギリスを攻撃する」と脅した。

女王は(表面的には)要求を拒否する。しかしアルヴァレズが立ち去った後、シー・ホークの解散と逮捕を命名する。

アルヴァレズは、帰任するためにドーヴァーに向かった。マリアも一緒ではあるが、マリアはイギリスに残るつもりである。

アルヴァレズは帰任の船に乗るためにボートに乗った。マリアは岸壁から手を振る。注、この船はジェフリーたちが乗っ取って来たもの。

◆ 宮殿での戦い

マリアは帰りの馬車に乗った。中に誰かがいた。ジェフリー。ジェフリーはマリアが驚いて声を出さないようにマリアの口を押さえた。

ジェフリーは今までの状況を説明し、マリアは厳重な警戒が敷かれていることを知らせた。マリアは「私の部屋に入って、それから女王の部屋に行けばよい」と教えた。

検問があり、マリアは身分証を見せたがジェフリーが疑われた。ジェフリーは「船で戻ったばかりで証明書はない。ウルフィンガムへの書類を持っている」と切り抜けた。注、書類を持っているのは事実。

しかし御者はジェフリーに気が付いた。「宮殿に入ったら、すぐに衛兵所へ」と言っている。ジェフリーを捕らえるつもり。

ジェフリーは宮殿の門の手前で飛び下りた。馬車を検問した衛兵は、一人なのを不思議がったが、マリアは「一体、何のこと?無礼な!」ととぼけた。

ジェフリーはマリアの部屋へ行きマリアの侍女に事情を話した。注、マリアの部屋へは直接入れる構造になっているらしい。

ジェフリーは宮殿に侵入し、衛兵と闘いながら、女王のところに行こうとする。

ある部屋に入るとウルフィンガムがいた。ウルフィンガムと戦ってやっつけ、さらに現れた衛兵と戦っていると、マリアに事情を聞いた女王が現れた。

ジェフリーはウルフィンガムへの手紙を渡し、ウルフィンガムの裏切りを明かした。

◆ 艦隊の創設

ジェフリーは女王からナイトに任命され、またシー・ホークの船長たちは解放された。

女王はシー・ホークを中心にして海軍を作り、スペインに対抗することを宣言した。
 


■ 補足

◆ 地中海の船

地中海地方で古代から近代まで用いられた船は、帆は備えているが、主推進力をオールに依存するものである。船の大きさや形でいろいろな名称がある(らしい)。本稿ではガレー船で統一する。

オールは船底にいる漕ぎ手が漕ぐ。この漕ぎ手は奴隷であって、鎖で船底につながれており、死ぬまでこの状態である。もし体が悪くなったりして役に立たなくなると殺される。注、古代においては必ずしも奴隷ではなかったらしい。

漕ぎ手=奴隷の調達先は、海戦で敗北した相手の船員などである。

本作に登場するスペイン船もガレー船であり、また無敵艦隊もガレー船である。本作のスペイン船は大西洋を航行している。

大型の船になってくると、帆船に比して運動性などで不利になってくる。また奴隷の食料も必要になる。

本作では、アルバトロス号にスペイン大使が乗ったスペイン船が襲撃されるが、ジェフリーは女王に「イギリス人の奴隷を解放するためであった」と説明する。

本作ではガレー船のオールがリアルに表現されている。帆船は本作製作当時でも現在ても存在するが、ガレー船は存在しない。どのようにして、ガレー船の映像を作ったのかはよく分からないが、CGの時代ではないので、後で合成したのでは?

他の海賊映画でも「ガレー船」が出てくるが、本作のようにオールまで表現したものは見かけない。最初の画像を参照。

◆ 無敵艦隊

本作においては「無敵艦隊ができれば、イギリスは敵わない」というストーリーになっている。

無敵艦隊は、1588年7月~8月にイギリス方面へ侵攻し、イギリス海軍(実態はドレークなど海賊の連合軍)に敗北した。ただし、海戦としては無敵艦隊の敗北ではあったが、当時のスペイン>イギリスの力関係が変化するのは、まだ後のことである。

注、ドレークは「海賊王」と呼ばれている。そして世界を二番目に一周した。

◆ ジェフリーとマリア

ジェフリーはさっそくマリアに興味をもったようである。部下にきびきびと指示を出してはいるが、マリアには話しかけにくそうである。部下はそれをみて、陰でジェフリーの噂をしている。

マリアが船室から外を見ていると、ジェフリーはその上の甲板から物を落としてマリアの注意を引き、やっとマリアに話しかけることができた。

しかしマリアは、(自分の乗った船が襲われた立場なので)「泥棒とは話をしない」と拒否する。

ジェフリーは、この時はわりとはっきりと「あなたが持っていた宝石は、アステカ人のもの。泥棒は我々だけではない」と反論する。

その後マリアの宝石は、そっとマリアの部屋に戻された。

ジェフリーが女王に呼び出された後。マリアは宮殿のイギリス庭園でバラの花を見ている。そこにジェフリーが現れて、いろいろと話をする。

このような経緯で二人は惹かれあうようになる。
 


■ 出演作

◆ クロード・レインズ
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1940)シー・ホーク/The Sea Hawk
(1942)カサブランカ/Casablanca
(1942)情熱の航路/Now, Voyager(1942)
(1946)シーザーとクレオパトラ/Caesar and Cleopatra
(1946)汚名/Notorious
(1964)偉大な生涯の物語/The Greatest Story Ever Told
(1942)夜霧の港/Moontide
(1946)地獄から来た天使/肩の上の天使/Angel on My Shoulder
(1956)陰謀のリスボン/Lisbon
(1950)ゼロへの逃避行/Where Danger Lives
(1941)幽霊ボクサー/Here Comes Mr. Jordan

エロール・フリン
(1950)海賊ブラッドの逆襲/FORTUNES OF CAPTAIN BLOOD
(1936)進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1938)結婚スクラム/Four's a Crowd
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1940)シー・ホーク/The Sea Hawk
(1946)愛をもう一度/Never say good bye
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1947)恐怖の叫び/Cry Wolf
(1947)逃げちゃ嫌よ:二人の作曲家と二人の女性/Escape Me Never