大学生の青山霜介(横浜流星)は,友人の古前巧(細田佳央太)に誘われて,水墨画展の設営アルバイトをする。

 

 

 そこで霜介は千瑛と署名された椿の水墨画に心を奪われる。

 

 一通り設営を終え,休憩していたところ篠田湖山(三浦友和)にアルバイト用ではなく来賓用のステーキ弁当を勧められ,美味しく頂く。

 するとやはり設営をしていた西濱(江口洋介)が,実演の設営スタッフが遅れており,開始時間を遅らせるしかないと言いに来る。

 遅れていたのは古前だったが,結局,ステーキ弁当の代償として霜介が手伝うことになる。

 

 湖山は大きな紙に見事な竜を書き上げるが,霜介はその迫力に圧倒される。

 

 

 すると湖山は霜介に「君,僕の弟子にならない?」と軽い口調で声をかける。

 

 

 西濱から弟子は家族と同様だと言われた霜介は,ためらいを見せる。

 すると湖山は,弟子が大げさだと思うのなら,湖山水墨画教室の生徒ではどうだいとこれまた軽く言う。

 

 水墨画に興味を持った霜介は,それならお願いしますと言って水墨画を習うことにし,湖山の自宅に通うことになる。

 湖山は基本画題の手本を描いてみせ,霜介に同じように描くようにと言う。

 

 霜介が描いたものは,どう見ても未熟なものだったが,湖山はそれに賛を与える。

 

 

 その後,霜介はひとりで同じ画を描き続けるが,使い終わった墨を捨てる場所が分からず,家の中を歩き回る。

 

 するとある部屋の中で,若い女性が水墨画を描いているのに出くわす。

 

 

 彼女が千瑛(清原果耶)であり,湖山の孫だった。

 

 千瑛は霜介が,湖山の生徒になったと聞き,先生は教えるのは絶望的に下手だからなぁと言う。

 

 霜介は大学で古前と川岸(河合優実)に湖山の生徒になったということと,孫娘の千瑛に会ったことを話す。

 すると,ふたりは霜介が千瑛に会ったことをむちゃくちゃに羨ましがる。

 

 

 霜介は知らなかったが,千瑛は美しすぎる水墨画家として話題の有名人だったのだ。

 

 湖山の家で霜介は墨の擦り方から習い,何度も繰り返し墨を擦り続ける。

 また,千瑛は霜介に描き方を教えてくれるようにもなった。

 

 

 どうしても千瑛に会いたい古前と川岸は大学に水墨画サークルを立ち上げ,霜介を通じて千瑛に講師を頼む。

 湖山も賛成し,千瑛は霜介の大学のサークルで水墨画を教える。

 

 

 彼女の知名度のせいで,サークルは大盛況だった。

 千瑛は気さくに打ち上げの飲み会にも付き合ったが,そこで霜介は間違えて飲めない酒を飲んでしまう。

 一瞬で酔い潰れた霜介を古前と川岸は,千瑛とともにアパートまで送る。

 すると霜介の部屋の中は,彼が練習した水墨画で埋め尽くされており,千瑛は霜介が本気で水墨画に打ち込んでいることを知る。

 

 

 それと同時に古前から,霜介には家族と何か問題があることを知らされる。

 

 千瑛は水墨画の「四季賞」を目指して努力していたが,思うように描けずスランプに陥っていた。

 霜介は千瑛の椿の画に感動したことを伝えるが,彼女はそのときのようには描けなくなったと言う。

 

 湖山は,霜介に四季賞のような本格的なものではないという展示会への出品を勧め,霜介は菊の水墨画を出す。

 会場で藤堂翠山(富田靖子)から,未熟だけど気になるところもあると言われるが,彼女は四季賞の審査委員長を務める水墨画界の大家だった。

 

 

 その会場ではメインイベントとして湖山による揮毫が行われることになっており,海外のVIPも招待されていたが,時間になっても湖山は現れなかった。

 関係者は千瑛に代役を打診するが,藤堂から無理だと言われる。

 そのとき,西濱が現れ見事な水墨画を描いてみせる。

 彼は霜介の前では,湖山宅の食事係や雑用だけをしていたが,湖峰の号を持つ有名な水墨画家だった。

 

 

 西濱から湖山が倒れたことを知らされた霜介と千瑛は病院へ向かう。

 

 霜介は病院の待合室で,初めて自分の家族の話を千瑛に打ち明ける。

 霜介は大学に進学するときに,些細なことで両親とケンカをして,そのまま家を出てしまった。

 高校生の妹は「行ってらっしゃい」と言ってくれたが,返事もしなかった。

 家族のことを忘れて大学生活を楽しんでいた霜介は,ある夜,友人たちと遊んでいるときに妹から電話がかかってきたことに気づくが,大した用ではないと思って無視をする。

 翌朝,ニュースで実家付近に大規模な水害があったことを知った霜介が留守番電話を再生すると,妹が助けを求めていた。

 

 両親と妹は,結局,水害で命を落とし,それ以降,霜介は無気力な毎日を送ってきた。

 

 霜介が千瑛の椿の画に心を震わせたのは,妹が生まれた記念に植えた庭の椿を思い出したからだった。

 

 病室の湖山は,霜介と千瑛には何事もなかったかのように振る舞うが,右手が自由に動かなくなっていた。

 しかし,彼は霜介に手伝わせて,何事もなかったかのように左手で描き続ける。

 

 その様子を見た霜介は,家族の命日にあわせて,事故以来初めて実家のあった場所に行く。

 千瑛は,それに同行するが,庭だったところには倒れても枯れていない椿の木があり,最近まで咲いていた花が落ちていた。

 

 霜介と千瑛は,気持ちを新たにして水墨画に取り組み,千瑛は四季賞を霜介は新人賞を取る。

 

 

 霜介の画題は椿だった。

 

 霜介は大学の学園祭で,水墨画の揮毫イベントをする。

 

 

 

 地味で真面目なテーマに正面から取り組んだ映画だが,感動だけではなく,ユーモアもあって楽しめる。

 水墨画の技術的な解説も自然に織り込まれていて,教養的な側面もある。

 

 清原果耶は,美しさとかわいさ,真剣さとユーモアという両面になるような魅力を兼ね備えているし,演技でそれを表現することができるところがすごい。

 

 横浜流星と清原果耶の共演は,愛唄以来2度目になるけど,菅田将暉と小松菜奈みたいになるのだろうか。