佐賀県の架空の町,塩振町に住む羽猫(はねこ)家の長男・山吹(やまぶき・堀口壱吹)は絵が上手いが,そのほかはぱっとしない小学生である。
地元で工務店を仕切ってきた祖父の正吾(柄本明)は,先代が遺した山に遊園地を作ると言いだし,山吹にそのマスコットキャラクターを描かせる。
正吾が非現実的な事業に手を出すのはこれが初めてではなく,これまでも様々な失敗を繰り返して先代までの遺産を食い潰してきた。
母・雪乃(安藤裕子)は幼いときに亡くなった山吹の弟・青磁が今でも生きているかのように振るまい,山吹の姉・紅(べに,藤中璃子)は,そんな母に冷たく当たる。
父・淳吾(安田顕)は,家庭に嫌気がさしたのかスナックのママを愛人にしてあまり家には寄りつかない。
祖母・澄江(余貴美子)は,商店街で雑貨店のような骨董店のような店を営み,少し怪しげな商売をしているが,その稼ぎで羽猫家の経済を支えている。
山吹は優しい性格で,こんな家族の仲を無難に取り持っている。
山吹は友達とよくクラスメートの女の子・佐藤頼の家に遊びに行っていた。
山吹は頼の飼い犬と遊ぶのが好きだったが,友だちは犬が怖く,頼に会うのが目的だったようだ。
だが頼は引っ越すことになり,彼女は山吹に手作りの犬のマスコットをプレゼントする。
その後,中学生になった山吹は少し年上の遠山かな子と知り合い,初恋を経験する。
山吹は母の幻想に話を合わせ,死んだ青磁が生きているかのように手紙を母宛に出していた。
母はそれを読んで一時的に笑顔を取り戻していたが,紅は苛立つ。
山吹は自分の心の支えとして,かつて頼が飼っていたのと同じような犬をなでることを想像して癒やされていた。
1993年,高校生になった山吹(高杉真宙)は,相変わらず青磁のふりをして母宛に手紙を書いていた。
紅(向里祐香)は,高校進学のときに家出同然で上京して家族との距離を置いていたが,たまに帰省すると「嘘で母を甘やかすな」と山吹を責めた。
父の浮気は続き,祖父は遊園地計画が破綻し大失敗した挙げ句に亡くなり,家計を圧迫していたが,祖母の店が細々と家計を支えていた。
山吹はかな子(深川麻衣)と付き合っていたが,長続きはしなかった。
デザイン専門学校へ進学した山吹はアルバイト先のビヤガーデンで幼馴染の佐藤頼(伊藤万理華)と再会する。
山吹がまだ自分があげた犬のマスコットを持っているのを知った頼は,山吹と付き合うようになる。
頼は身寄りのない子供を預かる施設でも働いていて,山吹はそこを手伝ったりするようになる。
そんな時,山吹はかな子と再会する。
かな子には恋人がいたが,彼と上手くいかなくなると何かにつけて優しい山吹を頼ってきた。
その様子を見た頼は嫉妬で寂しくなる。
2008年,山吹は社会人になり,頼との結婚も考え始める。
山吹は紅が働く写真館に行き,頼との婚約を報告する。
そして青磁の死の真相を打ち明ける。
幼かった青磁は山吹のことが大好きでいつも後ろをついて回っていた。
山吹もそんな青磁のことを可愛いと思ってはいたが,ときには煩わしくも感じていた。
ある日,山吹が青磁をおいてひとりで先に行ってしまったとき,自分の後をついてきていると思っていた弟は用水路に落ちて亡くなってしまった。
それ以降,山吹は青磁を殺したのは自分だと思い,弟の死で壊れてしまいそうな家族の仲を必死に取り持つようになった。
紅は山吹のせいじゃないと慰める。
祖母・澄江が病気で倒れ入院し亡くなる。
その葬儀の日,お腹が大きくなったかな子が,山吹に泊めて欲しいと言って訪ねてくる。
母の恋人との子供を妊娠して逃げているのだという。
山吹はそれを断るが,頼はそんなかな子に優しく接する。
子供ができない頼は妊娠しているかな子を放って置けなかった。
その後,山吹は仕事をクビになるが,頼はかつて施設で山吹が子供達にお話を聞かせたこと思い出し,童話を書いてはどうかと勧める。
山吹の童話はその後出版される。
30年後の羽猫家。
母は元々山吹の嘘には気づいていたが,ようやく青磁の死を受け入れ家族の記憶を共有できるようになる。
紅は結婚して子を連れ時折帰省するようになる。
父は工務店を山吹に譲る。
家族に変化のない日常が続くが,山吹と頼は架空の犬の記憶を懐かしむ。
高杉真宙の映画のように見えるが,伊藤万理華と深川麻衣という乃木坂出身女優の対決として観ると面白い。
伊藤万里華が控えめな役で,深川麻衣がちょっと自己中心的な役というのは,それぞれのキャラとは逆の役柄のような気がするが,どちらも演技が上手く自然に感情移入ができる。
長期間にわたる家族の物語が丁寧に描かれるが,ただそれだけではなく,嘘で家族の平穏を保つ羽猫家の山吹が,架空の犬を心の支えにするという設定がなかなか良い。
嘘と架空は似て異なるのだろうか。




































































































































