園田梨枝(蓮佛美沙子)は,父康夫(升毅)の反対を押し切り,高校を3年で中退して,女優になるため地元熊本の田舎町から上京した。

 

 

 最初のオーディションで,偉そうな演出家に10秒以内で泣くように求められたが涙は出なかった。

 

 それでも何とか女優になり地道に活動していたが,不倫スキャンダルで干されてしまった。

 スキャンダルと言っても実際には何もしていなかったが,信じてくれる人もおらず,そう思われるような行動を取ったこと自体が問題だと言われると反論もできなかった。

 

 そんなとき事務所の社長が,密着ドキュメンタリーの仕事を取ってくる。

 

 

 梨枝は,父と喧嘩別れし10年も帰っていない地元で撮影をすることは気が進まなかったが,社長がせっかく取ってきた仕事でもあるし,家族に気づかれないうちにこっそりと撮影して帰ってしまおうと思っていた。

 

 父が入院していることは聞いていたが,会いに行くつもりもなかった。

 

 ある程度はちゃんとしたドキュメンタリーだと思っていたが,瀬野咲(伊藤万理華)という見るからにペーペーのスタッフがひとりだけで来て,ホテルも用意されておらず梨枝の実家に宿泊する予定だと聞き,梨枝は腹を立てる。

 

 

 梨枝はホテルを取るよう咲に要求するが,そもそもホテルらしいホテルもなく,安いという理由で咲が予約したのはラブホテルだった。

 

 

 梨枝は自分で探すと言い,ひとりで歩き出すがタクシーどころか人通りもない。

 ようやく通りかかったタクシーを見つけ,必死の思いで止めると,高校の同級生サルタクこと猿渡拓郎(上川周作)が運転手だった。

 

 

 梨枝が充電の切れかかった携帯で事務所に文句を言おうと悪戦苦闘している内に到着したのは何と実家だった。

 

 

 梨枝が文句を言おうとしている内に,サルタクは行ってしまう。

 梨枝は仕方なく呼び鈴を押すが,誰もいないようだった。

 念のためと思って,昔から鍵を隠してある植木鉢の下を探ると相変わらずそこに鍵があり,梨枝は実家にこっそりと入る。

 しばらく家の中を探るが,あまりにも何も変わっていないことにおどろく。

 

 

 そうしている内に,弟の勇治(吉田仁人)が帰ってくる。

 

 

 10年前は幼かった勇治が立派な高校生になっていることに驚くが,おとなしい性格は変わっておらず,帰宅していることを姉の飯塚真希(三倉茉奈)には黙っておいて欲しいという頼みを聞いてくれる。

 

 翌日から始まった撮影は,行ったこともない駄菓子屋で思い出を語ったり,赤の他人のお墓の前でしんみりする(梨枝は今でも涙を流すことはできない)といったやらせばかりだったが,梨枝が抗議すると,咲はドキュメンタリーにも演出は必要だという謎理論で押し切ろうとする。

 

 咲は同期入社の男がすでにドラマを任されてるのに,未だにバラエティ班の下っ端であり,上司の「この撮影が成功すればドラマ班への移動も考えてやる」という口約束にすがっていた。

 そのため,なんとか結果を出そうと焦っていたのだ。

 

 梨枝は咲のいい加減な演出プランと,なぜかサルタクが撮影の手伝いとして付いて回っていることにいらだっていた。

 

 

 その後も何の思い入れもない古い劇場で撮影をしたり,咲が持参したドローンが墜落したりと,空回りとしか言いようのない撮影が続いた上,咲が足を捻挫してしまう。

 

 

 その為,梨枝は父が入院している病院へ行くハメになり,そこで会いたくなかった姉の真希と出くわし,大げんかになってしまう。

 

 

 真希は,早くに亡くなった母に代わって梨枝や勇治の面倒を見てきており,梨枝の反抗期の対象は父と姉だった。

 

 梨枝が女優という無謀に見える夢を持ったのには亡くなった母が関係していた。

 元々,梨枝は人目につくことが苦手だったが,小学生の時,成り行きで学芸会の主役をやることになってしまった。

 しかし,思い切ってやってみたところ,意外に好評で母は大喜びしてくれた。

 梨枝は母に,いつも難しい顔をしているお父さんを笑顔にするために女優になると言い,母もそれを応援してくれたのだった。

 

 梨枝のその想いは父や姉に伝わることはなく,むしろ関係をこじらせてしまった。

 

 そして姉との関係は,梨枝が姉の結婚式に出席しなかったことで完全に途切れていた。

 それでも真希は父の病状だけは梨枝に伝えていたが,梨枝は見舞に行こうともしなかった。

 

 咲が上司に梨枝と父親の関係が悪く,その父親が入院中だという報告をすると,上司からはそれを撮影しろと命じられるが,梨枝からは強く拒絶される。

 

 

 咲はさすがに気が進まなかったが,結局,康夫の病室に隠しカメラを設置してしまう。

 

 一方,梨枝は実家で卒業アルバムを見てドキュメンタリーに出てくれそうな同級生を探すが,そこで勇治に焼き飯を作ってやることになる。

 その焼き飯は,かつて父が梨枝に作ってくれたもので,梨枝も自然に作り方を覚えてしまったものだった。

 梨枝は父とのつながりは何もなかったと思い込んでいたが,こんなこともあったことを思い出す。

 

 撮影が再開され,梨枝は通っていた高校で友だちが少なかったという思い出を語る。

 又,病院前のファミレスで偶然再会した店員の同級生は,ファミレスで孫と一緒に梨枝の記事をスクラップしているおじいさんがいるという話をするが,咲は盛った作り話だと思い,もっと自然な話を求める。

 

 

 そのとき真希からショートメールが入り,梨枝は父に何かあったのかと思い病院へ急ぐ。

 だが真希の要件は,梨枝が父の見舞のために戻ってきたというのが,嘘だったことへの叱責だった。

 

 梨枝は病院で真希と出くわしてしまったとき,とっさに父の見舞に来たと嘘をついていたが,梨枝が撮影をしているところがSNSに上がっており,真希は妹が仕事に来ていただけだと知ってしまったのだ。

 その上,咲が仕掛けた隠しカメラが見つかってしまい,真希は激昂する。

 

 梨枝は咲に隠しカメラを設置したことを責め,東京に帰ろうとする。

 実家で荷物をまとめようとした梨枝は,父が自分の記事や出演作をすべてスクラップしたり録画していたことに気づく。

 

 梨枝はいつも父が作ってくれた焼き飯を作ってタッパーに詰めると,咲に連絡して病院へ向かう。

 病室で怒り狂う真希を制して,梨枝は焼き飯を父に食べさせるところを咲に撮影させる。

「うまか」と言う父に梨枝は,お父さんが作った方が美味しいから,又,作ってと言う。

 

 後からサルタクにあのときどうしてカメラを回したのかと聞かれ,梨枝は「カメラが回ってないと泣いちゃうから」と答える。

 

 

 

 

 

 久々の蓮佛美沙子主演映画で,相手役が伊藤万里華となると観ないわけにはいかない。

 話としては割とありがちだが,演技が良くて結構引き込まれる。

 

 蓮佛美沙子の演技が下手な女優役も上手いし,伊藤万理華のドタバタも笑える。

 家族の中でいちばん年少の弟が,いちばんしっかりしているというところも面白い。

 

 三倉茉奈が舞台挨拶に来ていたのだが,自分が座った三つほど隣の席に佳奈が来ており,一部の噂のように仲が悪いわけではないんだなと思った。