農業用水確保のため西日本を中心に各地に点在するため池。人工的に造られたものだが、長い年月をかけて、水草が生え、メダカ、トンボなどがすみ着き、一つの生態系をつくっている。豊かな生態系は環境教育の場として価値が見直されているが、最近は、その生態系が危機にひんしているという。十五、十六日に愛知県美浜町で開かれた「ため池シンポジウムinあいち」では、研究者らが池の現状を報告、生態系の保護について、意見を交わした。 (佐橋大)

 「ため池に水草が生え、水田に稲穂が波打つ風景は、日本人の心の奥にある原風景だと思う。そうした風景が最近変わってきた」。ため池の自然研究会(事務局・愛知県長久手町)の浜島繁隆会長は基調講演で、こう指摘した。

 環境省の二〇〇〇年度版レッドデータブックには、ため池の水草約百種のうち約40%が掲載された。浜島会長の調査でも、名古屋市とその近郊のため池約三十カ所では、一九九五年時点で三十年前と比べ、水辺のごくありふれた植物のタチモや、浮葉の上に白い花を咲かせるガガブタの生育する池が80%減少。スイレン科の在来種ヒツジグサは絶滅してしまった。

 他の地域でも同様の現象が見られる。兵庫県の東播磨地方では、八〇年からの二十年間で、ジュンサイの生育する池が80%減少。ヒツジグサは69%の池から姿を消した。佐賀県では、九九年に水草七十五種のうち27%にあたる二十種が絶滅危惧(きぐ)種とされた。

 減少の要因として、浜島会長は▽水質の汚濁▽池の水位が変わらなくなったこと▽外来植物の繁茂▽大規模な池の改修-などを挙げた。水質の汚濁は、生活排水などの流入で起きる。アオコの発生で、クロモなど沈水植物の光合成が妨げられ、姿を消す。

 田の水源となっているため池は本来、水位が変化するものだ。夏に下がって、冬に上がる。従来は、このサイクルに適応したタチモなどが岸辺に茂っていた。しかし、最近は使われなくなったり、新たに引かれた農業用水の調整池になったりして、水位の変わらない池が増加。タチモなどの減少に拍車を掛けている。

 外来種も在来種を脅かす。浜島会長は「名古屋市の塚の杁(いり)池では、誰かに放り込まれた園芸種のスイレンが水面を覆い、従来あったヒシやガガブタがほとんど見られなくなった」と報告。動物でも、ペットとして輸入されたミシシッピアカミミガメが各地の池に捨てられて繁殖し、在来のカメを圧迫している。

 水草減少の要因の一つとされた池の改修。しかし、池の堤は定期的に改修しないと、老朽化で決壊の危険性が高まる。浜島会長もその必要性は認めるが、岸辺の水草の生息地を奪う護岸のコンクリート化などは避けるべきだという。

 とはいえ、現状は工費の関係もあって、ほとんど研究者の望むようにはなっていない。浜島会長は、岸辺に設けられた親水デッキを「植物の生育を妨げる」と批判するが、一方で、ため池を親しみある水辺にしてほしいという要望も住民の中にはある。

 その後のパネルディスカッションで、元愛知県環境調査センター主任研究員の大沼淳一さんは「水辺の生き物がすむ環境と、アメニティの両立が課題」と指摘。所有者や専門家、行政、市民が参加する協議の場を設け、親水デッキなどを整備する池と、自然環境の保全を第一とする池を区分することも必要と主張した。

 また、竹村新池(愛知県豊田市)の保全に取り組むNPOカエルの分校(同市)の大内秀之代表は、翌十六日の分科会で「市民の意識の高まりが、行政を動かす。ため池の環境を保全するには、市民への意識付けが重要だ」と話していた。
 諏訪湖で江戸時代から170年近く続いたとされるシジミの養殖が今年で終了した。養殖を手掛けてきた諏訪湖漁業協同組合(諏訪市)は、ヘドロが沈殿し、シジミの好む砂地が減っている現在の湖底では養殖の効率が悪く、市場に安定供給できないと判断。特定外来生物のカワヒバリガイの混入による影響も懸念した。

 複数の文献によると、諏訪湖でシジミの養殖が始まったのは1839(天保10)年。山梨県の川のマシジミを放流したのが始まりとされる。その後もほかの湖などから稚貝を購入して湖底にまき、養殖を続け、湖周の旅館、ホテルなどが購入していた。

 県水産試験場諏訪支場(諏訪郡下諏訪町)によると、シジミは1955(昭和30)年度には42トン近く採れた。しかし、工場排水や生活排水でアオコが大量発生するなどした1960年代から不漁傾向が始まり、昨年度は約1・3トンにまで減った。

 信大山岳科学総合研究所山地水域環境保全学部門(諏訪市)の宮原裕一准教授は「湖の富栄養化で湖底にヘドロがたまったことや、底の有機物の分解が進み酸欠状態になったことなどが原因ではないか」とみる。

 一方、同漁協の有志は、シジミ漁の継続に向けて05年から、網を湖の中につり下げ、水中でシジミを養殖する「垂下養殖」も試行。この養殖のシジミは順調に成長したが、同じころ、琵琶湖(滋賀県)や霞ケ浦(茨城県)などでカワヒバリガイが大量発生し、生態系を乱している-との報告があった。

 同漁協は、このまま稚貝を購入して養殖を続けた場合、カワヒバリガイが混入して、諏訪湖の生態系も乱す恐れがあると判断。今年の春先に稚貝を放流せず、養殖を中止した。

 藤森直章組合長は「総合的に考えて今が一番いいやめ時ではないかとの結論になった」と話している。

 さまざまな環境規制や省エネ目標にもかかわらず環境汚染の拡大に歯止めがかからない中で、中国政府は環境保全に向けた新たな環境経済政策を導入し、汚染物質の排出削減など企業活動の監視を一段と強める方針を決めた。一方で環境対策費用の貸し付けなど、企業向けの支援策も盛り込んで“アメとムチ”による誘導を図る。ただ、民間経済活動への政府干渉が強まるとして、対中進出した外資企業の間には警戒する声も出ている。(坂本一之)

 中国紙、京華時報などが12日までに伝えたところによると、国家環境保護総局は企業の環境対策のため資金貸し付けや費用徴収、価格、保険の管理などを活用して環境汚染抑止を図る政策の導入を提案した。環境税や生態環境補償の政策、汚染問題に資金的に対処するための環境保険システムの導入などがあがっている。市場経済の手法をとった政策手段としているが、企業側には国家関与が強まることになる。

 同総局は今後、中央銀行の中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員会に加え、中国保険業監督管理委員会や財政省にも協力を要請するという。

 中国政府は法制度で環境汚染の規制を強めてきたが、利益優先の企業による違法行為は後を絶たず、汚染物質の排出抑制を狙って経済効果からの企業活動管理を狙う。

 環境対策で政府は今月4日、二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭や石油への依存度が高い自国のエネルギー構造を問題視し、バイオや風力などの再生可能エネルギーの比率を、2005年の7・5%から20年までに15%に倍増させる中長期発展計画を発表。目標達成に向けて、官民で約2兆元(約32兆円)を投資することにしている。

 また、審議中の循環経済法草案では、レストラン用割りばしやホテルで利用される歯ブラシなどの使い捨て製品の製造販売を規制する考えだ。

 ただ、汚染の現状は厳しいのが実情。全国人民代表大会(全人代)で公表された統計では、中国全土の約半数の都市の市街地で地下水の汚染が深刻な状況に陥っていることが明らかになった。

 こうした状況下で温家宝首相は今年6月、江蘇省無錫市の太湖で、アオコの大量発生による水質汚染で飲み水にも悪影響が出た問題で自ら現地に出向いた。温首相は「中央政府を代表し、おわび申し上げる」と現地で異例の謝罪を表明した。

 日中外交筋は、「中国共産党が市民から支持を維持するため、環境問題の解決に本気になっている」と分析している。最大の懸案は、経済成長の弊害として人民の生活環境を悪化させる汚染問題が、政府や党への不満として蓄積されることにあるとの見方だ。さらに中国の環境汚染は、陸上で国境を接する国だけでなく日本など近隣諸国にも多大な影響を与える。

 他方で、中国は日本の戦後の公害問題や諸外国の環境問題への対処を研究しており、環境問題で他国と同じ失敗を繰り返さないとの楽観的な分析をする専門家もいる。経済成長と環境保全の両立を目指す中国政府にとって、実質的な効果をどこまで達成できるか。企業に対する新たな環境対応策の成否が問われる。
 酸性の猪苗代湖のpH(水素イオン指数)が近年上昇し、中性化による水質悪化が懸念されている問題で、流入する河川の硫酸量の減少が大きな原因となっていることが31日、福島県の調査で分かった。このままでは2010年にも完全に中性化するとみられ、4年連続で水質日本一を誇る湖が、赤潮やアオコの被害に見舞われる可能性が一段と強まっている。

 猪苗代湖の水質は長年pH5.0前後で安定していたが、1995年から毎年0.1程度上昇するようになり、05年にはpH6.4となった。県は2000年から中性化の原因を調べてきた。

 当初は、生活排水の流入で富栄養化が進んで水性植物が増え、アルカリ性イオンを放出する光合成が繰り返されたのが原因と推測された。しかし、富栄養化の目安となる化学的酸素要求量(COD)は中性化が始まった90年代にはまだ上昇していなかった。

 県は、安達太良山(1700メートル)の山頂付近に源流がある酸川(すかわ)のpHが90年代前半から上昇に転じたことに着目。酸川が合流し猪苗代湖に流れ込む長瀬川の成分を調べたところ、80年代前半に一日当たり約70トン流れていた硫酸が、03―06年には約60トンに減少していることが判明した。

 猪苗代湖が酸性を保つメカニズムとしては、水質を中性化するリンや窒素が、鉄イオンとアルミニウムイオンと反応して水に溶けず沈殿物となることが知られる。硫酸は、河川の石や地質に含まれる鉄とアルミニウムを溶かして猪苗代湖に供給する役割を担っており、県は硫酸量の減少が中性化の最大の原因とみる。

 県は、9月13日に郡山市で開く研究発表会で調査結果を発表する。
 県の試算によると、猪苗代湖は10年にpH7.0の中性となり、18年には弱アルカリ性のpH7.4となる見込み。環境省の水質調査で猪苗代湖は02―05年度、CODの平均値の低さで全国一を達成したが、黄色信号がともった形だ。

 猪苗代湖の水環境を研究している日大工学部(郡山市)の中村玄正教授(衛生工学)は「酸川の源流一帯で地質的な変化があり、硫酸が減ったとみられる。2万年前に現在の形になった猪苗代湖に変革期が到来した」と分析。「貴重な観光資源を失わないためにも、増えた水生植物を刈り取るなど、中性化を抑制する対策を考えなければならない」と指摘している。
 県民の水がめの相模湖と津久井湖で八月上旬から、湖表層が緑色に染まるアオコが大発生している。昨年の同じ時期に引き続いて大量に発生しているもので、浄水場の職員や釣りボート業者は対策に追われている。

 両湖の場合、アオコはラン藻の一種「ミクロキスチス」が大量発生して起きるとされる。県企業庁谷ケ原浄水場(相模原市)によると、相模湖一地点に生息するミクロキスチスの細胞数は、昨年は、七月の一ミリリットル当たり三千個から、八月には百十万個にまで増えた。

 ことしは、七月は〇・〇九個だったが、八月三十日の調査では速報値で数万個という結果が出た。細胞数十万個で湖水が緑色に染まるといわれ、「アオコが目視できる地点では調査結果以上の藻が発生している」と担当者。「ことしは過去十年間では大きい発生だ。少雨で湖水の入れ替えが少なかったことと、生活排水や農業用水などの流入で湖水が富栄養化したのが一因では」と分析する。

 県河川課は一九八八年から、湖底から表層に水を循環させ、水温を下げる「エアレーション」を相模湖で八基、津久井湖で九基設置。過去十年は目立った発生は見られなかったといい、同課は「平年通りの気象なら効果はあるが、ここ二年は酷暑、少雨などの気象条件が重なった。様子を見るしかない」と即効性のある対策は打てずにいる。

 谷ケ原浄水場では、相模湖の水深二十メートルから取水しているが、アオコが一因で濁りが増した。八月上旬から浄水薬品を増量し、ろ過のスピードを遅くする対策を取った。

 一方、同湖では九月一日からワカサギ釣りシーズン始まる。釣り船業を営む五宝清一さん(57)は「このままではアオコがワカサギの体に張り付き、食用には責任を持って勧められない」と現在は予約を断っている状態で、水質が改善され操業が開始できるよう願っている。