さまざまな環境規制や省エネ目標にもかかわらず環境汚染の拡大に歯止めがかからない中で、中国政府は環境保全に向けた新たな環境経済政策を導入し、汚染物質の排出削減など企業活動の監視を一段と強める方針を決めた。一方で環境対策費用の貸し付けなど、企業向けの支援策も盛り込んで“アメとムチ”による誘導を図る。ただ、民間経済活動への政府干渉が強まるとして、対中進出した外資企業の間には警戒する声も出ている。(坂本一之)

 中国紙、京華時報などが12日までに伝えたところによると、国家環境保護総局は企業の環境対策のため資金貸し付けや費用徴収、価格、保険の管理などを活用して環境汚染抑止を図る政策の導入を提案した。環境税や生態環境補償の政策、汚染問題に資金的に対処するための環境保険システムの導入などがあがっている。市場経済の手法をとった政策手段としているが、企業側には国家関与が強まることになる。

 同総局は今後、中央銀行の中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員会に加え、中国保険業監督管理委員会や財政省にも協力を要請するという。

 中国政府は法制度で環境汚染の規制を強めてきたが、利益優先の企業による違法行為は後を絶たず、汚染物質の排出抑制を狙って経済効果からの企業活動管理を狙う。

 環境対策で政府は今月4日、二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭や石油への依存度が高い自国のエネルギー構造を問題視し、バイオや風力などの再生可能エネルギーの比率を、2005年の7・5%から20年までに15%に倍増させる中長期発展計画を発表。目標達成に向けて、官民で約2兆元(約32兆円)を投資することにしている。

 また、審議中の循環経済法草案では、レストラン用割りばしやホテルで利用される歯ブラシなどの使い捨て製品の製造販売を規制する考えだ。

 ただ、汚染の現状は厳しいのが実情。全国人民代表大会(全人代)で公表された統計では、中国全土の約半数の都市の市街地で地下水の汚染が深刻な状況に陥っていることが明らかになった。

 こうした状況下で温家宝首相は今年6月、江蘇省無錫市の太湖で、アオコの大量発生による水質汚染で飲み水にも悪影響が出た問題で自ら現地に出向いた。温首相は「中央政府を代表し、おわび申し上げる」と現地で異例の謝罪を表明した。

 日中外交筋は、「中国共産党が市民から支持を維持するため、環境問題の解決に本気になっている」と分析している。最大の懸案は、経済成長の弊害として人民の生活環境を悪化させる汚染問題が、政府や党への不満として蓄積されることにあるとの見方だ。さらに中国の環境汚染は、陸上で国境を接する国だけでなく日本など近隣諸国にも多大な影響を与える。

 他方で、中国は日本の戦後の公害問題や諸外国の環境問題への対処を研究しており、環境問題で他国と同じ失敗を繰り返さないとの楽観的な分析をする専門家もいる。経済成長と環境保全の両立を目指す中国政府にとって、実質的な効果をどこまで達成できるか。企業に対する新たな環境対応策の成否が問われる。