『ファースト・マン』サードレビュー | アディクトリポート

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やっと『ファースト・マン』のサードレビュー

  1. 『ファースト・マン』〈その1〉IMAXエレジー(哀歌)
  2. 『ファースト・マン』セカンドレビュー/なぜか聖闘士星矢

他の方々の『ファースト・マン』のレビューに接すると、

人によって感想がさまざまなことに気づく。

 

町山智浩氏はラジオで、

テルミンによる音楽を取りあげ、

私も

「鑑賞中も出色な音楽(ジャスティン・ハーウィッツ)だとは感じたが、

なるほど、楽器までこだわりがあったのか、

さすがにいいところを突いてくるな」

とは感じた。

 

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だが、主人公のニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)の冷徹ぶりは、

映画をよく見れば、ちょっと違うのではないかと、

さりげなく指摘するブログもあった。

(『ファースト・マン』 静かなる男の冒険/映★画太郎の MOVIE CRADLE)

 

その人は、

町山氏の反論を気にして、

そこらへんはやんわりと書いていた。

 

よほど「町山伝説」が怖れられているのか、

  1. 「もしドラ」騒ぎ
  2. 『ハート・ロッカー』騒動
  3. 『ボヘミアン・ラプソディ』問題
  4. 『キングダム』『大統領暗殺』での、他の映画レビューへのかみつき
とても気を遣った書き方だったが、
さすがに一般人にまで牙をむくことはないと思いますよ。
 
平気で向こうからパンピーに無差別攻撃をしかけてくる、
獰猛で凶暴で残忍な
小林誠じゃあるまいし。
 
また別の人は、
 
「映画秘宝」のみうらじゅんのマンガの定番は、
同じことに対して、
「いやね〜」と嫌悪感を示す人=否定派と、
「そこがいいんじゃない」と受け入れる人=肯定派がいることなんだが、
 
みうらじゅんの映画ってそこがいいんじゃない!
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ちょうどそれを思い出して、
 
(ネタバレ 赤字部分)
 
任務遂行のために精密機械部品のように動いていた主人公が、
その職責にあるまじき行動に出るところにこそ、
彼の感傷や人間性が示されていて出色だった。
 
——と感じた。
 
さてでは、どうして『ファースト・マン』は、
これほどまでに、見る人によって感想や反応が異なるのか。
 
それは人生の経験値とか、
アポロ計画について、どれぐらい知っているかによっても変わってくるのではないか。
 
なので今回は、そこらへんを掘り下げて行こう。

 

 

まず前提として、

私の英語が、そこそこ達者になったのは、

思えば知りあいのネイティブ(イングリッシュスピーカー)が、

知性と感性に秀でた方々だったからだと思う。

 

頭のいい人は、頭のいい人と話が合うので、

おのずと対極の存在=頭の悪い人を嫌う。

 

でもって頭の悪い人は頭のいい人とは話が通じないから、

話が通じる同類=頭の悪い人とつるみがちで、

似たもの同士で徒党を組む。

 

 

『新戦艦大和』の復刊計画はポシャったが、
さん

複写原稿を提供した方(※リンクしません)は、

選挙の時に、

自民党以外の街頭演説には嫌悪感があり、

スガ官房長官の演説には心が安まる

とツイッター発言しており、

「おいおい、逆だろ!」

と心の中でツッコミを入れ、接触を避けて今日に至る。

 

「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」がテレビ放送される前から、
310

劇場公開版を取り沙汰して盛りあがっていたブログ(※リンクしません)

マコマコの暴れん坊ぶりを世に知らしめた功績は大でも、

少し読み続けていくと、様子がおかしい。

 

スタッフへの批判はあっても、

「2202」と言う作品自体は楽しんでいるらしく、

意見を交わす仲間とは、どこか観点がズレている。

 

そのうち、「2202」とは別枠で、

「今日は国防の話です」と、

クソ与党の口車どおりに軍備増強を支持している。

 

「おいおい、大丈夫か?」

と心の中でツッコミを入れ、接触を避けて今日に至る。

 

 

とにかく私が英語圏との接触で大収穫だったのは、

ウォールストリート・ジャーナルの元ロス支局長、

スティーブン・サンスイート氏との1984年来の交流。

1992年に、ロスのサンスイート自宅で

 

彼を通じて、

学者肌のデビッド・ウエスト・レイノルズとも知りあった。

レイノルズ

 

2002年に、ペタルマの新サンスイート邸=ランチョ・オビ=ワンに長居した際、

旅程のはじめと終わりの2回、

レイノルズと会った。

 

 

彼は当時、

“Apollo: The Epic Journey to the Moon”

「アポロ 特筆すべき月への旅」

と言う本を出したばかりだった。

 

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——云々の逸話を聞いて驚いた。
 
『ファースト・マン』を観る際に、こうした予備知識を仕入れているのといないのとでは、感想も印象も理解度もぜんぜん違う。
 
とはいえ、知っている人は世界でもほんの一握りしかいない。
 
『ファースト・マン』劇中のアポロ宇宙船内シーンは、保存されたホンモノの宇宙船を使っており、当時ならピカピカで新品のはずが、50年の歳月を経て、さすがに配管の表面塗装にひび割れが生じている。
 
デイミアン・チャゼル監督が『ファースト・マン』で目指したリアルさ、ホンモノっぽさとは、
CG全盛、4K8K高画質時代の2019年の超鮮明画像で月面着陸を再現するのではなく、
1969年当時に、その様子を固唾を飲んで見守っていた、
世界中のテレビ視聴者が見知っている映像を再現すること。
 
だからカメラアングルも当時の中継映像のまま、
着陸船に視界を大きく遮られ、
現在のカメラだったら克明に映し出されるはずの、
理想のハッキリクッキリ、ベタな月面映像なんか出て来ない。
 
つまり1969年当時の標準的な白黒テレビ受像器に映し出された、
ピンボケ気味でぼんやりガビガビの月面映像が、
カメラアングルを限定されて、
(カラー映像にこそはなったが)忠実に再現されていて、とても懐かしい。
 
当時の月面への有人飛行では、
無人ではなしえなかった運用の一部を生身の人間が請け負いながら、
個を押し殺して、精密機械部品に成り代わった。
 
つまり人間性を徹底的に犠牲にし、
全体のために尽くす、国家に都合の良い理想の人間像こそが乗組員には望まれ、
ニール・アームストロングは、
それをこなさなければ死が待ち受けていると覚悟するしかない境遇にあった
=常に身近に死が待ち受けていた
ため、
この任を見事に果たし遂げたわけだが、
最後の最後に「指示や命令に忠実なだけではない、自分の意志がある人間だ」
と、娘の遺品を月面に遺すという、
他星の環境を地球の異物で汚染するという、
船長としてはあるまじき迂闊な行動で示す。
 
有人月面飛行は当時だからできたもので、
個の主張が激しい現代では、
「なんでそんなことする必要がある?」
と疑問を抱かれ、
1969年当時の条件のままでは、
だれにも引き受けられず、
また引き受けたにしても完遂はできないだろう。
 
ということがドラマの言外に示されており、
非常に深みのある作品でした。
 
こうしたことをふまえた上で、
(IMAXはさすがにムリでも)もう1回ご覧になるのもオススメです。