こんにちは。または、こんばんは。

今回読んだ作品は、週刊少年マガジンで連載中の「金田一少年の事件簿R」のスピンオフ作品。
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この作品、講談社のアプリ雑誌、マンガボックスとかいうのに連載されていたらしく、そっちのマンガや小説に疎いというか興味がないオレは、単行本が出る迄、まったく、この作品の存在を知らなかったよ。ガーン

金田一少年、始まったのが、オレが、まだ20代の頃で、マンガでありながら、小説なみの本格的な推理物を読めたので、楽しみにしてて、今も単行本が出ると、必ず読んでる。
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この「金田一少年…」の連載が終了した頃は、週刊少年マガジンも連載作品の路線変更をしていた時期で、オレ的にはマガジンがつまらなく感じてた事もあり、金田一少年…の連載終了の翌週からマガジンを買わなくなったんだよね。

それから数年後に復活して以来、以前のような長期連載はないけど、いまだに続いてる、息の長いミステリーマンガだよなあ。

このシリーズ、これまでもサブキャラを使ってのスピンオフ作品はあったけど、今回は、金田一の宿敵である地獄の傀儡師・高遠遥一の高校時代の話で、地獄の傀儡師誕生のきっかけとなるエピソードとした事で、今迄の正統派ミステリーとは一味違う作品に仕上げられている。

ストーリーは、秀英高校に四年振りに全教科満点で入学した高遠が、授業中なのに授業を聞かず、外を見ていた事に注意をしようとして質問した教師を、逆にサラっとやり込めるところから始まる。
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同級生達とあまり馴染まない高遠に、物おじせず話しかけてくる同じクラスのお調子者、霧島純平
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の強引な誘いにより、マジック部を見に行き、日頃から気にかけてくれている教師・姫野
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が顧問をしている事などから、なんとなく入部した高遠だったが、個性の強い部員が揃ったその場所は、高遠が今まで持った事がなかった「居場所」というものを与えてくれた。

校内で行われる、五月祭の定例マジックショーに備えて練習を重ねながら、平穏な日々を過ごしていたが、ある日、マジック部の先輩で、高遠の母親であるマジシャン・近宮玲子のフアンで、昨年の全日本学生マジックコンクールの優勝者である藤枝つばき
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からのメールで、午前0時にマジック部員全員が呼び出される。
呼び出されたマジック部員達が集まり、生物準備室に行くが、鍵がかかっており開かない。様子を伺おうと鍵穴から中を覗くと、机の上に晒された藤枝つばきの生首があった…。
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部員達が交代で中を覗き終え、中のただならぬ様子に、合鍵を借りてきた部長のが鍵を開け、室内に入ると、さっきあった、藤枝の首は忽然と消えており、
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藤枝の新たなマジックかと思い、その夜は解散するのだが、翌朝、藤枝の首が昨夜と同じ姿で発見された。140530_123312.jpg

これを皮切りに、高遠の宿命をまざまざと見せつけるかのように行われる、死神マジシャンによる連続殺人、「マジックホラーショー」が開幕する。

藤枝に続き、翌日には、クラスメイトの霧島、
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同じマジック部員の黒江が続けて殺される。
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最初はマジックホラーショーの名に違わぬ、手の込んだ密室殺人ショーを演じた犯人だったが、あとのふたりについては、首を晒す事以外は共通点のないカタチだけのマジックショーになっている。

高遠は、これを死神マジシャンからの挑戦と受け止め、犯人を暴き、トリックの種明かしをしていく…。
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まだ、わりと新しいミステリーマンガなので、ストーリーはここまで。
やっぱ、ミステリーとか謎解き物については、読む前に、あんまりストーリーとか知りたくないだろうしね。

こういう後付けのスピンオフ作品って、本編と繋げると矛盾が生じてしまったりする場合が多いんだけど、この作品では、本編で高遠が初めて地獄の傀儡師として引き起こす、「魔術列車殺人事件」に繋がっていく人格形成の下地になった事件として上手く描かれている。

高遠のルーツを探る事件としては、本編の30周年記念シリーズの4、5巻の事件でも、妹の存在が明らかになり、更に、父親の過去を紐解く場所で僅かな伏線を張ってあるので、そっちの方は今後の展開に期待するとして、今回の作品は、本編で、各登場人物の設定をきちんと作り込んでいるからこそ描けた好例だと思う。

最近のマンガの多くは、意図的な場合も含めて、キャラの作り込みに力を入れず、世界観やアクションなど、映画と同じようにストーリーの展開にばかり力を入れているものが多い気がする。

たしかにそれも必要な魅力のひとつだとは思うが、そういう作品は、その時はいいが、完結後、通し読みをした際、よほど世界観が強烈な場合以外、キャラクターに感情移入できないから、さほど印象に残らないんだよね。

この「金田一少年…」の本編も、はじめからキャラ設定がきちんとできてたワケじゃないけど、長期にわたる連載の中で、主人公をはじめ、主要登場人物を作り込んでいったのだと思う。

だからこそ、今回のようなスピンオフ作品でキャラが活きてくる。

本編での一の定番セリフ、「金田一耕助(ジッチャン)の名にかけて」も、高遠ヴァージョン、「天才マジシャンと呼ばれる母親、高宮玲子の名にかけて」に代わって使われてるし(笑)
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高遠自身は、少し変わり者ながら、普通の高校生なのに、事件の聞き込みに来たベテラン刑事に容疑者扱いさせる、まだ潜在意識の中に隠された凶気とか非情さ、冷静さなどを垣間見せる。

ストーリーが終わりに近づいてくる頃になると、さらに、現在の地獄の傀儡師が求める犯罪美学迄、顔を覗かせる。

ラストには、本編の明智警視も秀英高校の四年前の満点合格者のOBとして登場して、しかも、高遠とは、扉一枚を隔てて接触しないのも、オレ的には演出効果大(笑)。
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これは、原作のよさはもちろんだが、マンガを描くさとうふみやの画が作品の雰囲気を活かせているからこそ成立しているのだと思う。

女性マンガ屋ならではの繊細なタッチによる美形キャラの凶気の瞳を見ると、つくづく、キャラクターは眼と表情が命だな、と感じる。

ミステリーが好きな方にはオススメです。

それでは最後に、本編に繋がる高遠の決めゼリフ

「血のように赤いバラをどうぞ…」
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