2026年7月3日(金)に発売した「週刊漫画ゴラク」通算3000号スペシャル記念号。

豪華プレゼント企画や巨匠と呼ばれる漫画家による読み切りがある等はどこの漫画雑誌でもよくやってる事だかゴラクの斬新さはその値段。

ふだん550円(税込)で売ってるものを物価高のこの時代に敢えて110円(税込)で出してきたところ。


先月コンビニで講談社の「ヤングマガジン創刊45周年記念復刻ヤンマガ」

を見かけ表紙の懐かしさに思わず手に取ったが1980円(税込)という値段に驚き買うのをやめて棚に戻してしまった。
中身としてはヤンマガの10周年号の復刻版に付録として今は廃刊だか休刊になったヤンマガ増刊号の「ヤングマガジン海賊版」1989年11号のダイジェスト版と復刻版の表紙を印刷したクリアファイルがついてくるというものだったがそれにしても当時を懐かしむにはあまりにも高い。
これが仮に千円(税込)だったらまだしもよほどの懐古趣味かマニアでもないかぎりたかが雑誌にあの値段は払えないでしょう?
貧乏性な自分はその値段を出すならちょっと贅沢なメシを食った方がマシだと思ってしまった。
なんて事があった後だけに漫画ゴラクの値段にはよけい驚いた。
この数十年、雑誌のほとんどは好きな作品や記事のつまみ食い的な立ち読みで済ませているのだが、今回のゴラクも大好きだった永井豪の新作が載ってたのでいつものようにそれだけ立ち読みするつもりだったのだが背表紙に表記されてた値段にこれなら買って帰りゆっくり読もうという気になった。
無論今のご時世、この値段では出版元の日本文芸社としては赤字だろう。(次号予告を見たらしっかり550円に戻ってた)
しかしこの号を買った自分も含めて売上部数は多少なりとも伸びたのではないだろうか?
そもそも漫画雑誌は日本の住宅事情も相まって読み捨てられる前提で作られる物だと思っている。
日本がバブル景気に浮かれてた時代、電車の網棚や駅のベンチ、ゴミ箱には読み終えた新聞や雑誌が数多く捨てられていたが今はたまに電車に乗ってもほとんどそういう光景は目にしなくなった。
紙でなく電書で読むようになったという時代の変化もあるだろうが、ではなぜ雑誌離れが起きているのだろうか?
それにはやはり値段の高さも影響してるのではないだろうか?
毎年春になると大幅給料アップのニュースが流れるがそれは一部の名の知れた有名企業だけの話であり日本の企業の多数を占める中小企業や零細企業の賃上げ率は昔とさほど変わってないのが現実だ。
そんな中、雑誌は材料費や印刷代の高騰とかを理由に事あるごとに値上げをし続け青年誌の550円という値段は今や弁当屋ののり弁より高い物になってしまっている。
月に換算すると4回発行するとして2200円。
そんな高い物を買える社会人や学生がどれだけいるんだろうか?
そう考えると電車の網棚に読み終えた雑誌を置いていく人がいなくなるのも当たり前だと思えた。
青年誌の高さからふと今の少年誌の値段が気になり背表紙を見たら320円…。(汗)
この値段を今の子供達が小遣いで買えるのかと現在のマンガを読み始める子供達(独断で小学3年~4年生)の毎月のお小遣いをちょっと調べてみたら自分が子供の時とさほど変わってなかった。
これではとても子供達が漫画雑誌を買えるわけがない。
自分はマンガ雑誌が黄金期といわれた時代に育ったが小学生の時のお小遣いは学年の金額(小学3年生300円、4年生400円)だった。
初めて自分で漫画雑誌を買えたのは小学4年生だった。
この当時の週刊少年漫画雑誌は130円。
この値段だったから小遣いを捻出して友達同士で週替わりに漫画雑誌を買って回し読みすることができた。(もちろんジュースや駄菓子なども今より全然安かったからだが)
130円で1冊にマンガが13本だか15本載っているのだから人によっては好きなマンガだけ読む飛ばし読みもできたろうし、自分はあまり興味がなくても全部の連載マンガを読んでて読んでる内におもしろくなったり新連載で新しくおもしろいと思うマンガを見つけるのも好きで1冊で一週間十分に楽しめた。

マンガが子供だけの物でなく大人が読んでいても恥ずかしくなくなった現在、青年誌少年誌問わず買い支えてるのは20代~40代くらいの男性女性なのではないだろうか?
その年代の人達は自分と同じく少年少女時代、小遣いをちょっと我慢すれば漫画雑誌を買えた時代の人達ではないだろうか?

漫画雑誌の入り口は少年少女誌である。
本来次世代の購買層になるはずの今の子供達が小遣いのやりくりで買えない値段設定をしていては今の購買層より下の世代は先細りしていくだけだろう。
これまで時代に合わせて値上げし続けてきたのだから世の中の流れに任せるのではなくそろそろ雑誌本来の役割を考えて値下げする為の工夫と方法を各出版社と印刷所が考える時期に来てるのではないだろうか?
そう思えた今回の漫画ゴラクの価格破壊だった。

そうそう余談になるが今回のお目当て、永井豪の新作「地球大戦2056」は今冬に連載開始される作品のプロローグ読み切りで前に同じゴラクで連載してた「バイオレンスジャック」をふたたび主人公とした、これまた幾度となく繰り返されているかつての永井作品の人気マンガの主人公達の設定を少しだけ変えて登場させる東映まんが祭り的作品だった。
久々の新作の序章だし今回は読み切りというのもあってか勢いもあるしテンポもよく読みごたえがあり、これぞ永井豪と思えた。
この読み切りで連載も期待させるが前の「バイオレンスジャック」や「デビルマンレディー」以降、途中でダラダラし始めたり結局最終的にデビルマンを登場させてデビルマンのパラレルワールドでした的なガッカリな展開になる可能性が大なのであまり期待しないようにしてる。


全3巻完結。


本宮泰風主演の人気Vシネマ「日本統一」の10周年記念作品として2024年に製作された外伝的映画「氷室蓮司」のコミカライズ作品。

自分はこの単行本でこのVシネを知ったのだが、かなりの大長編でとても今から観る気にはなれず本編についてはほとんどわからないが氷室蓮司(演:本宮泰風)と少年時代からの真友田村悠人(演:山口祥行)がヤクザ同士の抗争をなくす為にヤクザ界の日本統一を目指す物語らしい。

このマンガでは氷室蓮司にスポットを当てた作品になっている。

神戸に本拠を置く日本最大のヤクザ組織・侠和会若頭の氷室蓮司

は侠和会沖縄支部の内紛に乗じ一部の者に侠和会で禁止されてる薬物の取り引きを持ちかけた沖縄在住の台湾マフィア黒龍幇(こくりゅうほう)を彼らに娘を殺され恨んでいる通訳・李文環(リー・ウェンファン)
の協力を得て粛清、殲滅し
沖縄支部の内紛も片付けようやく一息つけると思っていた沖縄からの帰途、氷室に一通のメッセージが届く。

そこには「おまえを待っている。ひとりで来い」というメッセージと氷室のひとり息子・悠太

が捕らわれている画像が添付されていた。


大組織の若頭という立場から愛する家族を危険に巻き込まない為妻子と別れ関係を絶ってきた氷室だが悠太が修学旅行先の台湾で誘拐された事を知り単身台湾に飛ぶ。

土地勘もなく言葉も通じない台湾で氷室が頼ったのは以前縁をもち現在は台湾で商人をしている篠原将人。

氷室が台湾に渡ったのと前後して台湾では警察の厳しい締め付けに対する報復として各地で黒龍幇による警察署の爆弾テロ攻撃が行われていた。
続いて送られてきた画像には悠太が捕らわれているらしい建物が写っていたが言葉の通じない国で漠然と悠太の行方を探す氷室は沖縄にいるはずの李と偶然再会。
送られてきた写真が黒龍幇のアジトである事を李から聞き氷室は悠太を助け出す為そこに乗り込む。
そこにアジトの場所の密告を受けた女性刑事・楊愛怜(ヤン・アイリン)ら台湾警察が急襲、黒龍幇のボスらとともに黒龍幇の一味として氷室も逮捕されてしまう。
ところがこれまで一方的に仕掛けられていた爆弾テロだったが氷室の逮捕後、氷室と悠太に関係する質問が書かれたカードが置かれるようになりその答えが時限爆弾の解除キーになるようになる。
愛怜からアジトに悠太がいなかったと聞き、一刻も早く悠太を助け出したい氷室は答えを教えるかわりに警察からの釈放を要求。
警察も愛怜を同行させる事でこの条件を飲み氷室は解放される。
解放された氷室はふたたび悠太の行方を探しに行く。
果たして悠太を拐ったのは仲間を殺された黒龍幇による復讐なのか?それとも犯人は別にいるのか?そしてその目的は?

このマンガのおもしろさはヤクザの若頭としてでなく父親としての氷室を描いているところ。
そして初めは黒龍幇による復讐と思わせながらわりと早い段階でボスが逮捕されてしまう事でより謎が深まっていく点かな。
こういう展開、天樹征丸(金成陽三郎)+さとうふみやによる「金田一」シリーズ
の犯人捜しが好きな自分好みの展開で他ジャンルの作品にミステリーを組み合わせるとありがちなショボい推理ものと違ってちゃんとミステリーしてて犯人捜しも楽しめた。
もしヤクザものとか不良ものに偏見がなければミステリー作品として十分楽しめると思うのでおすすめ。





現在ビッグコミックスペリオールで「MUJINA  INTO  THE  DEEP」を連載中(第1部が完結し休載中。2027年再開予定)の浅野いにおの旧作。(2023年に映画化もされたらしい)

全1巻完結。

深澤薫

は8年間連載したマンガを完結させたばかりの30代半ばを過ぎた中堅漫画家。

次回作をとは思うもののなかなか描く気になれず鬱屈した日々を過ごすようになっていく。

そんな怠惰な暮らしを送っていた深澤だが再びマンガを描き始めそして人気漫画家へと返り咲くが、彼が描くマンガと深澤自身は大きくかけ離れていて…。


あらすじはこんな感じ。

この作品はよくある漫画家のサクセスストーリーでなく漫画家になる夢を叶え、それなりに人気もある連載作を描き終えた漫画家が陥り易いであろう状態が描かれている。

マンガにジャンル分けがあるとするならこの作品は文学的マンガになるのではなかろうかと思う。

自分的に文学といえるのは感動的な物語などよりどちらかというと心に深く刺さったりまたは心を抉られるような、自分の中にあるであろうあまり見たくない認めたくない陰部に気づかされるようなものだと思っている。

文字を使って表現する小説と違いマンガは画で表現する為、その性質上どうしても動きを使って表現したものが多いがこの作品の動きは緩やかで、主人公をはじめキャラクター達の心の動きがしっかり描かれている。

その分満たされない日々を過ごしながら少しずつ堕ちていく深澤の描写はリアルに写る。

また登場人物を悪戯に増やさず深澤がいる世界を狭く絞っているのもこの作品の上手さだと思う。

深澤と関わるキャラは複数名いるが印象深く関わってくるのは4人の女性。

・新人漫画家時代に付き合っていた一歳年下の彼女。

痩せた野良猫のような目付きをした猫顔の彼女は第1話の冒頭の他数話に深澤の過去として出てくるが上の絵のように輪郭がはっきりしない感じで描かれ最終話ではじめて顔がはっきりと描かれる。

その際まだ駆け出しだった深澤の未来を鋭く見抜いていた。
・深澤の妻で編集者の町田さん

は深澤のマンガが人気があったのを嬉しく思う反面、自分の担当作品がどれだけ売れようと深澤には認められない事が悔しくてより仕事に打ち込んできたが深澤から離婚を切り出されてしまう。

・アシスタントをしながら漫画家デビューを目指す富田さん。

その漫画愛からマンガを描き、今回新人漫画賞の最終選考まで残っている。
深澤にたいする不満を内心抱えながらアシスタントという立場から言えずにいたが、深澤が自身の都合で一旦事務所を畳むと言い出した事でこれまでの不満を爆発させるが深澤のベテランとしての圧力によってデビューを潰される事を恐れて謝罪する。
・風俗店で出会ったちふゆ。
新人漫画家時代の彼女に少し似た雰囲気を持つ猫顔のちふゆだが彼女のそれは人に愛想を振り撒く飼い猫の目だった。
この女性達との接し方が深澤の心奥にある傲慢さを炙り出していく。

漫画家に限らず何かを創り出すクリエイターと呼ばれる人達はふだんどれだけ温和に見える人であっても深澤と同じように他者がどんなにいいものを創ろうとそれを認めない、常に自分の創り出すものが一番だと思ってる一面があると自分は思っている。
簡単に他者が創った物を認めてしまうようでは新しいものを創り出し続けることはできないのではないだろうか。
それゆえクリエイターの誰もが近しい人や同業者にたいして深澤のような傲慢さを出しながら接している部分があるのではなかろうかとこのマンガを読みながら思った。
深澤は自分がどんな人間だろうが人気マンガさえ描いていればその傲慢さも許される、その為なら読者に媚びようとも人気作を描き続ける道を選ぶがその強さはどこからくるのだろうということを考えながら読んだ結果、読後はめちゃくちゃ疲れた。
いい作品だとは思うが娯楽として読むのは不向きだと思う。