「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
改めて“老いること”を考える
★★★★
（★…1点 ☆…0.5点，★5つで満点）
（2011年／スペイン／89分／Arrugas）
【 監督 】
イグナシオ・フェレーラス
【 原作 】
パコ・ロカ
【あらすじ】
認知症の症状が出始めた元銀行員エミリオは、息子夫婦に養護老人施設へ入れられることになる。
同室となったミゲルは、身寄りがないながら施設で気ままに生活していた。その他アントニア、モデスト、ドローレスらとともに施設を生活することになった。
施設の2階には重度のアルツハイマー症の人間が隔離されており、自分がアルツハイマーであることを知ってしまったエミリオはショックで症状が進行、ミゲルは彼のためにある行動に出るが―
【コメント】
お、重い・・・ただひたすら重い・・・
本作は、先に観た『愛、アムール』同様、老人を主体にした問題をテーマにしたアニメなんですが…だめだよ～アニメで現実突きつけちゃさ～
アニメってほら、ロボットが出てきてガシャーンドカーンってなったりさ、おおよそ現実ではありえない目のでっかい可愛いキャラが出てきて萌えてみたりさ、テレビでいじめっ子だったやつが映画ではなぜかすげーイイ奴になっちゃったりとかさ、要するに夢と勇気と希望を与えるものじゃん。なのに僕はなぜアニメ観て老後を心配しなくてはならないのか。
『愛、アムール』のキツさも大概だったが、本作も同様、けっこうな凹み気分を味わえる作品であります。
本作は、アニメという見易さを逆手にとった、ユーモアを交えつつも、老人介護という現実、ひいては全世界共通の“老いる”という現実を突きつけた社会派アニメであります。どこの国でも同じなんですね～
いやはや、本作を観て改めて“老いること”について考えてしまいましたね。
もし独り身を貫き通したら、僕はミゲルのように介護施設で自由気ままに暮らすのかな～とか、それとも認知症患っちゃうのかな～とか、寝たきりになっちゃうのかな～とか。
四十路の僕にとって、老後ってのは「まだまだ先の話」とは言えなくなってるんですね。歳取れば取るほどに光陰矢のごとし、1日1週間1年がどんどん早くなってるので、10年20年なんてアッという間だなと。僕だけじゃない。仕事をバリバリこなしているやり手の上司や、出世に意欲的な同期のあいつ、子供が出来て幸せなあいつも、いつか必ず歳を取るわけです。
どんなにまじめに生きても、遊びほうけて生きても、高収入を得てリッチに暮らしても、お金に苦労しても、美男美女でモテモテだったとしても、結局は一時の出来事なんだな、と実感させられます。優劣があった社会からリタイアすると、みんな同列に戻っちゃうんですね。
そうなったとき、自分はどういう老人であるべきか、そんなことをひしひしと考えさせられます。
ラスト、これがハッピーエンドだったのかバッドエンドだったのか、何とも言えません。老後に希望を持てるわけでも、悲観的になってしまうのかも分からない。ただ言えるのは、誰もが必ず迎えることだということだけです。
もし本作が、生身の人間が演じる実写だったら、これほど心に突き刺さることはなかったかもしれないし、そもそも僕は観なかったかも知れません。
アニメ＝ファンタジーである必要はない、これからのアニメの可能性を広げた作品であるのかもしれませんね。
【2013年度 Myランキング】（6/23時点）
本作は、本年度のベスト10中第5位にランクイン。
老後が心配です。
（ベスト）… ★★★☆以上が基準
１位：愛、アムール ★★★★★
２位：燃えよ！じじぃドラゴン 龍虎激闘 ★★★★☆
３位：シュガー・ラッシュ ★★★★
４位：レ・ミゼラブル ★★★★
５位：しわ ★★★★
６位：HK 変態仮面 ★★★★
７位：ジャンゴ 繋がれざる者 ★★★☆
８位：アウトロー ★★★☆
９位：テッド ★★★☆
１０位：デッド寿司 ★★★☆
次点：ラストスタンド ★★★☆
舟を編む ★★★☆
俺はまだ本気出してないだけ ★★★☆
（ワースト）… ★★☆以下が基準
１位：ライジング・ドラゴン ★★
２位：ダイ・ハード/ラスト・デイ ★★
３位：グランド・マスター ★★
＜その他ランク外一覧＞
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