帰国後の大悪化② | kyupinの日記 気が向けば更新

帰国後の大悪化②


Yer So Bad (Tom Petty)Tom Pettyの1989年のソロアルバムFull Moon Feverから。Tom Petty & The Heartbreakersのアルバムは輸入盤しか手に入らないものが多いが、これは日本でも発売されている。Tom Pettyのソロアルバムは概ね出来が良い。他、Wildflowersも名盤である。

kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
Full Moon Feverのジャケット

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ジャケットの裏。ジーンズがいい。

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ジャケットを開くと、なぜかタロットの大アルカナ、18THE MOON.(月)が描かれている。このカードは見れば見るほど意味深である。このカードは「不安」「恐れ」「暗中模索」などのマイナスの意味が多いが、一方、「一筋の光明」「真実へ導く」など良い意味合いも持つ。

彼女は最初うつで初診している①」の続き。

彼女によれば、帰国後、段違いといった感じで症状が悪化したと言う。緊張が絶えず動悸も激しい。パキシルが全然効かないという。パキシルを増量しやがて40㎎になった。またワイパックスやインデラルも併用したが、効果的とは程遠い状態だった。

そこでパキシルを諦め、ジェイゾロフトに変更することにした。イライラに関してはジェイゾロフトの方がむしろ良い可能性もあるからである。彼女によれば、ジェイゾロフトに変更後、少しテンションは良くなったという。緊張時に手の震えがある。海外での生活に比べてこんな風に語っている。

向うの人はフレンドリーで良かったけど、こちらは気を遣って大変。人に会いたくない。食欲が全然なくて少し痩せた。


彼女ははっきりとした性格である。頑固で我を通すタイプだが、治療期間を通じて僕の言うことは聞いてくれた。こちらの指示通り薬は飲んでくれるのである。彼女本人に性格を聞いてみた。

負けず嫌い。勝気。責任感が強い。典型的なA型です。

という。ジェイゾロフトは50㎎くらいずっと続けたが、今ひとつの印象。性格面に多少悪影響を及ぼしていた。職場で時々キレて、同僚などに強く言ってしまうので、すぐに自己嫌悪するという。

その後、社会不安障害自体はまあまあだが、イライラ感が改善しないため、SSRIから他の薬に変更すべきと思い始めた。しかしある程度、SSRIが症状を改善しているのは事実であるし、ジェイゾロフト以外のこれといった確証のある薬もない。当時は模索していると言ってよかった。

最初、ジェイゾロフトを漸減し、セディールやデパケンR、セパゾンなどで治療しようとしていた。いかにも非力だとは思っていたが・・

ジェイゾロフト 25㎎
セディール  20㎎
セパゾン   4㎎
デパケンR  400㎎


その頃の彼女の感想である。(初診後3年半目頃、海外滞在1年を含む)

うつ状態がほとんどなくなっていたが、またうつが出てきた。イライラを通り越して、どうして良いかわからないくらい。セパゾンはまあまあ効いている。セパゾンはあまり眠くなりませんね。

ジェイゾロフトからデプロメールに変更しようとしたが、デプロメールだと動悸が出てきて悪いという。そこで、中止しアンプリットなど3環系抗うつ剤で治療することにした。デパケンRは微妙だが、はっきり悪いとまでは判断できず、400mgはそのままとした。

アンプリット  50㎎
ジェイゾロフト 25㎎
セパゾン   4㎎
デパケンR  400㎎
ロヒプノール  1㎎


アンプリットは何もないよりは良いが、仕事などで何かあると悪い。イライラもするし、落ち込みもするし、胃が痛く感じることもあるという。対人緊張が強い日がある。アンプリットはさほど良いようには見えない。アンプリットを中止しジェイゾロフトを50㎎処方に戻す。頻脈もありイライラ時にはインデラルを服用するように薦めた。薬が多くなることもあり、デパケンRは有効性も不明なままいったん中止する。

ジェイゾロフト 50㎎
セパゾン   6㎎
マイスリー   10㎎
(イライラ時、インデラル10㎎)

ジェイゾロフトを元に戻し50㎎とすると、わりあい良かったらしい。

ジェイゾロフト50㎎だと、少しふらついた感じがあります。ジェイゾロフトを2錠飲むと、周囲があまり気にならなくなりますね。セパゾンは非常に良い。安定する感じ。時々無性に甘いものがほしくなります。体重は増えていない。タバコは1日5本くらいです。

ジェイゾロフトなどのセロトニンをアップする抗うつ剤は、男性より女性の方が適することが多いという調査がある。一方、男性はセロトニンよりノルアドレナリンをアップする薬の方が良いらしい。(一般的な傾向であり、万人にそうというわけではない)

(続く)

参考
うつ状態に最初に選択される薬はジェイゾロフトらしい
ジェイゾロフトとパキシルの力価の話
ジェイゾロフト50mgマイスリー5mg
ウェールズ生まれの
アンプリットのテーマ

一連のエントリ
彼女は最初うつで初診している①
帰国後の大悪化②
病前性格とリーマス③
希死念慮とSSRI、ブプロピオンの試み④
ブプロピオン処方後の経過⑤
レスキューレメディーとデパケンR⑥
トレドミンとベンラファキシン⑦
ラミクタールの試みとリフレックス⑧
リフレックスの悪夢とトピナ⑨