ジェイゾロフト50mgマイスリー5mg | kyupinの日記 気が向けば更新

ジェイゾロフト50mgマイスリー5mg

これは、うつ状態の若い女性患者さんでの妊娠に関して最強といえる処方。もちろん完璧ではないけどね。

ジェイゾロフトは本邦で発売されているSSRIの中ではもっとも催奇形性リスクが低い。またマイスリーは眠剤の中ではもっともリスクが低いため、この組み合わせは、現代的な薬の中では、まだリスクが抑えられている処方と言える。不明な点があるとすれば、併用の場合、リスクがどう変化するか良くわかっていないことであろう。

SSRIの催奇形性リスク
デプロメール   C
ジェイゾロフト  C
パキシル     D


【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。


【D】
人の胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(例えば、生命が危険にさらされているとき、または重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)。


マイスリーに関しては催奇形性リスクはCとされている。参考

【B】
動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、人、妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠期3ヵ月の対照試験では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。


ジェイゾロフト50mg、マイスリー5mgの処方は以下のデプロメール主体の処方とほぼリスクは変らないといえる。厳密には違うのだろうけど。なぜ以下の処方を最強としなかったというと、デプロメールは抗うつ作用の点で効果がいまいちだから。

デプロメール  75mg
マイスリー   5mg

真の最強は、実はルジオミールを使った以下のような処方なのである。(現在はルジオミールの情報がなく、確実なものとは言い難い。)

ルジオミール  75mg
マイスリー   5mg

ルジオミールは抗うつ剤では珍しくリスクが「B」となっており、また抗うつ作用も強いため、この処方で治療可能なうつ状態の範囲は広いといえる。問題があるとすれば、ルジオミールは口渇、便秘、眠さなどの副作用がジェイゾロフトよりは多いこと。現代的という意味ではややジェイゾロフト、マイスリーの組み合わせの方が上回る。

僕はパキシルと一般の眠剤で治療されている若い20代~30代の既婚および未婚女性患者さんを、ジェイゾロフト、マイスリーの組み合わせにする努力をしている。だから、今回のエントリのタイトルに挙げた処方の患者さんがが数人いるのである。せっかくこの処方をしていても、ソラナックスなどの抗不安薬を併用していると完璧にはならない。抗不安薬は催奇形性が「D」のものが多いからである。

もともと、ジェイゾロフトやマイスリーにはある程度の抗不安作用があるので、この処方で全くできないわけではない。しかしどうしてもデパス、ソラナックス、ワイパックスなどが必要な人がいる。皮肉なことに、純粋に「うつ病」の人こそ、このシンプルな処方に抵抗がないのである。パニックがあったり神経症的な色彩のある人は抗不安薬が手放せない人がいて、ややこの処方は難しいことも多い。

もともとパキシル20mg、レンドルミン1錠くらいの人は、この処方の変更がうまく行き易いと感じる。既に落ち着いている人なら、ジェイゾロフトに抵抗がないし、また副作用がパキシルより減少することもある。例えば便秘などである。パキシルとジェイゾロフトは抗うつ作用においてそう大きな差はないように思える。

問題はこの処方につけるレセプト上の診断名。もちろん「うつ病」や「抑うつ神経症」はアウトである。この組み合わせだと、「パニック障害」しかない。レセプトを審査するドクターにこう思われているかもしれない。

「kyupin先生の病院、パニック障害の人が多いね~」

そんなはずないだろ!

注意
Cはリスクはあるので、全く安全とはいえないが、薬を使わざるを得ない状況では最良という意味。ルジオミールはBだと思うが、近年ランクダウンなどの変更があった場合はご了承ください。なお、このエントリの内容について、いかなる責任も負いません。

参考
向精神薬と妊娠

読者さんの指摘により、マイスリーのリスクをCに訂正しています。(2009年1月18日)