ブプロピオン処方後の経過⑤ | kyupinの日記 気が向けば更新

ブプロピオン処方後の経過⑤


Refugee(Tom Petty and the Heartbreakers)1979年のアルバムDamn the Torpedoesの1曲めに収録。Damn the Torpedoesは全米2位を記録している。

kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
Damn the Torpedoesのジャケット

希死念慮とSSRI、ブプロピオンの試み④の続き

2ヵ月後くらいの彼女の言葉。
職場での鬱陶しさは、自分が少し変わったのか前より感じなくなっている。人とのお喋りとか、苦手な人とか・・前より人間関係がギクシャクしなくなった。今は普通に仕事をしている。普通の日常になってきたが、仕事以外で悩みがありますね。でもかなりスッキリしている。元気になっていると思う。今はマイスリーは必要ないです

ようやくジェイゾロフトを中止し、処方はシンプルになった。

リボトリール  0.5㎎
ブプロピオン  225㎎


病院で処方しているのはリボトリールだけになったのである。

その1ヵ月後
自分の感情が出てきた。仕事の段取りが上手くできる。以前は何かしていてもぼんやりとしていたと思う。今は自分らしくなったと思います(ブプロピオンの服用後、自分らしくなったという言葉はよく聞く)。職場の環境が今は以前より良く見えている感じです。ブプロピオンは150㎎に減量する。(当時はブプロピオンの適切量を測りかねていた。今ならそのままとしたかもしれない。)

ブプロピオンは自然な効き味だが、彼女にとって大きな欠点は不安にそこまで効果がないことである。ブプロピオンは「不安」の部分をかえって不安定にさせるのである。本人の希望でソラナックスを併用することにした。

リボトリール  0.5㎎
ブプロピオン  150㎎
ソラナックス  0.4~1.2㎎頓服


やはり、不安、パニック系の人にはブプロピオンはあまり良くないように思われる。気分安定化作用がそこまでないからである(彼女はリボトリールは悪くないが、リーマス、デパケンRは副作用の問題もある上に、またそこまで効果的でもないと思っていた)。

職場で気にいらないことがあると、怒りのコントロールが難しいという。また、不安感の際にソラナックスやワイパックスなどのベンゾジアゼピンを服用することで、更にコントロールを難しくさせる。

今一番困るのは、怒りが爆発すること。以前より、性格の棘みたいなものがたっている感じですね。

このテンションの高さはマイナスである。レスキューレメディー・スプレーを併用しながら、ブプロピオンを少し減量して継続する。当時、中止するのは惜しいと思っていた。代替の向精神薬で適切と思われる薬が思いつかなかったこともある。

ブプロピオン  100㎎
ワイパックス   2㎎
リボトリール   1㎎
レスキューレメディー・スプレー頓用


彼女を治療するまで、ブプロピオンのこのタイプの迷走は経験がなかった。彼女の場合、ブプロピオンの腰折れとも違う(参考)。これはブプロピオンによるある種のアクチベーションであろう。

これはブプロピオンを少なめにして乗り切るか、あるいはむしろ多めでも乗り切れる可能性がある。しかし、あまりに悪い場合は、何らかの他の方法も考えないといけない。この程度でも仕事は続いていたし、なんとかセルフコントロールは可能のようであった。

治療者からすれば、ろくに薬を使わずに治療している感覚である。当時の処方は何も飲んでいないのに近いと思っていた。

ブプロピオンは数ヶ月間、彼女を健康にしていたのは事実である。それでも尚、撤退すべきか悩む状況に至った。

(続く)

参考
ブプロピオンのテーマ
ブプロピオン
デパケンRで髪の毛が抜ける副作用

一連のエントリ
彼女は最初うつで初診している①
帰国後の大悪化②
病前性格とリーマス③
希死念慮とSSRI、ブプロピオンの試み④
ブプロピオン処方後の経過⑤
レスキューレメディーとデパケンR⑥
トレドミンとベンラファキシン⑦
ラミクタールの試みとリフレックス⑧
リフレックスの悪夢とトピナ⑨