ゆれる

『ゆれる』 2006年・日本 


どなたにも、好きすぎて細部を覚えてしまった映画があるかと思う。
今作は、まさにそれだ。

この傑作を初めて観た時に、当方の身体に何かが流れ込んだ。
思えばそれは清流でも濁流でもなく、血液のような奔流であった。
人間の本質の有様であった。

人間が描けているか否かは、創作物の命。
その点において、これほどに極めた作品は実は少ない。
だからこそ、こういう作品に出会えた時には、打ち震えてしまう。

涙が出る暇もなく、だ。

1人の死を巡る、弟と兄の物語。
誰が、あの時、何をしたのか。
数多の感情を巻き込んで、ゆれる。


オダギリジョーに恋をするのは必然。セクシーすぎて鼻血が止まらない。
一時期、登場シーンを繰り返し観ていたババア(当方)。
しかも、オダギリジョー最高の芝居!

香川照之がもう!つま先、指先に至るまで何もかもが傑出!
あんなに饒舌な背中があるだろうか。神の領域だろう。

真木よう子の切なさといったらない。
アパートの小物にも心情が投影されていて、参る。

新井浩文、伊武雅刀、木村祐一、ピエール瀧、河原さぶ、田口トモロヲ、蟹江敬三、そして三浦誠己。
全員が素晴らしく、全員がもう、そうとしか見えないじゃないか。

西川美和監督のセリフは文学的。
行間を映像の物語性で埋めていく。なんという手腕!
映画にしか出来ないことだ。人間を抉る力強さ、繊細さに感嘆しかない。


一つの光景・表情を丁寧に、執拗なまでにこだわるディテール。
たとえば、酒の滴。芽が吹いた玉ねぎ。車のフォルム。
風景、音楽、衣装、小道具。
そのコラージュが、とてつもなくカッコいい。

入り組んだ動線のストーリーがストレートに届くのは、神経を配った構成が見事だからこそ。

そうして、ささくれみたいに心に残る。
あの橋を渡る意味。
もう何度観たか分からない。

それでもスクリーンの中でゆれる吊り橋は、色を濃くしてさらに鮮烈。



映画 スクリーン(秋田シネマパレで本日まで!

[関連作品]
オダギリジョー 『空気人形』『舟を編む』『渇き。』
香川照之 『あしたのジョー』『カイジ 人生逆転ゲーム』『カイジ 人生奪回ゲーム』『任侠ヘルパー』『ゴールデンスランバー』『るろうに剣心』
真木よう子 『モテキ』
新井浩文 『クヒオ大佐』『アウトレイジ ビヨンド』『ヘルタースケルター』『モテキ』『クライマーズ・ハイ』『ジョゼと虎と魚たち』
ピエール瀧 『凶悪』『アナと雪の女王』
田口トモロヲ 『色即ぜねれいしょん』『クライマーズ・ハイ』『あぜ道のダンディ』
三浦誠己 『Playback』『アウトレイジ』『ヘヴンズ ストーリー』『まほろ駅前多田便利軒』『アナザー』



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